埼玉西武ライオンズコラム

西武の正捕手は細川亨か、それとも上本達之か?

細川亨捕手に一体何があったのだろうか。ライオンズの正捕手であるべく細川捕手が、ここ最近はベンチウォーマーに甘んじている。細川捕手の、捕手としての能力を見れば上本達之捕手よりもずっと上のはずだ。リード然り、キャッチング然り。だが渡辺監督は上本捕手のスタメンマスク起用を続けている。確かにバッティングに関してだけを見れば、上本捕手の方が上だろう。得点圏打率も上本捕手の.348に対し、細川捕手は.203でしかない。筆者には実際のところ、渡辺監督がバッティングを買って上本捕手を起用しているのか、それとも捕手としての能力も認めた上で起用を続けているのかハッキリ分からずにいる。だが上本捕手のリードに注目して見ている限り、決して投手を活かしたリードをしているとは思えないのが正直なところだ。

渡辺監督からすれば、上本捕手をメインに起用し出したのはライオンズの負けが込んでいた時期だった。さらに言えば、打線が繋がりに欠けていた時期でもあった。その流れを断ち切るべく、上本捕手をメインの捕手として起用し出した可能性は高い。ここには投手出身監督の傾向が隠されていると言うこともできるだろう。投手出身監督というのは基本的には、投手主導の野球を好む。つまりキャッチャーは、ピッチャーの投げたいボールのサインを出すのが仕事というわけだ。さらに言えば、これはメジャーリーグ的考え方なのだが、キャッチャーに求めるのは強肩と強打に主眼を置いているように感じる。上本捕手の今季の盗塁阻止率は分からないのだが(上本捕手は捕手としての規定試合数に達していないため、守備成績がランクインされない。捕手規定試合数はチームの総試合数の半分)、昨年は.300を記録している。恐らく今季はそれ以上の数字を出しているのだろう。試合慣れし、スローイングが安定し出せば強肩だけにもっと阻止率が上がる可能性を含んでいる。そしてバッティングに関しては言うことは然程ないだろう。左打ちの強打上本捕手が下位打線にいることで、打線は否応なしに厚みが増す。

盗塁阻止率に関して言えば今季の細川捕手は.364で、2位の.346の鶴岡捕手(日本ハム)を大きく引き離している。だが2008年の日本シリーズで肩を脱臼して以来、強肩に衰えが見え始めている事実は否めないだろう。それでも高い技術がある分、トータルで見れば捕手としての能力は細川捕手の方が上だと言い切れる。筆者は個人的には、細川捕手を正捕手として起用し続けるべきだと考えている。打力は確かに上本捕手よりは劣るが、信頼度を考えれば、細川捕手がマスクを被った方が投手陣は安心して投げられるはずだ。

それでも渡辺監督が上本捕手を起用する理由は、筆者は首の振りやすさとリードの分かりやすさではないかと考えている。若い投手陣からすれば、細川捕手のサインには首を振り難いが、上本捕手であれば振れるということも少なからずあると思う。投手が遠慮なく首を振れる状況を作り、投手に伸び伸びと投げさせる状況を作る、それが渡辺監督の1つの狙いなのかもしれない。もちろん推測の域は出ないわけだが。また、若手投手からすれば細川捕手のリードは難し過ぎるという面もあるかもしれない。細川捕手のリードの意図を読み切れずにボールを投げている投手は少なからず存在するはずだ。

もっと現実的なことで2人を比較するならば、今季の守備率に目を向けるべきかもしれない。実は細川捕手は今季捕手として87試合に出場し、5つのエラーと3つのパスボールを記録している。5つのエラーは捕手規定試合数に達している捕手の中ではリーグ最多タイで、守備率は9捕手中8位となっている。対する上本捕手は捕手として50試合に出場し、エラー・パスボール共に1つも記録していない。この数字が渡辺監督の判断材料になった可能性は非常に高いと思う。

筆者は細川捕手の起用を望むファンの1人ではあるが、しかし今思い出されるある場面について触れないわけにはいかない。1ヵ月ほど前だろうか、7月の西武ドームでの一戦だった。筆者は試合前に行われるライオンズのシートノックをじっと見学していたのだが、溌剌と守備をこなす野田・上本捕手に対し、その日の細川捕手は何度もボールをこぼしていた。しかもファンブルするだけではなく、暴投もしていたように記憶している。実に集中力に欠いた細川捕手の姿だった。この時の姿が頭から離れないため、筆者はこの記事の冒頭を「何があったのか」と始めたわけだ。

数日前には国内移籍が可能となるFA権を取得したばかりの細川捕手だ。万が一細川捕手がFA移籍を望めば、手を挙げる球団は1つや2つではないだろう。もちろんそれが理由で細川捕手の集中力が低下した、とは考えにくいし、考えたくはない。だからこそ他に何か原因があるのではないかと心配になってしまったわけだ。ここまでの渡辺監督の起用法を見ている限りでは、少なくとももうしばらくは上本捕手をメインとして起用し続けるだろう。問題は、それを細川捕手がどのような思いで見るかだ。他球団に移籍して出場機会を得ようと考えるのか、それともライオンズの正捕手としてのプライドを呼び覚ますのか。もちろん筆者としては後者を望むばかりだ。

渡辺監督はベテランを甦らせる術に長けている。それはもちろん野村克也監督の下でプレーをした経験から成せることだと思う。2008年の星野智樹投手にしろ、先日の西口文也投手にしろ、渡辺監督自ら鞭を振るうことで見事復活させた実績がある。渡辺監督はもしかしたら、銀仁朗捕手を怪我で欠いたことで正捕手を安寧のものにしたと思ってしまった細川捕手に対し、今現在鞭を振るっている最中なのかもしれない。もしそうだとすれば、もうしばらくすれば完全に集中力を取り戻した細川捕手が再びグラウンドに戻って来てくれるはずだ。

漁師の家に生まれ、自らも父親となった細川捕手だけに、筆者が予測するこの渡辺監督の親心はきっと感じ取っているはずだ。やはりライオンズが優勝するためには、扇の要は細川捕手に担ってもらわなければ困る。それはファンだけではなく、渡辺監督もそう考えているはずだ。だからこそ細川捕手には一日でも早く、野村克也前楽天監督が認めた能力を発揮できるだけの集中力を取り戻してもらいたい。そうすればきっと、ライオンズは独走態勢に入っていけるはずだ。そして上本捕手にはそんな細川捕手のプレーを見て、さらに上の捕手を目指し、純粋に実力で細川捕手から正捕手の座を奪い取る活躍をしてもらいたいと思う。

2010年08月17日 01:29 

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