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中島裕之選手ポスティング移籍の行方
西武球団は現在、中島裕之選手のポスティング利用について揉めているようだ。球団としては「ノー」という結論だったらしいが、中島選手からすれば「話が違う」ということになるらしい。報道のみで話を整理してみると、西武球団は今オフのポスティング移籍を容認するような発言を、中島選手に行っていたようだ。だが先日、後藤オーナーが残留を希望するコメントを発表すると一転、ポスティングは認めないという方針に急転させた。その後一度、球団と中島選手は話し合いの場を持ったわけだが、中島選手が納得していないという状況にも関わらず、球団は先手を打って「納得してもらえた」とのコメント発表。これに対し中島選手は不信感を抱いているようだ。
この手の情報は報道でしか得られないため、話の真相は筆者には分からない。中島選手の気持ちは分からないでもないが、しかしポスティングというシステムはFAとは異なり、選手の意思で移籍ができるものではない。ということはやはり、どんな事情があるにせよ球団の意志を尊重すべきだろう。FAはほぼ100%選手の自由意志による移籍となる。それならばポスティングは、球団の意志を尊重すべきだろう。
そもそもポスティングシステムの条項が盛り込まれた『日米間選手契約に関する協定』が合意されたのは、野茂英雄投手が近鉄とケンカ別れするようにアメリカに渡った4年後のことだった。つまりライオンズで言えば、ちょうど松坂大輔投手が入団した時ということになる。しかしこの協定の内容は、球界関係者の間ではすこぶる評判が悪い。後々、必ず問題が生じるだろうと予測された内容だった。
ポスティングシステムというのは、いわば選手を商品化するシステムだ。ある選手をポスティング対象として公表すると、それに興味を示した球団は4日以内にブラインドビッド(金額非公開の入札)を行う。入札した中で最も高値を付けた球団に対し、その選手が在籍する球団との30日間の単独交渉権が与えられる。入札額に満足しなければ、在籍側の球団は拒否することも可能で、3月1日までならば複数回ポスティングにかけることも可能となる。
話を中島選手に戻すことにしよう。筆者の個人的感想を言わせてもらえれば、球団の顔である中島選手なのだから、球団批判はすべきではなかっただろう。確かに西武球団の現在のフロントは、坂井・根本体制のあった黄金時代とはまるで違う。つまり球団運営のプロフェッショナルが不在なのだ。前田康介球団本部長にしても、報道を見る限りでは選手をリスペクトしていないような言動を度々耳にする。前田本部長は現役時代はロッテ、太平洋クラブで投手として在籍していた。ほとんど実績を残すことなくわずか7年でユニフォームを脱ぎ、その後はライオンズでバッティングピッチャーをしていた。だが少なくとも選手経験があるのだから、選手がどういう気持ちなのかは理解できるはずだ。
西武球団の球団本部長という役職は、いわゆるGM的存在ということになる。GMは合理的な判断の元、チームを強くするための選手・指導者の補強策を考える立場だ。だが前田本部長は決して合理的ではない。中島選手の問題にせよ、これまではイエスの立場を続けていたようだが、後藤オーナーが個人的にノーの希望を口にすると、まるで掌を返したように突然ノーという結論を先走り出してしまった。オーナーの顔色を見ながらでしか仕事ができないような人材に、果たしてGMという重い職責を全うできるのだろうか。そして筆者が常々おかしいと感じているのは、編成に関し全権を握る前田本部長が、チームの成績が低迷しても続投しているという点だ。特に2009年・2010年の敗因は、編成失敗によるところも大きかった。つまり敗因のすべてが渡辺監督の責任ではなかったのだ。それなのに前田本部長は何ら責任を取らされてはいない。これがもしアメリカのような本物のGMであれば、あっさりと解雇されていたはずだ。
ではなぜ前田本部長は解雇されないのか?その理由は簡単だ。人材がいないからだ。黄金時代の西武球団のように、坂井保之氏(球団代表)や故根本陸夫(GM的存在)のような球団運営のプロがいない。つまり前田本部長を解雇したところで、その後任がいないのだ。これは日本球界の本当に情けない面でもある。ちなみにアメリカの場合は、アイビーリーグなどでスポーツMBAを専門に学んだ、球団運営の若き専門家がGMを務めるケースが多い。レッドソックスのエプスタインGMや、レイズのフリードマンGMが有名どころだろう。彼らは莫大な年俸で契約されるかたわら、結果がでなければシーズン中だろうが即解任されてしまう。そういうシビアな世界だからこそ、命がけで仕事をする人物が多い。
ちなみに球団組織というものは、まずトップにオーナーがいて(日本は単独、アメリカは共同制)、内部のトップには球団社長がいる。球団社長の直下にいるのが、ビジネス面を担当する球団代表と、編成面を担当するGMだ。これが本来プロスポーツチームのあるべき姿で、球団運営が上手く行かなければ球団代表が責任を取らされ、チームの成績が低迷すればGMが責任を取らされる。しかし日本の場合、球団は親会社の広告塔という色合いが強く、独立採算を行っているのは現在広島カープしかない。西武球団の場合も同様で、球団の赤字分は本社の広告費として精算されている。そのためか、赤字によって球団代表(社長が兼任することも多い)が更迭されるケースはまずありえない。そして人材不足が顕著なGMの分野でも、責任を取らされるのは監督だけで、GM役が解任されるケースはほとんどない。このようなプロフェッショナルに徹せられない現状が、今回の中島選手の問題を引き起こしたと言っても良いだろう。本来GM的立場である前田本部長は、オーナーの個人的意向にとらわれず、100%自分の判断・責任を貫くべきだった。つまり、前田本部長が「中島抜きでも優勝を狙える」と判断してポスティングを容認していたのなら、オーナーには「問題ない」と言ってポスティングを認めるべきだった。だがそれでもし優勝できなければ、前田本部長は潔く退任すべきなのだ。
さて、先述した坂井球団代表だが、ライオンズが坂井氏を失った痛手は非常に大きかった。そしてその原因を作ったのは、ヘッドコーチに復帰した土井正博選手だった。土井選手の賭け麻雀が発覚し、坂井氏はその責任を取らされて解職されてしまったのだ。だがもし中島選手を納得させられるとすれば、やはり師匠である土井コーチが適任だろう。渡辺監督自身も球団と中島選手の間に立って仲裁役を引き受けるようだが、そこに土井コーチの言葉が加われば、中島選手も納得しないわけにはいかないだろう。
だが、実際には来オフにはポスティングで移籍してしまう可能性が高い。球団としては2012年に何の保証もなくFAで移籍されてしまうよりは、例え数億円だったとしても、多少の利益を出して選手を移籍させたいはずだ。これはポスティングというシステムが存在している限り、球団運営側としては考えなければならないことだ。こうして考えると、中島選手は「あと1年しかいない選手」と見なされてしまう。そう見られている選手を中心にし、果たしてチームは一丸となれるのだろうか?筆者のみならず、多くのファンが心配していることだと思う。来季は優勝が至上命題であるだけに、秋季キャンプ早々幸先の良くない船出となってしまった。中島選手自身にもその辺を自覚してもらい、中心選手として責任ある言動でチームを引っ張っていってもらいたいと切に願うばかりだ。
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2010年11月01日 17:02 Tweet

