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敵捕手の視点から捉えた中島裕之と栗山巧



ライオンズの2番栗山巧選手と、3番中島裕之選手は、好対照の打者だと言える。中島選手を短期集中タイプと呼ぶならば、栗山選手は長期安定タイプとでも言おうか。ピッチャーとしてどちらが勝負しにくいかと問われれば、間違いなくそれは栗山選手だろう。経験の浅いピッチャーは別として、技巧派のベテランであるほど、中島選手よりも栗山選手を嫌がるはずだ。その根拠は、カウント別の打撃成績から見て取ることができる。

まず中島選手の最も打率が高いカウントは1-0の.682だ。1-0というボール先行のカウントでは、投手は2球目でストライクを取りたがる。この球を狙いたがるのが中島選手の1つの特徴だ。そして打点率から言えば、1-0から打った3打席に1回は必ず打点を挙げている計算になる。このカウントでの打点率はどのカウントと比べてもずば抜けて高い。では1-0から次のカウントを見ていこう。1-0から1-1に投手がカウントを整えた場合の中島選手の打率は.347、逆に2-0になった場合は.412となる。

ピンチで、中島選手への初球をボールにしてしまったバッテリーは悩まなければならない。次の球で1-1とするか、2-0とするかを。もし筆者ならば、状況にももちろん左右されるわけだが2-0とすることを選ぶだろう。なぜなら、2-0からの中島選手はホームランを1本(本塁打率6%)しか打っていないのだ。一方1-1というカウントからでは6本塁打(本塁打率12%)を放っている。1-1というカウントは、2-0に比べるとホームラン(長打)の危険性が倍に膨れ上がるのだ。

では2-0の次のカウントではどうだろうか。3-0なら問題ない。バッテリーからすれば「歩かせてもいい」くらいの気持ちで投げればいい。だが注意すべきは2-1となった時だ。このカウントでのコントロールミスは命取りとなる。2-0から2-1にできれば、ピッチャーからすればどうしても2-2にしたいカウントだ。ここで不用意にストライクゾーンに投げてしまうと打率は.452まで跳ね上がり、10%の確率でホームランを打たれることになる。そのため2-1というカウントになったら、ピッチャーは間違うことなく中島選手が見送るであろうストライクゾーンに投げなければならない。つまり内角低目か、内角高めのどちらかだ。中島選手は外角低めにも苦手ゾーンを持っているが、外角低めだとおっつけられてライト前に落とされる可能性が高くなる。そのため投げるならば、見送る可能性が高くなる内角低目か内角高めだ。

カウントを2-2まで整えられればこれはもうバッテリーの勝利だ。打率は.194まで低下し、3回に1回は三振を奪うことができる。そしてこれは1-2というカウントでもほぼ同じことが言える。冒頭で中島選手のことを短期集中タイプと書いたが、中島選手は球数が増えれば増えるほど打率が低くなる傾向にある。もちろんそれはほとんどの打者に言い当てることができるが、主砲である中島選手の場合であれば特筆もできるだろう。つまり中島選手を抑えるには、バッテリーはより多くの球数を投げれば良いのである。そうすれば短期集中タイプの中島選手の集中力は徐々に薄れていく。だが球数を投げても集中力が切れないのが長期安定タイプの栗山選手だ。

例えば3-2というフルカウントまで来ると、中島選手の打率は.220だが、栗山選手は.320も打っている。しかもこのカウントでヒットを打てば、栗山選手はそのヒット2本のうち1本が打点付きだ。別のカウントを見ても3-1でも.400を打ち、2-2でも.299とほぼ3割を打っている。つまり栗山選手の集中力は4球や5球程度じゃ決して削がれることはない。そして早いカウントでも軒並みハイアベレージを残している。栗山選手を打ち取るには、変化球の多投で2-0、2-1とボール先行のカウントにした後、速いボールで詰まらせるのが理想的だ。しかも反対方向へのバッティングを得意とする栗山選手を相手にするならば、左方向に打ちにくい内角低めに速いボールを投げたいところだ。もしくはカッターでもいいだろう。

2番栗山選手に対し、間違っても走者三塁・二塁という場面で焦った勝負をしてはいけない。3番に中島選手が控えているとは言え、バッテリーは決して焦ってはいけない。なぜならこの状況で栗山選手は9打数6安打12打点という脅威的な打撃をしているためだ。こういう状況である時こそ、四球を恐れずボール先行で攻め、速球に詰まらせる配球が必要だ。

今回の記事では、敵チームのバッテリーになったつもりで中島・栗山両選手を見ていった。こうして見ていくことにより、この2人が他チームにとっていかに厄介な打者かということが改めてよく分かった。しかもこの2人を抑えられても、次に控えるのはフェルナンデス選手中村剛也選手だ。バッテリーはまだまだ気を抜くことができない。今季は怪我人が多く、ベストオーダーを組める試合が少なかったわけだが、来季はそんなこともないだろう。中村選手の肘痛も来春には癒えているはずだ。となれば当然フェルナンデス選手との激しい4番争いも期待できる。

こうして考えて行くと、やはり優勝するためには投手陣が鍵となってくる。ライオンズの今季の得点力は千葉ロッテに次ぐ2位だったが、防御率はパ・リーグダントツの最下位だった。12球団で見ても10位だ。シーズン終了後、渡辺監督は「野球は投手だと改めて思った」とコメントした。まさにその通りだと思う。投手が野手のいるところに打たせることができれば、そう簡単に大量失点には結びつかない。ライオンズが来季優勝するためには、まずは投手陣の整備だ。そして整備した投手陣を引っ張るべく正捕手の存在も忘れることはできない。センター、二遊間は不動だ。となれば、あとはバッテリーさえしっかり整備することができれば、センターラインがしっかり整うことになる。そうなれば、今季のような負け方にはならないはずだ。今季は本当に悔しい負け方をした。来季は決して同じ負け方をせず、ペナントを奪回してもらいたいと思う。

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2010年11月26日 03:20