若獅子の守備が、黄金時代を超えられない理由
現在のレオナインの守備は、決して低レベルではない。それどころか、年々着実にその技術は向上して行っている。しかしそれでも黄金時代の鉄壁の守備陣にはまだまだ及ばない。片岡選手にしろ、中島選手にしろ、中村選手にしろ、守備のレベルは十分に高いと言える。それでもやはり黄金時代の守備陣には遠く及ばない。中村選手に関しては昨年は15個のエラーをしていて、数字だけを見るととても上手いとは言えないだろう。しかしこのうち3つは慣れないファーストでのエラーだったことを考えると、12失策というのは中島選手と同じ数字になる。
現在の守備陣と黄金時代の守備陣を比較すると、唯一違う点がある。それは固定されたファーストがいるかいないかだ。ファーストというのは、一般的には守備があまり上手くない選手が守るポジションという印象がある。だが実際にはまったく違う。ファーストの守備が不安定なチームは、内野陣全体の守備力もなかなか安定してこない。
黄金時代にファーストを守っていたのはもちろん清原和博選手だ。清原選手は非常に守備の巧い一塁手だった。恐らくPL学園出身ということも大きかっただろう。PL学園と言えば当時の監督は中村順司・現名古屋商科大学野球部監督だった。中村野球は非常に厳しい。練習中のノックで気のないエラーをしたり、ファーストがファンブルしたりすると、次の瞬間その選手はグラウンドから出されていた。中村監督はそこまで徹底して1球1球を大事に考える監督だった。
そのためPL学園で中村監督の指導を受けた選手は、守備が巧い選手が多い。清原・桑田のKKコンビを筆頭に立浪和義選手、福留孝介選手、サブロー選手などがいる。そして名手中の名手である宮本慎也選手ももちろんPL学園の出身だ。
(福留選手に関しては送球難のため内野から外野にコンバートされた)
ではなぜファーストの守備に安定感がないと、内野陣全体が安定しなくなるのか?その理由は安心感だ。巧い選手がファーストを守っていると、他の内野手は安心してファーストに送球をすることができる。安心して投げられるからこそ思い切ったプレーや送球も可能となるのだ。
現在はオリックスでプレーをする元西武のアレックス・カブレラ選手だが、彼もまた守備の巧い選手だった。ただ問題は守備に対するモチベーションが低かったということだろう。ミットさばき、肘の使い方は非常に柔らかく、難しいバウンドに対しても巧くミットを出す場所を合わせることができる選手だった。だが緻密なプレーをしたがらなかったために、その能力を発揮することはほとんどなかった。
だが清原選手は素晴らしかった。ミットを着けた左手のハンドリングは非常に正確で、ちょっとやそっとの悪送球ならば捕って当たり前と言った顔で捕っていた。黄金時代に名手と謳われた辻初彦選手、石毛宏典選手らは、清原選手がいたからこそ名手になれた選手だったと筆者は考えている。もしあの時代のファーストがデストラーデ選手だったら、黄金時代はもっと早くに終焉を迎えていただろう。
話を現在に戻すと、今年ファーストを守るであろう選手は石井義人選手、平尾博嗣選手、ブラウン選手、中村選手、上本選手と実に人数が多い。だがこの中でも最も多くファーストを守りそうなのは石井義人選手で、次いで平尾選手だろう。この2選手の昨年の守備率は石井選手が.997で、平尾選手が.996となっている。率だけを見ると2選手とも非常に優れた野手であると見ることができる。しかし実際には違うと断言することができるだろう。
平尾選手に関しては確かに守備は巧い。持病を抱える腰に不安さえなければ内野であればショート以外はどこもこなせるほどだ。だが石井選手は違う。石井選手の場合、記録には残らないエラーをかなり出している。例えば微妙な悪送球を受けた時、石井選手がボールに触らなければ石井選手にエラーが記録されることはない。彼の場合、このような記録に残らないミスが非常に多いのだ。
恐らく巧いファーストであればアウトにできているような刺殺プレーでも、石井選手の場合ボールにミットが届いていない時がたまにある。またショートバウンドに関しても、石井選手は簡単にミットからボールをこぼしてしまう。ファーストはグラブではなくミットを使っているため、送球は確実に止めなければならないにも関わらず。
石井選手はバッティングに関してのハンドリングは非常に巧いのだが、こと守備になるとまるで別人になってしまう。ミットの使い方が非常に硬く、ショートバウンドが来てもミットを寝かせたまま捕球態勢に入っていることがある。これではボールは簡単にミットをすり抜けて行ってしまう。
これに関しては筆者よりも、実際に守っている野手の方が強く感じているはずだ。野手がファーストに対し、守備が上手くないというイメージを持ってしまうと厄介なことになる。捕球したボールを大事にし過ぎて送球が遅れたり、良いボールを投げなければいけないという余計なプレッシャーが手元を狂わせてしまったりする。最悪の場合イップスになる選手も出てくるだろう。
渡辺監督が今後守備をさらに重視した野球をして行くのなら、セカンド・ショートを考えるよりもまずはファーストの育成が急務となるだろう。筆者としては上本選手をファースト専任にしても良いのではと考えている。そうすれば上本選手の打撃をもっと行かすこともできるし、専門がキャッチャーであるため、捕球技術の高さは内野陣に安心感をもたらすはずだ。そして186cmという大きな身体は的を大きく見せ、野手はさらに送球しやすくなるだろう。
ファーストの守備が安定し、内野陣全体の守備力も安定してくれば、チーム全体としての失点ももっと減らすことができるはずだ。少なくとも4.01という防御率は、優勝を目指すチームの防御率ではない。この防御率を3.50まで向上させていくためにも、まずは内野守備陣のさらなるレベルアップが不可欠となるだろう。

2010年03月03日 01:34

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