前の記事 星野智樹投手の不調の原因、その解決方法
次の記事 個性派集団だがチーム自体には個性のない西武

左対左が絶対的に打者有利となる根拠



今回の記事は、前回の星野投手のコラムの番外編として書き進めてみようと思う。筆者はシーズン中から何度も、左先発投手に対してこそ左打者を当てるべきだと言ってきた。だがゲームレビューでは、それほど詳しい根拠はスペースの都合で書かずにいた。だがシーズンオフとなりスペースはいくらでもあるので、ここで改めてその根拠を解説して行こうと思う。

投打の対決には4種類ある。右投手対右打者、左対左、右対左、左対右だ。この4つの中で最も多いのは間違いなく右対右だろう。そして次が右対左だ。つまり球界には右投手が多いという傾向と、左投手が少ないという傾向が同時に入り混じっているわけだ。星野投手のコラムでは、これを「慣れ」という言葉を使って説明をした。一般的な理屈を述べるのであれば、左打者は、右打者よりも一塁に近い場所に立って打撃を行うため、その距離の分内野安打が増える。内野安打が増えれば当然打率も上がって行く。このような理由から、お子さんを右打ちから左打ちに転向させる親御さんが多いと聞く。だがこれに関しては相手投手は右でも左でも関係ないということになる。だが筆者は、左投手にこそ左打者を当てるべきだと考えている。あくまでも対左投手が条件なのだ。

左投手対左打者という対決において、セオリーでは左打者が非常に不利だということは星野投手のコラムですでに述べたことだ。だが「慣れ」という言葉を使い、左打者が左投手に慣れることができれば、左対左ほど打者に有利な対決はない。筆者は自らの野球理論からそのように考えている。だがこれから述べるその理論も、監督(もしくは打撃コーチ)が左投手に対し右打者しか起用しないのであれば意味はなさない。なぜなら、左投手に慣れることができないからだ。プロ野球の打者が3割前後の数字を残すのに必要な慣れの機会は、最低300打席と言われている。つまりどんなに才能のあるバッターであっても、年間300打席以上立てない限りは1軍投手に慣れることはできない。しかも300打席の内、一流投手との対戦は数えるほどしかないだろう。この数字の中からあえて左対左の対決を回避してしまうようなことをすれば、それこそ左バッターは一向に一流にはなれなくなる。

左対左の対決で、その対決に慣れた時左打者の方が有利という理由は、一言で言えばファールを打てるということに尽きる。いや、厳密に言えばファールになると言った方が正確だろう。

多くの左打者はバットスウィングの途中から、一塁方向へ向かう動きが入ってくる。イチロー選手もよくする打ち方だが、これを「走り打ち」と言う。もちろんすべてがすべて走り打ちというわけではないのだが、多かれ少なかれ、左打者は走り打ちを行っている。そしてこの走り打ちがポイントとなるのだ。走り打ちそのもののポイントや、骨盤などの動き、バットスウィングの軌道に関しては、以前上本達之捕手坂田遼選手を例に何度か解説してきたが、これに関しては後日改めてまた解説するので、今回は省くことにしたいと思う。

話を投手に変えてみようと思う。しかも投球のコースを、配球の基本中の基本となる外角低めに絞ってしまう。左打者の外角低めと言えば、ホームベースの一番右打席寄りの低めということになる。ここに投球する際、まず右投手の場合だが、ボールにはそれほど左右の角度が生じることはない。これはスライダーにせよ、ツーシームにせよ同じだ。だが左投手の場合は違う。左投手はピッチャーズプレートの一塁側の端を踏んでいる。そこから左手でこのコースに投げると、いわゆるクロスファイアーという対角線を使った、角度の付いたボールになるのだ。左対左の対決を打者有利にするためには、左打者にこのクロスファイアーを慣れさせる必要があるわけだ。

外角低めと言えば、最もヒットが出にくく、最も長打になりにくいボールのコースだ。しかもコースとしてはボールゾーンギリギリのため、2ストライクなら見送ればストライクになることもある。ましてやクロスファイアーであれば見逃せばほぼ確実にストライクとコールされるだろう。ということは、難しいコースであるとは言え、ここを簡単に見逃していては三振が増えてしまうことになる。だが左投手に慣れている左打者であれば、これを簡単にファールにすることができるのだ。

左打者が、左投手の外角低めのクロスファイアーやスライダーを打ちに行く場合、非常に面白い現象が起る。バットは一塁方向へ向かい、ボールは三塁方向に向かって飛んで来る。この2つが重なることで、インパクトがスライス状態になるのだ。これを文章だけで説明するのは非常に難しいのだが、通常バットは面を利用した横軸で使う。だがスライスという状況では、バットをボールに対して縦に入れて打つという感覚になる。バットのヘッドがキャッチャーを向いているのに近い段階で、インパクトの瞬間を迎える。ボールとバットの向かう方向の相違性により、ボールがバットの表面をスリップしていくような状態で、インパクトがスライスされる。当然だがこの状態でボールがバットに当たれば、100%ファールになる。このファールこそ、左対左で打者が有利に立つために必要な要素なのだ。

投手の順手・逆手を問わず、外角低めを確実にヒットにできるバッターはほとんどいない。しかもボールは、ホームベースをかすりさえすればストライクとなるので、事実上ストライクゾーンは、ホームベースよりもボール1個分外側にあるということになる。この状況で走り打ちをする左打者にとっては、左投手が投げるクロスファイアーやスライダーは、手が届くとは思えないほど遠く感じるはずだ。打者は一塁方向に向かっているのに、ボールは逆方向に流れていってしまうのだから。だが左投手を慣れることで、左打者はそこは辛うじて手が届く範囲だということを、身体にインプットさせることができる。つまり簡単に見逃さないようになり、追い込まれても身体が反応してくれるようになる。これが「慣れ」や「反復練習」の必要性だ。合気道の師範藤平光一先生の「理詰めで鍛錬し無で戦う」という言葉にも繋がっていくことだ。頭で分かっていても、本番になって身体が反応してくれないのでは意味がない。野球は間があるスポーツだが、考えられるのはボールデッドにおいてのみだ。ボールが動いている状況で考えていては、考えている間にプレーはあっという間に終わってしまう。

打者とすれば外角低めという難しいコースのボールを、追い込まれてもファールで逃げ続けることができれば、あとは甘いボールを待てば良いだけだ。外角低めを攻められた後であれば、内角ギリギリに来ない限りはすべてが甘いボールに見えるはずだ。こうなってしまえば、プロの一流打者であれば簡単にヒットを打つことができるだろう。これこそが、筆者が左投手にこそ左打者を当ててもらいたい根拠なのだ。

では右対右、右対左、左対右ではどうなのだろうか。残念ながら、左対左の時のようなスライス効果を得ることはまずできないだろう。左対左以外ではいずれの場合もスライスではなく、フックした状態でインパクトすることになり、外角低目をファールにするには非常に高度が技術が必要となってくる。だがどんなにファール打ちの名人であっても、フックした状態でインパクトを迎えれば、ほぼすべての打球がフェアゾーンに転がってしまう。つまりぼてぼての内野ゴロに終わってしまうということだ。野球というそういう風に上手く設計されたスポーツなのだ。だが左対左ではこれがファールになる。つまり、左対左以外では内野ゴロでアウトになってしまうものが、左対左であれば簡単にファールにすることができ、アウトにはならないのだ。

「1塁までの距離が近いから左打ちに転向する」という浅はかな考えは、プロであればすべきではないだろう。足の速さを活かすために左打ちを始めるという選手は多いが、その足もバッティング技術がなければ決して活かすことは出来ない。そして起用する側も、左対左だから打てないという時代遅れの誤った理論を捨て、左投手だからこそ左打者を立たせるべきだと筆者は声を大にして言いたい。プロチームの監督には今日の勝利や今年の優勝だけを考えるのではなく、3年後や5年後にもまだ優勝し続けられるチーム作りを目指し、采配を振るってもらいたい。今日勝つための采配だけでは、チームは決して常勝時代を迎えることはないだろう。今日勝つために左投手から左打者を外すのではなく、監督が「こいつは一流に育てたい」と決めた左打者がいるのなら、数字が低迷したとしても使い続けることだ。筆者が今季最も残念だったのが、打者として成長著しかった原拓也選手を、今季ほとんど飛躍させられなかったことだ。原選手は守備要因に甘んじるレベルの選手ではないと筆者は確信している。彼を開花させることができれば、首位打者争いに食い込めるだけの活躍をするだろう。そのためにも監督・コーチは、左対左の誤った理論は勇気を持って捨ててしまわなければならない。そうしなければ、才能ある左打者をどんどん潰してしまうことにもなりかねないからだ。

【お知らせ】
最近、日刊埼玉西武ライオンズの記事をブログやmixi日記などで再利用されている方がいるようです。日刊埼玉西武ライオンズの記事は、筆者が許可していない限り、酷似した文章、コピーした文章を他ブログ、他サイトに掲載することは禁止いたしております。もし何かお気付きの点などございましたら、ぜひメールでお知らせくださいませ。ご協力よろしくお願いいたします。

前の記事 星野智樹投手の不調の原因、その解決方法
次の記事 個性派集団だがチーム自体には個性のない西武


日刊埼玉西武ライオンズをフォローしよう!
baseball 記事を楽しんでもらえたら、ランキングに1球の投票をお願いいたします。
にほんブログ村 野球ブログ 埼玉西武ライオンズへ



【関連記事】

2010年10月26日 02:31