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#72 鈴木康友



#72 鈴木康友 - Yasutomo Suzuki

内野手(ショートなど)、右投右打
1977年ドラフト5位
天理高~巨人~西武~中日~西武
奈良県五條市出身、1959年7月6日生、180cm / 84kg

鈴木康友コーチは筆者が最も期待し、その手腕を尊敬しているコーチだ。昨オフに鈴木康友コーチの西武復帰が報道された際、とても喜んだことを今なお鮮明に覚えている。復帰1年目の今季は2軍守備走塁コーチとして若手を鍛え上げたわけだが、2011年からは1軍守備走塁コーチとして再び三塁コーチャーズボックスに立つことになった。今季は河田コーチが三塁に立っていたが、経験と能力を比べれば、やはり康友コーチが三塁に立った方が勝利へは一歩多く近づけるはずだ。

その鈴木康友選手がプロ入りしたのは1978年、つまり西武ライオンズが10月に誕生した年だった。この年を1年目とし、鈴木康友選手は巨人軍の選手としてプロの門を叩いた。だが打撃においてなかなか目覚しい成績を残すことができず、結局巨人ではレギュラーを掴みかけるものの、レギュラーになることはできなかった。すると84年オフ、鴻野淳基選手とのトレードで西武ライオンズに移籍させられてしまった。だがその西武も、僅か1年の在籍、13試合の出場だけで市村則紀選手とのトレードで今度は中日へ移籍させられてしまう。その中日には4年在籍し、その内3年を星野仙一監督の元で過ごした。4年間の名古屋生活の後は、今度は北村照文選手とのトレードで西武復帰し、92年を最後に現役生活を退いた。

いわゆる球界の苦労人とも言える選手生活だったわけだが、鈴木康友コーチは選手時代から見ていくと、本当に有能な指導者の下で仕事をし続けた。この経験は大きな財産となり、現在のコーチ業で大いに役立っている。ここで鈴木コーチが仕えた監督を順に追ってみたいと思う。
長嶋茂雄監督(G)~藤田元司監督(G)~王貞治監督(G)~広岡達朗監督L~山内一弘監督(D)~星野仙一監督(D)~森祇晶監督(L、ここまで現役)~東尾修監督(L)~原辰徳監督(G)~伊原春樹監督(BW)~萩本欽一監督(茨城GG)~渡辺久信監督(L)
まさに錚々たる名将たちの元で仕事をしてきたのが鈴木康友コーチなのだ。そしてこの経験は、幾度にも渡るトレード生活を送ったために得られたものだった。

この中で特筆すべきは、伊原春樹監督との関係だろう。西武のコーチに就任すると鈴木コーチは一塁コーチとして、伊原三塁コーチとコンビを組んだ。つまり名将森祇晶監督の元、伊原コーチと共に西武野球とも言える緻密な野球をコーチとして学んでいったのだ。以来、鈴木コーチは伊原監督からの信頼が厚くなった。2004年に伊原コーチがオリックス・ブルーウェーブの監督に就任すると、鈴木コーチも巨人からオリックスに引き抜かれた。そして西武時代以来4年振りに三塁伊原・一塁鈴木というコーチコンビも復活した。だが2004年オフ、オリックスと近鉄の球団合併問題が生じ、伊原監督共々僅か一年での退団となってしまう。その後は欽監(萩本欽一)率いる茨城ゴールデンゴールズでコーチを務めたり、富山サンダーバーズ(現在は横田久則監督)では初代監督を務め、2010年、9年振りにライオンズへの復帰を果たした。

鈴木康友コーチのコーチ人生は、過酷な状況からスタートさせられた。引退してすぐにライオンズの1軍守備走塁コーチとなったわけだが、その頃のライオンズには先輩である石毛宏典選手や辻発彦選手といた名手が顕在だった。康友コーチは、その先輩たちにノックを打つことからコーチ業をスタートさせたのだった。コーチ1年目の康友コーチには当然、諸先輩からの野次が飛びに飛んだと言う。ちょっとでも下手なノックを打てば、畳み掛けるような野次。康友コーチは先輩たちの練習の質を自分のせいで落とさぬよう、毎日ノックを打つ練習に明け暮れたそうだ。当時の康友コーチ(右打ち)は右手でバットを持ち、左手でボールをトスしてノックをしていたのだが、先輩たちに強いノックを打ち続けたことで、右肘を痛めてしまった。

それ以降、康友コーチは手を逆にした。右手でボールをトスし、バットは左手に持ってノックをした。この持ち方の利点は身体への負荷が少ないのに加え、テイクバックを深く取ることができ、強い打球が打ちやすいという点にある。同じ右打ちと言えど、手を逆にすれば慣れるまでは大変だが、慣れればノックが楽になったと言う。

石毛選手、辻選手と言った名手にノックを打ったことで、康友コーチのノック技術はメキメキ上達した。実は筆者も康友コーチのノックを受けた経験があるのだが、本当に惚れ惚れするようなノックを打ってくれる。2010年は試合前のシートノックは河田コーチが打っていたのだが、筆者は河田コーチが幾度となくキャッチャーフライを打ち上げられない場面を見かけた。だが鈴木コーチは違う。キャッチャーフライを打つ名人と言っても良いほど、キャッチャーフライを打つのが上手い。そのキャッチャーフライ(を含めたノック)を打つための理論を鈴木コーチから教わったのだが、それは「なるほど」とうなるもので、打撃教則本を読むよりもはるかに学ぶことが多かった。

上手いのは何もキャッチャーフライばかりではない。ゴロ打ちもやはり正確で、下手な選手のするキャッチボールよりもずっとコントロールが良かった。もちろんノックが上手い人がイコール良いコーチというわけではないが、しかし鈴木コーチのように理論と技術の両方を持ち合わせていれば、名コーチと呼ぶこともできるだろう。そもそもコーチとして実績を見ていけば、その手腕もよく分かる。

鈴木コーチがノック上手ということは、これで分かってもらえたと思う。だがそれだけではない。指導者としての観察眼も確かだ。若手コーチが熱血指導を行っている姿を見ていた鈴木コーチが、その若手コーチの指導で僅かに足りなかった部分を見逃さず、あとでこっそりと補足するという場面があった。このような姿は、やはり熟練コーチならではと言えるだろう。

守備走塁担当である鈴木コーチだが、打者を観る目も鋭い。実は筆者には打者として、ある欠点があった。その欠点を直す努力や、カバーする努力をしてはいたのだが、たった1球のティーバッティングで、トサーをしてくれた鈴木コーチはその欠点にすぐ気付いた。そして実に端的で、分かりやすいアドバイスをしてくれた。このアドバイスにより、筆者の欠点はすぐに修正された。もちろんその場ですぐ完璧に直せたわけではないのだが、康友コーチの指導を頭に練習したことで、今ではすっかり直ってしまった。ノックの打ち方や理論にせよ、守備・走塁・打撃指導にせよ、筆者は鈴木コーチから本当に多くのことを学ばせていただいた。

その中にはライオンズ黄金時代の走塁理論なども含まれており、本当に内容の濃い指導だった。筆者のような新米野球指導者にとって、鈴木康友コーチから教わったことはまさに財産だ。野球技術書などでは決して読むことのできない多くのことを、鈴木コーチからは学ばせていただいた。自ら体験できたことで、鈴木コーチの、野球指導者としてのレベルの高さを改めて実感することもできた。

もし鈴木康友コーチの守備理論、走塁理論を現在のライオンズの選手たちが体得することができれば、失点は減り、得点はそれ以上に増えるはずだ。そしてそれはまさに強いチームが実践すべき野球であり、常勝時代を築き上げたチームはどこも行っていたハイレベルなプレーの数々だ。鈴木康友コーチが1軍に異動して来たことで、守備に難を抱えるライオンズの内野陣に変革期が訪れたと言っても過言ではないだろう。前任者が果たせなかったことを、鈴木康友コーチなら果たしてくれるはずだ。それを信じ、筆者は鈴木康友コーチの指導から今後も多くを学んで行きたいと思っている。きっと三塁側スタンドから康友コーチを見ているだけでも、野球を深く学べる気がする。

 打撃成績 Batting Results


























 読売ジャイアンツ
1980 39 23 20 2 2 0 0 2 8 2 0 0 1 0 2 0 0 12 0 .100
1981 11 5 5 0 1 1 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 .200
1982 45 63 52 13 10 1 0 1 14 3 0 1 6 0 4 0 1 19 0 .192
1983 77 170 149 15 41 3 0 5 59 18 0 0 5 1 14 4 1 29 2 .275
1984 85 146 126 16 24 8 0 3 41 9 3 1 8 0 10 0 2 24 0 .190
 西武ライオンズ
1985 13 16 14 1 4 1 0 0 5 1 2 0 0 0 2 0 0 2 0 .286
 中日ドラゴンズ
1986 119 429 368 31 86 16 1 11 137 30 3 2 35 3 18 0 5 76 4 .234
1987 79 110 97 10 18 6 0 0 24 6 3 0 6 1 6 0 0 24 1 .186
1988 15 31 26 4 6 3 0 1 12 2 1 1 1 0 4 0 0 3 0 .231
1989 80 119 100 15 22 4 0 0 26 9 3 3 10 2 7 0 0 23 0 .220
 西武ラインズ
1990 65 101 83 7 18 2 1 1 25 7 0 2 8 0 10 0 0 11 2 .217
1991 27 22 19 2 4 2 0 0 6 1 2 1 1 0 1 0 1 2 2 .211
1992 33 26 23 1 8 2 0 0 10 2 0 0 0 0 1 0 2 4 0 .348
通算 688 1261 1082 117 244 49 2 24 369 91 17 11 81 7 79 4 12 230 11 .226
リーグ最多


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2010年11月22日 02:00