2010/04/27 西武vsロッテ 7回戦
| 2:58 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
| 千葉ロッテ | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 8 | 0 | |
| 埼玉西武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | × | 3 | 6 | 0 |
埼玉西武vs千葉ロッテ7回戦(西武ドーム:13,835人)
埼玉西武ライオンズ 3勝4敗0分
継投:○岸孝之~H藤田太陽~Sシコースキー
勝利投手:岸孝之 5勝1敗 2.66 5連勝
セーブ:シコースキー 2敗11S 1.26
ホームラン:中村剛也(7号2ラン)
【ハイライト】
【ヒーローインタビュー】
【勝利監督インタビュー】
【ゲームレビュー】
今夜の岸孝之投手も、まさにパーフェクトなピッチングだった。3月22日にはあまり良くなかったカーブを狙われ、ロッテ相手にKOされていただけに、今夜はさながらリベンジと言った様相だった。全137球のうち、筆者が「あれ?」と感じたのは1球目のストレートのみで、他のボールは本当に力がみなぎっていたように感じた。まさにエース級のピッチングだった。だがそれ以上に凄かったのは、これだけ完璧なボールを投げている岸投手から7安打を放ち、1点を奪ったロッテ打線の好調さだ。これだけ調子の良い岸投手を打ってしまうのだから、明日・明後日に投げるピッチャーは細心の注意を払う必要があるだろう。
そしてこの試合からはついに中島裕之選手が3番ショートとしてスタメン復帰を果たした。レフトスタンド最前列には「おかえりナカジ」の応援幕が掲げられ、ファンの復帰歓迎コールは動画中継を通してもよく聞こえていた。やはりナカジ人気は本当に凄い。ライオンズの背番号3を背負うのだから当然と言えば当然なのだが、改めて中島選手の人気を実感した1試合でもあった。しかも復帰して早々に2安打を打ってしまうところが中島選手は凄い。本当にファンの期待を裏切らない男だ。
さて、ここまであまり触れてくることはなかったのだが、そろそろ藤田太陽投手にも触れておかなければならないだろう。今季のライオンズの快進撃を、藤田投手抜きで語ることはできないからだ。それほど藤田投手の活躍は目覚しい。これまで12試合に投げて失点は0。今夜の試合でも打者3人をパーフェクトに抑え、クローサーのシコースキー投手に繋いだ。
筆者の西武ファン仲間の話によれば、昨季の藤田投手は阪神の春季キャンプを先発としての調整をしながら過ごしていたらしい。そこから7月にトレードでライオンズにやってきたことでリリーバーとしての調整が上手くいかず、球速が出ていなかった。しかし今季は最初からリリーバーとして調整したことで、開幕直後から本当に力強いボールを投げている。恐らく打席での体感スピードはスピードガン表示より5km以上速く感じているはずだ。
藤田投手は身長が187cmと高く、去年までは背の高い投手特有の弱点を抱えていた。それは背の高さをしっかりと沈めて投球できないことで肘が下がり、球威・切れが出ないという点だ。脚の長さのせいでそう見えるだけなのかもしれないが、筆者が見た限りでは、藤田投手はコントロールを良くするためにわざとステップ幅を若干狭めているのだと思う。ステップ幅を狭くすると確かにコントロールは安定するのだが、その分球威が落ちたり肘が下がってしまったりする。昨年移籍後の藤田投手は、まさにこの弱点を抱えていた。
ピッチャーにとって最も重要な要素の1つに、並進エネルギーの確保がある。つまり投球方向に対するエネルギーをステップによって生み出すということなのだが、ステップが狭く上体の高い藤田投手はこのエネルギーを上手く確保できていなかった。だが今季は逆に、上体の高さを上手く利用して、位置エネルギーを並進エネルギーに加えることに成功している。位置エネルギーとは、高いところから落下していく時に生じるエネルギーのことで、ピッチャーの場合は前脚を振り上げてそこから降ろす時に位置エネルギーが発生する。一昔前に活躍した近鉄の阿波野投手や、日本ハム時代の西崎投手らのヒールアップ投法は、前脚の振り上げ+かかとを上げた高さを位置エネルギーにする高度な技術だった。
長身を活かした位置エネルギーを増幅させられたためか、今季の藤田投手のストレートには見た目以上の力感がある。そして上体だけで強いボールを投げようとするのではなく、鋭い脊柱スピンを用いることで球速を上げているため、ボールの切れも安定して出すことに成功している。リリーバーとしてこれができて安定しているのが藤田投手で、これができていないために安定感を得られないのが小野寺力投手というわけだ。
小野寺投手の場合はコントロールを安定させることを最優先にしてしまったことで、自らの長所であるボールの勢いを殺してしまった。小野寺投手は現在L字ステップと言って、振り上げた前脚を一度垂直に降ろし、地面すれすれのところで投球方向に持っていくという形のステップを踏んでいる。
せっかくなのでもう少し小野寺投手の解説をしておくと、小野寺投手は元々二段モーション気味の投手だった。だが二段モーションが禁止されてしまったことで自分のボールを見失い、長く低迷してしまっている。二段モーションを採用している投手の共通点は、前脚を振り上げたトップの位置での安定感だ。分かりやすく言えば、軸足1本でしっかり立っているという状態。これだけを聞くと良さそうに聞こえるのだが、ピッチングにおいてこの安定感はまったく必要のないことなのだ。なぜならバランスよく1本脚で立つという状態は、投球方向に影響するエネルギーを一切生まないどころか、投球方向に働くエネルギーを相殺してしまう場合がある。二段モーションを取るということは、この安定感を投球方向に対して開放してあげるということなのだ。
一段目の脚の振り上げで体勢を安定させ、二段目の小さな振り上げで、重心を投球方向に移動させる切っ掛けを自らに与えている。これが二段モーションのメカニズムだ。二段モーションのメカニズムをしっかりと理解している投手は、二段モーションからの脱却に成功している。例えば楽天の岩隈投手、横浜の三浦投手らがそれに当たる。だが小野寺投手の場合は二段モーションの禁止で失われた並進エネルギーを別のもので補おうとするのではなく、あくまでも二段モーションの安定感を求めてしまった。それが長らく続く不振の原因になっていると筆者は見ている。
逆に藤田投手のピッチングモーションをぜひ見てもらいたいのだが、藤田投手は前脚を振り上げたトップの位置で、まったく安定感を得ていない。前脚を、骨盤を閉じながら振り上げることでヒップファーストフォールを実現し、ヒップファースト(前脚側骨盤の裏側<お尻>が先行となる状態)の体勢になることで上体は投球方向とは逆側に傾斜してバランスを取ろうとする(動的バランスであり、安定感とは異なる)。この時身体は「くの字」に曲がって見えるのだが、この反応を生理学用語ではカウンタームーブメントと呼ぶ。藤田投手の躍動感溢れるピッチングフォームは、このカウンタームーブメントが引き起こしていると言っても過言ではない。
チョロQを思い浮かべてもらえれば分かりやすい。チョロQは、最初に後ろに引っ張ることで前へ進むエネルギーを生み出している。反対に後ろに引っ張ることなく、ただ前へ押し出すだけでは、チョロQは走ってはくれない。ピッチャーにもこれに似た原理が働いているのだ。後ろに引っ張る動作が入っている藤田投手と、後ろに引っ張る動作が入っていない小野寺投手。これが2人の最も大きな違いだと言える。
藤田投手はサイドハンドスローに転向することで、脊柱スピンを効果的に使えるようになった。もしオーバーハンドスローのままであったなら、ひょっとしたら小野寺投手と同じ命運をたどっていたかもしれない。阪神の星野仙一シニアディレクターは「藤田は環境を変えれば必ず活躍できるはずだから、早くトレードで出してあげたい」と言っていたそうだ。ライオンズに移籍し、まさにその言葉通りになった。今季の藤田投手の状態であれば、調子を落としたとしても不調が長引くことはないだろう。それどころかシコースキー投手がもし調子を落としたとしても、藤田投手をクローサーに据えられるという安心感さえある。今年の藤田太陽投手は、一年を通して信頼できそうだ。
【4月28日の予告先発投手:石井一久投手】

2010年04月27日 23:40
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