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筆者が見続けた捕手・上本達之の2010年
26日、2位が確定した敗戦後の細川亨捕手の姿は印象的だった。だがそれと同じくらい、上本達之捕手の姿もまた印象的だった。試合が終わるとすぐにベンチ裏に下がって行った上本捕手だったが、いつまでもダグアウトにはいられない理由があった。涙だ。ダグアウトを引き上げる上本捕手は、すでに号泣状態だった。
上本捕手にとって今季は最も楽しく、また最も辛いシーズンだったと思う。捕手としてスタメン起用を続けられるプレッシャーも、決して小さくはなかったはずだ。発展途上である捕手・上本達之にとっては、恐らく実力以上のプレーを求められたこともあっただろう。1軍でプレーする限りそれは当然だとは思う。しかしその重圧は相当な物だったはずだ。
上本捕手と細川捕手での勝率を正確に計算した訳ではないが、勝ち数で言えば恐らく上本捕手の方が多い気がする。その要因は色々と挙げることができるが、その1つは自身の打撃によりチームを勝利に導くことができた、ということだろう。好調時の上本捕手は、勝負どころでの打撃の良さが光っていた。もしキャッチャーという異色のポジションでなければ、上本捕手は十分レギュラーになりうる打撃力を持っていたと言える。ライオンズでなければ、クリーンナップを打っていた可能性もあっただろう。
現段階、捕手としての技術を純粋に見比べれば、当然だがキャリアの多い細川捕手に軍配は上がる。リード、キャッチング、スローイングの正確性、作戦力などだ。上本捕手は1軍の捕手としてプレーするようになったのは、実質今年が1年目と言える。その経験不足を急速に補うことは不可能だ。特にキャッチャーというポジションは、育つためには他のポジションよりも多くの経験を要することになる。1年や2年1軍でプレーしたからと言って、それが一流の証ではない。巨人阿部捕手然り、ダイエー時代の城島捕手然り、1~2年目は酷評ばかりしか聞かれなかった。しかしその酷評が両選手の気迫に火をつけ、急成長を成し遂げる要因にもなった。当時の巨人・ダイエーは正捕手の育成が急務とされていた。そのため首脳陣も、使いながら徹底的に叩き、育てるしかなかったわけだ。
その事情と比べると上本捕手の場合は少し違う。だが銀仁朗捕手を怪我で欠いた今季は、細川捕手に次ぐ第二の捕手の育成が急がれた。筆者としては野田捕手にもう少しチャンスを与えて欲しかったという思いが強いのだが、しかし年齢や将来の育成のことを考えると、やはり上本捕手だったのだろう。
打者としての能力は別とし、上本捕手のキャッチャーとしての能力に関しては、筆者はまだまだ物足りないと思っている。特にリード面に関してや、マウンド上で投手と言い争う姿はキャッチャーとしてはあまりに未熟だ。だが細川捕手にはなく、上本捕手にある筆者の好きな部分があることもまた事実だ。
上本捕手はとにかく我武者羅で一生懸命だ。そんな上本捕手の姿を見ていると、感動することも少なくない。特にワンバウンド投球を押さえる場面だ。キャッチャーとしての基本からは掛け離れてしまうのだが、ワンバウンド投球を押さえに行く際、身体全体で覆いかぶさるようにボールを押さえに行くことがある。技術としては決して正しい方法ではないのだが、這いつくばってでもボールを後ろに逸らさないという気持ちは、見ていて非常に清々しくもある。このような一生懸命な姿を見ていると、渡辺監督が期待を込めて使い続けたくなる気持ちもよく理解できる。
今季の経験を活かし、上本捕手は来季は更なる成長を見せてくれることだろう。それこそ細川・銀仁朗・上本の三つ巴になる可能性も高い。だがそうなれば捕手陣はさらに切磋琢磨することとなり、底上げは一気に進むはずだ。だからこそ細川・銀仁朗と怪我人が続いたこの2年、上本捕手にだけは怪我なく来季を迎えてもらいたいと思う。
そしてクライマックスシリーズではその打棒を活かし、チームのファイナルステージ進出に貢献してもらいたい。昨日流した涙は、決して無駄にはならないだろう。今季大きく成長した捕手・上本達之の集大成を、クライマックスシリーズでいかんなく発揮してもらいたいと思う!
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2010年09月27日 17:27 Tweet

