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ライオンズの熾烈な4番打者争いの行方



来季のファンの楽しみの1つには、ライオンズの4番争いというものもある。今季は中村剛也選手の故障により、フェルナンデス選手の加入まで4番を固定することはできなかった。だが来季は中村・フェルナンデス両選手が万全の体勢で挑むことができれば、4番争いは熾烈を極めるだろう。どちらが4番の座を射止めるかは分からない。それは結果次第だと言える。だが筆者個人としては、4番フェルナンデス選手・5番中村選手が良いのではないかと考えている。

ホームランの本数だけを見れば、中村選手の方が俄然上だ。ヒット数に対する本塁打率も、中村選手の38%に対しフェルナンデス選手は15%でしかない。この数字は中村選手がヒット10本打った内、約4本がホームランになっていることを現す。この長打力と、2年連続ホームランキングに輝いた実績だけを見れば、中村選手を4番に据えるのが一番自然な流れかもしれない。だがフェルナンデス選手も15%とは言え、わずか57試合での11本塁打だ。もし開幕からプレーし続けていれば、間違いなく30本は越えていただろう。

だが面白いのは、本塁打率はダブルスコア以上の差があるというのに、長打率に関しては中村選手の.539に対し、フェルナンデス選手は.538とまったく差がないことだ。これはホームランを狙い続けた中村選手に対し、ギャップヒッティングを心掛けたフェルナンデス選手の相違点だと言える。ギャップヒッティングとは、外野手の間(ギャップ)を狙うバッティングのことで、中距離ヒッターが目指すバッティングスタイルだ。中村選手の場合はホームランになり損ねた打球が外野フライで終わってしまうのに対し、フェルナンデス選手の場合はギャップヒッティングの延長線上にホームランが存在していた。

さらに面白い点は、外国人選手であるフェルナンデス選手の方が日本人らしいコンタクトヒッティングを心がけ、日本人である中村選手の方が外国人のようなハンマースウィングを続けていたことだ。2人の打率の差はまさにここにある。フェルナンデス選手はインサイドアウトと言って、バットを必要以上に回転させないミート重視のバッティングを行っている。インサイドアウト(内から外に向けて)でバットを送り出すことで、ボールとバットのコンタクトゾーンが広がり、タイミングの外れた完全な空振りが減っていく。一方中村選手のハンマースウィングは、バットに遠心力をかけて振るため、どうしてもバットはループスウィング(ハンマー投げの選手がクルクルと回っているような状態)になってしまう。ループスウィングになってしまうと、ボールとバットの打点は一点に狭められてしまう。つまりタイミングが外れると高い確率で空振りをしてしまうことになる。

フェルナンデス選手にしろ、中村選手にしろ、パワーは溢れている選手だ。中村選手自身、フルスウィングするよりも8割程度の力で振った時の方がボールは良く飛ぶと言っている。これはつまりフルスウィングをするとバットの軌道がぶれてしまい、ミート力が下がってしまうが、8割の力で振ることでパワーにミート力が加わり、ジャストミートしやすくなるためにボールが遠くまで飛んでいっているわけだ。もし中村選手がループスウィングを改め、フェルナンデス選手のようなスウィングにシフトしていくことができれば、ホームラン数は若干減ってしまうかもしれないが、打率は間違いなく向上するはずだ。だがそれでは中村選手の魅力は半減してしまう。中村選手と言えばなんと言ってもホームランのおかわりだ。その魅力を活かすのであれば、やはり4番ではなく5~6番を打たせていくべきだと筆者は考える。4番打者は相手投手からすれば「打ち取れない」打者でなくてはならない。つまりホームランを打てるだけではなく、打率も3割以上打てることが望ましい。

打率を見るとフェルナンデス選手の.339に対し、中村選手は.233でしかない。得点圏打率を見るとさらにその差は顕著で、フェルナンデス選手の.333に対し、中村選手はわずか.170でしかないのだ。この数字はもちろん中村選手が肘痛を抱えていたことにも由来されるわけだが、しかし打率に対しここまで得点圏打率が下がってしまうと、相手投手からすれば恐い存在ではなくなってしまう。フェルナンデス選手の場合はどこに投げても打たれそうな感じがあるが、中村選手の場合はホームランになりにくいコースにさえ投げていれば問題ないということになってしまうのだ。

そしてもう一つ気になる点が筆者にはある。フェルナンデス選手は日本ハム戦を除いては満遍なくハイアベレージを残しているのだが、中村選手は対戦チーム別の打率が非常にバラバラなのだ。この数字が何を意味するかと言えば、打てる相手からは打てるが、打てない相手からはまるで打てないということになってしまう。中村選手の場合、この波も整えていかなければ、4番としてはまだまだ力不足だと言われかねないだろう。

4番とは、ホームランをたくさん打てれば良いというものでは決してない。4番打者とは、投手で言えばエースだ。ただ打つのではなく、内容の濃いヒットを打ち続ける必要がある。例えばホームランを30本打ったとしても、その内の20本がソロホームランでは意味がないのだ。30本ホームランを打ったら、その内の20本は得点圏でのホームランでなくてはならない。それが4番打者に与えられる宿命だ。

2011年の開幕戦、果たしてライオンズの4番に座るのは中村剛也選手なのか、それともホセ・フェルナンデス選手なのか。この熾烈な4番打者争いも、キャンプインから見逃すことはできないだろう。エースと4番という投打の軸が整えば、来季のライオンズはもっと落ち着きのある勝ち方ができる、大人のチームへと変貌していくはずだ。

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2010年12月26日 17:44