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涌井秀章投手と前田康介本部長の溝は埋まるのか



渡辺久信監督は「とことんやれ」と背中を押し、親友であるダルビッシュ投手も同情を示す涌井秀章投手の契約問題は、涌井投手自身初の越年ということになってしまった。チームの核であるエースとして、やはり契約事は年内に済ませ、スッキリとした気持ちで新たなシーズンを迎えたかったはずだ。だが涌井投手と前田康介球団本部長との間に出来た溝は埋まることなく、越年することが決まってしまった。

涌井投手が最も強調したのは「後半頑張らなかった」という前田球団本部長の言葉だった。確かに終盤の涌井投手は大事な局面で勝ち星を増やすことが出来なかった。それでも14勝8敗と1人で貯金を6個も作っている。涌井投手自身は年俸の高額アップを望んでいるわけではない。あくまでも5年連続で2ケタ勝利を挙げたその実績を認めて欲しいと言っているだけなのだ。にも関わらず前田球団本部長は「後半頑張らなかった」という言葉だけではなく、「本来なら年俸はダウン」という言葉まで付け加えている。いくら2億円をもらっているエースが相手とはいえ、ここまで言う必要は果たしてあるのだろうか?

投手出身の前田球団本部長は、果たして本当に涌井投手が頑張っていなかったと考えているのだろうか。もしそうだとすれば、あまりにも選手の心情を理解していないと言える。元プロ野球選手である前田球団本部長であれば、選手の気持ちはよく理解できるはずだ。選手が活躍できなければ戦力外通告を言い渡す責任者の1人が前田球団本部長のはずだ。選手を解雇する立場の人間は解雇されないのだろうか?気になる点ではあるが、西武球団の取締役である前田康介球団本部長が解雇される可能性は、ほとんどないのだろう。これがGM的役割を担う西武球団の球団本部長という立場と、本来のGMの最大の相違点だ。本来のGMは、結果が出なければ1年で解任されることも珍しくはない。だが取締役という立場で球団に属している場合、成績不振だけで簡単に解雇されることはない。

選手が成績を残せずに解雇されるのは当然だ。それがプロの世界のあるべき姿だとは思う。それならば選手の生活を左右させる戦力外通告をする立場の人間も、成績を残せなければ潔く身を引くべきだと筆者は考える。解雇まで行かずとも、降格などの処置は必要なのではないだろうか。そうしなければ仕事への高い緊張感を維持することは難しいだろう。「クビにならない」と分かっていても死に物狂いで働ける人など、そう滅多にいるものではないからだ。死に物狂いで野球に打ち込む選手を見守る立場である球団本部長にも、筆者はやはり死に物狂いの仕事を見せてもらいたいと願っている。

前田球団本部長からすれば、2億円も出しているのだからもっと勝ってもらわないと困るとでも考えているのかもしれない。だとすれば、前田球団本部長はプロ野球の世界を我々ファン以上に理解できていないのではないだろうか。プロ野球界は、20年前とはまるで違う時代を迎えている。チーム力は拮抗し、連覇を成し遂げることは至難の業となっている。しかも西武球団は他球団とは異なり、FAなどの補強に対しても消極的だ。育成に尽力するというチーム方針であるため、これに関しては筆者も賛同したいのだが、しかし14勝8敗した投手に対し「頑張らなかった」という言葉をぶつけられる意図はまるで理解できない。

14勝したという実績に対し、何か大きな労いの言葉があってもいいのではないだろうか。涌井投手自身もそれを強調している。年俸の大幅アップを求めているのではなく、14勝したという実績を認めてもらいたいと口にしている。だがこうして越年が決まったということは、涌井投手が求めた言葉は前田球団本部長の口からは出てはこなかったのだろう。

涌井投手の実績からすれば、長くともあと3~4年以内にはFAの権利を得るはずだ。その時になって涌井投手は果たして、西武球団に残りたいと思ってくれるのだろうか?それとも西武球団は高額年俸を理由に、涌井投手の移籍を引き止めることはしないのだろうか?チームにとって、確かに育成は重要なファクターとなる。育成力があるチームは選手層も厚くなり、安定感のあるチームへと成長していく。だが成長するためにはチームには核が必要不可欠だ。その核である涌井投手に対し「頑張っていない」という言葉はあまりにも相応しくない。

確かに「あの試合でワクが最後まで投げ抜いてくれていたら」と思う試合はある。しかしその試合においても涌井投手は頑張っていなかっただろうか?いや、決してそんなことはない。涌井投手は頑張っていたし、相手チームの選手だって頑張っていた。その頑張りがぶつかり合い、最後の最後で涌井投手が打たれてしまった。ただそれだけのことだ。それなのに「頑張っていない」と言える前田球団本部長の意図が筆者にはまったく理解できない。また昔の話になってしまうが、根本のオヤジなら果たしてこの状況で涌井投手に対し「後半頑張っていない」と言うだろうか?いや、決してそんなことは言わないだろう。来年に向けて頑張れるよう、もっと労いの言葉を送っていたはずだ。そして涌井投手も根本のオヤジの言葉に応え、現状維持であってもサインをしていたはずだ。

年俸を下げようと上げようと、選手を気持ちよく納得させられるGM的人材は少ない。だが毎年のように前田球団本部長が選手にこのような言葉を続けてしまっては、西武球団と選手との信頼関係を築くことはできないだろう。西武球団にも改革が必要だ。スポーツMBAなどの修士号を持つ球団運営のスペシャリストをGMとして迎え入れるべきだと筆者は考える。そしてこれはメジャーのようなGMではなく、日本球団の考え方を理解してくれるGMである必要がある。エース・主砲と球団の関係がこれ以上悪化してしまえば、来季のライオンズはそれこそ優勝争いどころではなくなってしまうだろう。涌井投手ばかりではなく、中島裕之選手にも来季気持ちよくプレーしてもらうためにも、1日でも早く円満契約を結んでもらいたいと筆者は願うばかりだ。

最後に、日刊埼玉西武ライオンズの2年目も多くの方にご愛読いただき、とても嬉しく思っています。3年目となる2011年も何とか頑張って記事を書き続けたいと思っていますので、来年もどうぞご愛読のほど、よろしくお願いいたします。今年も一年間、ありがとうございました。
今年はあと1つ、明日BT用の記事をアップして締めくくろうと思っていますので、乞うご期待くださいませ。

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2010年12月30日 16:43