雄星投手はなぜ本領を発揮できなかったのか?
雄星投手の1年目は、結果的には2軍からのスタートになりそうだ。雄星投手自身としては不本意だったとは思うが、筆者としてはこれでよかったと思う。キャンプでの結果云々ということではなく、雄星投手にはまだ、99年の松坂大輔投手のような完成度はない。99年の松坂投手と今年の雄星投手で、最も違う点は視点だ。筆者は99年、2010年ともに2人を見続けていたが、99年の松坂投手が常に相手に向かっていこうとしていたのに対し、今年の雄星投手は常に自分との戦いだった。2人のこの視点を違いは、想像以上に大きかったはずだ。
渡辺監督は、99年当時の東尾監督が、どのようにして松坂投手を扱っていたのかを耳にしているはずだ。注目の高卒ルーキーに対し、どのようなケアをしたらいいかということは、ノウハウとして持っている。そのため渡辺監督にしろ、潮崎コーチにしろ、雄星投手に対し見ていて安心できる接し方をしていたと思う。そしてそれは雄星投手にとっては、まずは西武に来たという大きなプラスになったはずだ。他球団では恐らくこうは行かなかっただろう。春季キャンプを見ていても、花巻東高の佐々木監督はライオンズに対し安心感を持てていたと思う。
そんな中で雄星投手は、なかなか自分の殻から出て行くことができなかった。それは性格的にということではなく、1人の投手として。しかしなぜ高校球界であれだけの実績を挙げたにも関わらず、プロではここまで無力だったのか?その理由は簡単だ。雄星投手は決して無力だったわけではない。恐らく短いイニングであれば、本領さえ発揮できれば開幕1軍で十分通用するだろう(先発としてはまだ無理だと思うが)。だが結果的に雄星投手は今キャンプで本領を発揮することはできなかった。
その理由は勉強のし過ぎだ。雄星投手は月に2~3万円分の本を買い、読んでいるという。野球選手としては類稀なタイプだ。筆者が考えるに、この勉強量が雄星投手自身の首を絞めてしまったのだ。
雄星投手は工藤投手の著書をすべて読んでいると言う。筆者ももちろん工藤投手の著書はすべて読んでいる。今年1月に発売された『限界を作らない生き方 2009年、46歳のシーズン
工藤投手は最初から今の工藤投手だったわけではない。80年代の全盛期には大いにやんちゃなこともしていた。高校野球の引退後も、西武の春季キャンプが始まるまでの数ヵ月はトレーニングなどほとんどしないで遊んでいたほどだったと言う。だが筆者はそれで良いと思う。もちろん工藤投手のように遊びほうけてしまうのではなく、多少のトレーニングは続けておくべきだとは思うが、気を抜ける時はしっかり抜くべきだと筆者は考えている。
雄星投手は誰もが言うように、真面目過ぎるとも言える性格だ。春季キャンプが始まってからの雄星投手の言動を見ていると、どうも失敗を嫌っているような感覚を覚えることがある。もちろん失敗をしないに越したことはないのだが、どんな選手であっても失敗をしないということはありえない。だからこそ失敗に対してはある程度の開き直りが必要で、その開き直りができていないと、一度調子を落とすとなかなか上がって来れなくなる。
雄星投手は上を見過ぎているのだ。将来的に工藤投手のような一流を目指すことはいいことだ。だが今現在の状況でそこを目指す必要はない。なにせ工藤投手は雄星投手が生まれる10年も前からプロ野球選手を続けているのだ。だから今現在において、雄星投手が工藤投手の感覚で野球をやろうとしても、それには無理がある。5年後10年後になって、工藤投手が著書に書き記している感覚を再現しようとするのなら、それはひょっとしたら可能かもしれない。だが高卒1年目の春季キャンプでそこに目をやってしまってはいけない。
工藤投手もそうなのだが、恐らく雄星投手もコーチを必要としないタイプの投手なのだろう。自分の中に膨大な知識があるために、その知識を駆使して自分をコントロールできてしまう。高校時代はそれでもまだコントロールできていたかもしれない。だが今雄星投手が立つマウンドはプロの世界だ。18歳の投手では、まだまだ自分の知識だけで自分をコントロールすることは難しい。
そういう意味でも、雄星投手が2軍に行くメリットは大きいと思う。2軍には小野コーチ、石井貴コーチという2人の投手コーチがいる。現役時代は共に闘志を前面に押し出すタイプだった。そして2コーチとも現役時代に肩を故障しているため、肩に関する知識も豊富に持っている。例えば運動機能において、どの角度で腕を振ると一番負荷が少なくなるか、というような知識だ。
1軍の潮崎・橋本両コーチの場合は逆に、技能における指導に定評がある。だがこの2コーチが求めるそれは、雄星投手にはまだまだレベルが高過ぎると筆者は感じていた。もちろん1軍を預かるコーチであるため、高卒ルーキーが相手であってもレベルを下げないことは必要なことだ。だがそれで付いて来れないのなら、2軍に落とすというのがやはりベストな選択だと言えるだろう。
雄星投手がまだまだ1軍レベルではないことは、筆者はこのブログで幾度となく書き伝えて来た。だがどこかでは「松坂投手のような活躍をしてもらいたい」という期待もあった。いわゆるファン心理というやつなのだろう。しかし2軍行きがほぼ決定的となり、今後は筆者ももっとリラックスして雄星投手の応援ができるような気がする。
とにかく素材は一級品だ。だからこそ雄星投手には決して焦らず、高過ぎる上を見ることもなく、まずは頑張れば手の届く高さに目標を設定し、1軍昇格を目指して頑張って欲しいと思う。
2010年03月01日 14:05

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