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栗山巧選手の本塁打が今季1/3になった理由
もし筆者が、今季のライオンズMVPを選出するとすれば、迷わずに栗山巧選手の名前を挙げるだろう。栗山選手はライオンズでは唯一フルイニング出場を果たし、外野手としてのフルイニング出場は西武球団では史上初の快挙だ。そして数字的にも安打数・打点・出塁率・四球などで軒並みキャリアハイを達成した。さらにはチーム状況により2番だけではなく、3番や4番を務めるなど、形としては残らない貢献度は計り知れない。
昨季はオープン戦は絶好調だったにも関わらず、開幕すると21打席連続ノーヒットという不振に喘ぎ、シーズンは最後まで復調することができなかった。だが今季はそのどん底を味わっただけあり、選手として一段レベルアップしたように思えた。しかし栗山選手ほどの高い能力があれば、もっとレベルの高い選手になりうるだろう。今季は個人としては素晴らしい数字を残した栗山選手ではあったが、こと本塁打数に関して言えば4本で、これは昨季の3分の1の数字だ。この数字には多少の物足りなさを感じずにはいられない。ではなぜこれほどまでに本塁打数が激減してしまったのだろうか?
恐らくその理由は、昨年の不振に原因があるのだと思う。昨年あれだけ苦しんでしまった影響で、今季はあまりに謙虚になり過ぎてしまったのだろう。今季の栗山選手に対し、キャリアハイを目指すバッティングというよりは、不振にならないためのバッティングという印象が、筆者の頭の中には強く残っている。もちろんそれが間違いというわけではない。なぜなら部門別に見ればしっかりとキャリアハイを達成できているためだ。今季の栗山選手に文句を付ける必要などはない。それどころか筆者は、MVPにしたいと思っているほどなのだから。だが栗山選手自身、今季の本塁打の少なさは気にしているようで、秋季練習やキャンプでは、飛距離を伸ばすための改良にも取り組んでいくようだ。
さて、栗山選手は不振にならないためのバッティングをしていると先述したわけだが、それは一体どういうことなのだろうか。読者の方々の多くはすでにお気づきかとは思うが、それでもあえて言うならば、それは逆方向へのバッティングということになる。栗山選手は今季、この逆方向に強いこだわりを持っているようだった。なぜ逆方向のバッティングが不振になりにくいかと言うと、逆方向(栗山選手の場合はレフト方向)に打つには、インサイドアウトというスウィングが必須になるためだ。インサイドアウトとは、バットを身体の近くから出し、ボールの内側、つまりボールの自分側を内側から強く叩くというバッティングだ。これを心掛けることでスウィングがコンパクトかつシャープになり、ミート力が安定する。栗山選手はこのインサイドアウトを失わなかったことで、今季.310というハイアベレージを記録することができた。
だが左打者がこのインサイドアウトにこだわり過ぎてしまうと、栗山選手のように本塁打が減る傾向が強くなる。それは先日のコラムでも書いた通り、左打者の打球はスライスしやすくなるからだ。打球がスライスされると、ボールはファールゾーンに曲がりながら飛んで行く。これは打球がファールゾーンに飛ぶばかりではなく、飛距離そのものを縮めてしまう。これが栗山選手の本塁打数が減少した原因だ。今季最後のレギュラーシーズン最後の6試合を見ても、三振・四球を除いた打球方向は、左方向12・中方向6・右方向4と極端な数字が出ている。
打者は調子を落とし始めると、バットをドアスウィングさせる傾向が強くなる。今季のG.G.佐藤選手はその典型だった。インサイドアウトは、不調になりそうな時にだけ意識すれば良いものだと筆者は考えている。それ以外の時は、内角球や威力足りないボールに対してはどんどん引っ張ってしまって良いと思う。そうすれば飛距離のアベレージは確実にアップするし、本塁打数も4本という数字では終わらないはずだ。だが引っ張るバッティングを繰り返してしまうと、どんなバッターでもいつの間にかドアスウィングになってしまうことがある。インサイドアウトとは、そんな時に強く意識すれば良いのだ。ちなみに今季は中島選手もドアスウィングによる不調時期が長かった。
渡辺監督は栗山選手を2番に据えるにあたり、ひょっとしたら故三原脩監督が最強西鉄軍団や、戦後初優勝を決めた際の巨人監督時代に実践した流線型打線を意識しているのかもしれない。西鉄で言えば豊田泰光選手、巨人で言えば赤バットの川上哲治選手や千葉茂選手だ。ちなみに今季の栗山選手の起用法は、まさに2番豊田選手の起用法とまったく同じだった。西鉄では3番の中西太選手や4番の青バット大下弘選手が故障したり不調になったりすると、2番の豊田選手が3番・4番を打ちチームの支柱を守った。まさに今季の栗山選手とまったく同じ起用法だったのだ。果たしはこれは偶然だろうか。
流線型打線に照らし合わせて考えると、恐らく2011年はやっと完成に近づくのではないかと筆者は考えている。その理由は、打率も本塁打数も残せるフェルナンデス選手が加入したためだ。フェルナンデス選手が入ったことで打率の低い中村剛也選手には5番を打たせることができる。1番片岡・2番栗山・3番中島・4番フェルナンデス・5番中村という陣容が整えば、1~5番までの得点力は他チームの追随を許さないだろう。
打線に関しての話はまた別の機会にゆっくりすることにして、話は栗山選手に戻そう。栗山選手が本塁打数で20本を越えられないのは、その体型にも多少の原因がある。例えば中島選手と比べてみよう。中島選手の180cm83kgに対し、栗山選手は177cm85kgだ。身長は栗山選手の方が3cmも低いのに、体重は2kgも勝っている。これは体脂肪率が少なくなければ考えられない数字だ。つまり中島選手以上に、栗山選手は体内脂肪率が低いと予想することができる。では脂肪量と本塁打数とに一体どんな関係があるのだろうか?
まだ二度目の三冠王を獲る前の落合博満選手の話をしよう。オールドファンはご存知かもしれないが、プロ入り直後の落合選手は非常にスマートだった。プロ野球選手の中では細い部類にも入れるほどだ。だがその頃、落合選手は本塁打数が伸びないことに悩んでいた(と言っても30本は越していたのだが)。落合選手は技術的に、理論的に様々な改良に取り組んだが結果が伴わない。そんなことを食卓でこぼしていた際、信子夫人が「ホームランバッターはみんなあんこ体型」であることを何気なく指摘した。物は試しと落合選手は夫人のアイディアを実践し、身体を太くしていった。その結果、82年には「平凡な数字」ということで豊田泰光氏に批判された最初の三冠王時代の数字.325、32本、99打点を大幅に上回り、85年には.367、52本、146打点という圧倒的な数字を残し、豊田氏を納得させる形で二度目の三冠王を達成した。
パワーとは、スピード×エネルギーに相当する。つまりこれは筋肉が担当する分野だ。だがこれにさらなるプラスアルファを加えるならば、筋肉だけではダメなのだ。ある程度の体内脂肪が必要とされる。カチカチとぶつかり合う2つの振り子玉を想像してみて欲しい。ぶつかり合う振り子玉の後方に、脂肪に相当する別の錘を付けると、振り子はさらに力強くぶつかり合うことになる。栗山選手や中島選手には、筋力はあるが脂肪というプラスアルファの錘が少々足りないのだ。逆に中村選手の場合は、脂肪がある分6割のスウィングでもスタンドインさせることができる。
だからと言って、栗山選手に太れとは言わないし、そうなる必要もないと思う。先述したようにインサイドアウトという考えをある程度解除してあげれば、シーズン20本打つ能力は間違いなく持っているバッターだ。.330打って20本以上打てれば、豊田泰光選手を越える2番バッターになれる可能性も高い。そして栗山選手に18犠打もさせる必要はなくなるはずだ。そもそも栗山選手を2番に置いて18犠打もさせるというのが、今季一番中途半端なベンチワークだったように筆者は考える。栗山選手を、栗山選手らしく起用してあげれば、栗山選手は来季間違いなく再びベストナインに名を連ねるだけの選手に躍進するはずだ。もちろん、今季もまだベストナインの可能性はあるが、どうせなら日本一を達成した上で他の賞も同時に獲ってもらいたいと筆者は願っている。
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2010年10月28日 02:12 Tweet

