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涌井秀章投手を支えるのは球界一の走り込み量

プロ生活5年を終え、今シーズン6年目を迎える涌井秀章投手。実は筆者は、もう少し早い段階で涌井投手は肩・肘の調子を一度落とすのでは、と考えていた。その理由はひとえに投球時の腕のスウィングにある。プロ2年目以降だったろうか。現在の腕の振り方に変えたことで、25歳前後で一度どこかを故障するのではと筆者は考えていた。だがその心配は要らなかったのかもしれない。今現在肩・肘に故障の兆候はまったくなさそうだ。

なぜ涌井投手の腕の振りに問題があるかと言うと、それは腕を直線運動で振り下ろしているためだ。しかもそれに加え、リリースポイントが打者に非常に近い。リリースポイントを打者に近づけられればその分勝負では有利になるが、自らの肩へのダメージは決して小さくはない。具体的に言うと、右肩後部の筋肉群、もしくは背中を故障しやすくなる。

高校時代の涌井投手は、今とはまるで違うタイプのピッチャーだった。どちらかというと荒削りで、勢いでピッチングをする姿も見られた。だがプロに入るとそのピッチングは通用せず、1年目を1勝6敗という数字で終えた。この数字を境にし、涌井投手はピッチングのモデルチェンジを行ったのだった。

涌井投手は絶対的に頼れる変化球を持っていなかった。そして球速もプロとしてはビックリするような速さではない。そこで考えたのがリリースポイントの移動だった。よりバッターの近くでリリースすることで、バッターに球種を絞りにくくさせる。

リリースポイントをバッターに近づけるという作業は、多くのピッチャーが挑戦していることだ。だがこれに成功しているピッチャーとなると数えるほどしかいない。なぜリリースポイントをバッターに近づけることがこれほどまでに難しいのだろうか?その理由はやはり腕のスウィングにあった。

真っ直ぐ投げをしていようが、スパイラル投法をしていようが、ボールをリリースした後の腕は多かれ少なかれインスパイラルすることになる。右投手の場合であれば、投手から見て時計と反対回りに腕がスパイラルし、親指が下の状態で手のひらがバッターを向いていく。スパイラル投法の投手がこうなるのは当然なのだが、真っ直ぐ投げをしている投手であっても、多少のインスパイラルは必ず起る。

リリースポイントをバッター寄りに移動させるということは、単純にインスパイラルが始まった段階でリリースするということになる。これはつまりボールにシュート回転がかかってしまうということだ。ボールにシュート回転がかかってしまうと、右打者の外角では勝負できなくなってしまう。なぜなら外角に投げたはずのボールはシュート回転によって、すべてど真ん中に入ってきてしまうからだ。この現象が起るからこそ、多くのピッチャーがリリースポイントの移動に失敗している。

だが涌井投手は成功どころか、大成功をしている。しかも真っ直ぐ投げが原因の肩の疲労を感じたのも2008年の一時期だけだった。

ピッチャーが肩を壊す最大の要因は疲労だ。だがこれは肩の疲労という意味ではない。下半身の疲労だ。ボールというものはピッチャーだけに限らず、野手であっても下半身を主動として投げなければならない。だが下半身にスタミナがなくなってくると足で踏ん張れなくなり、どうしても上半身だけでボールを投げてしまう。するとそれまでは下半身がリードしてくれていた肩は、自らの筋力でもってスウィングしていく必要がある。腕(肩)の筋肉を使って腕(肩)をスウィングする、これこそが野球肩の最大の原因なのだ。

また真っ直ぐ投げの場合、スパイラル投法のように肩周りの筋肉がバランスよく使われることがない。外なら外、後ろなら後ろと、投球に対する負荷が一部の筋肉に集中してしまう。そのためスパイラル投法よりも肩・肘に問題を抱えるケースが多くなる。

だが涌井投手はそうはならない。年間200イニングを投げてもスタミナに不安を感じさせることがないのだ。その理由は涌井投手の走り込みの多さにある。涌井投手は西武で1番ではなく、球界で1番多く走っている選手だ。この走り込みの多さが強靭な下半身を生み出し、肩の負担を軽減させている。もし涌井投手が並の投手と同じくらいしか走っていなければ、とっくに肩を壊していただろう。

今年も開幕投手は涌井投手でほぼ決まりだと思う。本人は渡辺監督に言われるまでは「一候補として頑張るだけ」と言ってはいるが、しかしこの段階で涌井投手を開幕投手に指名したとしても、誰もが納得するだろう。松坂イズムを継承する投手としても、今年は沢村賞投手としても、並み居るバッターを見下ろすような堂々としたピッチングを披露してもらいたいと思う。そして松坂投手が果たせなかった20勝を目指して欲しいと思う。

2010年02月27日 02:11

中島裕之選手が酷評されるアッパースウィング

中島裕之選手の成長を認めながらも、彼のアッパースウィングを否定する解説者・評論家は実に多い。だが筆者は中島選手のアッパースウィングは決して悪くはないと見ている。まず中島選手のバッティングフォームに対する考え方を知るだけでも、中島選手が決してホームラン狙いのアッパースウィングをしているわけではないということが分かるはずだ。だが多くの解説者・評論家はその部分に気付いていない。

中島選手があえて長打を狙いに行く時は、後頭部でグリップを構える際バットを立てている。この時に限っては、ひょっとしたら本当に長打を狙ってのアッパースウィングだったかもしれない。だが中島選手が昨年バットを立てて構えたのは、中村選手が故障をして代役4番に座ったほんの数試合だけだった。

アッパースウィングをやめれば、中島選手はもっと良くなると言う解説者・評論家は非常に多い。だが筆者は中島選手がもっと良くなるためには、むしろ『中島裕之選手が首位打者獲るために足りない物』で書いたことの方が大切だと考えている。

日本の野球界はプロ・アマ問わず、未だにアッパースウィングを否定する向きがある。だがこれは間違いだし、根拠に乏しい。スウィングには主に3種類ある。下から上に向けてバットを振るアッパースウィング、水平に振るレベルスウィング、上から下に向けて振るダウンスウィング。日本ではレベルスウィングとダウンスウィングを重んじる傾向が強い。この考え方も分からないでもない。確かにアッパーで打ってポップフライを打つよりは、ダウンスウィングで打ってゴロを転がした方がアウトにするまでのプロセスが多い分野手のエラーも出やすく、出塁できる可能性は高くなる。だが果たして野球界の底上げを考えた時、本当にこれで良いのだろうか?

子どもを指導しているコーチでも、プロを教えているコーチでも、レベルスウィング・ダウンスウィングで打つことをしつこく指導している人は多い。理由は前述した通りだ。だがこれは非常にネガティブな考え方だ。言い方を変えれば、打ち損じた時のことを考えて打つことを教えていることになる。筆者はこの教え方には大きな違和感を感じる。プロ・アマ問わず実際に指導に当たっているコーチならば、アウトになった時のことを考えさせるよりは、より高い確率でヒットを打てる方法を指導するべきではないだろうか?

恐らくほとんどの方はアッパースウィングのことを誤解していると思う。アッパースウィングとは、打球を高く遠くへ打ち上げるためのスウィングではない。このことだけはぜひ覚えておいて欲しいと思う。

ピッチャーが投げてくるボールは、どんなボールであっても18.44mの間では失速し、必ず重力に負けてしまう。これはストレートでももちろん同様で、投げた瞬間のボールの高さを、バッターの手元まで維持することは不可能だ。球種によっては投げた瞬間、つまりリリースした時のボールの高さから、バッターの手元では1m近く落ち込んでいることもある。分かりやすく言うと、ほぼすべてのボールは上から下に落ちながら飛んでくる。そしてその軌道がより顕著なのが、チェンジアップという球種だ。

レベルスウィングやダウンスウィングばかりに固執してしまうと、ヒッティングゾーンを狭めてしまう危険性が高まる。どうしてもゴロを打たなくてはならない場面は仕方がない。例えば送りバントを2度失敗した2ストライク後では、スリーバントではなく、右方向にゴロを転がせと指示する監督も多い。

しかし通常のシチュエーションであれば、中島選手のアッパースウィングは理に適っていると筆者は考える。いや、正しくは中島選手のアッパースウィングは本当はアッパースウィングではない。レベルスウィングなのだ。普通の方が見て、明らかにアッパースウィングだったとしても、筆者から見ればそれはレベルスウィングということになる。

どういうことかと言うと、中島選手は地面に対してではなく、ボールに対してレベルスウィングをしているのだ。ボールは常に落ちながら飛んでくるという話はすでにした。と言うことはボールの軌道上にバットスウィングの軌道を合わせていくと、アッパースウィングに見えてしまうレベルスウィングになってしまうわけだ。

落ちてくるボールに対しダウンスウィングに固執してしまうと、ボールの軌道とバットの軌道が交差する×印の真ん中でしかヒッティングすることはできない。つまりボールを点でしか捕らえることができないのだ。逆にボールの軌道上にバットスウィングの軌道を入れてあげると、ボールを線で捕らえることができ、空振りをする可能性も大きく減っていく。

昨年首位打者を獲得したのは楽天の鉄平選手で、打率2位はオリックスの坂口選手だった。この2選手はホームランバッターではない。10本前後打てたとしても、中島選手のように30発を狙えるバッターではない。この2選手の2ストライク後の三振率は31~32%という数字だ。そして長打が期待される中島選手の2ストライク後の三振率は36%。わずかに5%しか差がない。ちなみに昨年中島選手と同じく22本塁打打ったロッテのサブロー選手の数字は53%、オリックスのローズ選手も50%だった。この数字を比べていただければ、ホームランを打てる中島選手の三振率がどれだけ低いかが分かっていただけると思う。これこそが評論家たちが酷評する、中島選手のアッパースウィングに見えるレベルスウィングが生み出した成果なのだ。

このようなバッティング理論から言っても、中島選手のアッパースウィングに見えるスウィングは、決して間違いではないと筆者は考えている。解説者や評論家たちは恐らく、地面に対しアッパーかレベルかと言っているのだろう。だがバッターが打ち狙っているのはボールであり、地面ではない。と言うことは、ボールに対してアッパーかレベルかと考えるべきではないだろうか?

中島選手の、ボールの軌道にバットの軌道を合わせていくレベルスウィングは、決して簡単な技術ではない。よほど優れた動体視力と、よほど優れた身体のバランス、よほど優れたバットコントロール力がなければ習得することはできないだろう。中島選手にしろ、中村選手にしろ、ライオンズの3・4番は他の選手とは違う次元で野球をしているように感じてしまう。2選手とも豪快に見られがちだが、持っている技術は非常に高く繊細だ。アマチュア選手だけではなく、プロ選手であってもお手本にできるレベルの選手たちだと筆者は考えている。やはり今年も、この2選手からは目を離せそうにはない。

2010年02月26日 02:36

中村剛也選手が今季、50本塁打打てる理由

今季3年連続ホームラン王を狙う主砲中村剛也選手。筆者は、彼のホームラン王獲得には大きな価値があると考えている。埼玉西武ライオンズというチームは万年Bクラスというチームではない。ほとんど毎年優勝争いに加わっているチームだ。勝つことを求められているチームにおいて、2年連続でホームラン王を獲得したことには大きな価値がある。個人プレーを優先できる下位チームで獲得するホームラン王とは、その価値は大きく異なる。

ライオンズにはもう1人、G.G.佐藤選手というスラッガーがいる。だが中村選手とG.G.佐藤選手とではタイプがまったく異なる。技の中村に対し、力のG.G.という違いだ。この2つは大きく異なる。

まず技よりも力に頼ってホームランを打とうとするG.G.佐藤選手の場合、一度不調に陥るとそこからなかなか上がってくることができない。昨年に関しても不調時は、ドアスウィングから抜け出せない時期が長引いた。力で打つタイプのスラッガーは、不調に陥るともっと力を込めたがる。バットスウィングにおいて力を入れ過ぎてしまうと、バットの軌道は必ずぶれる。そうなってくると当たるものも当たらなくなり、ホームランどころかヒットも出なくなってしまう。反面好調時は信じられないくらいに打ち出す。昨年の8~9月のG.G.佐藤選手はまさにその状態で、ピッチャーに対して自然とタイミングが合っていた。そのおかげでドアスウィングも解消された。

一方技で打つタイプの中村選手の場合、ホームランを打つのに力を利用することはしないため、不調に陥っても短い期間で抜け出せる。本人の話によれば、7~8割程度の力で振り抜いた時、一番ホームランになりやすいと言う。また9~10割の力で振った時は、ほとんどホームランにはならないようだ。

本ブログでも何度か書いていることだが、ホームランとはパワーで打つものではない。筋骨隆々のメジャーリーガーなら話は別だが、日本人の体格ではホームランをパワーで打つのには限界がある。

ライオンズにはかつて清原和博選手、秋山幸二選手という日本人スラッガーがいたが、彼らもまた技でホームランを打つタイプの選手だった。バットのどこかにボールが当たってくれれば、あとは力でスタンドまで運ぶというタイプではない。しっかりとタイミングを合わせ、バットのスウィートスポットにボールを当てることで、あとは身体の回転でボールを飛ばしていく。清原・秋山両選手が、軽くバットを振ってホームランになったシーンを覚えているファンもきっと多いと思う。

そして話を中村選手に戻すと、恐らく今季の中村選手は確実にキャリアハイの成績を残してくると筆者は考えている。その理由は中村選手が現在取り組んでいる新打法にある。

プロ・アマ問わず、少なくとも9割以上の打者はバットを真っ直ぐスウィングさせている。中村選手もこれまでは真っ直ぐバットを出していくことがほとんどだった。だが今季は違う。非常にレベルの高い技術、バットをスピンさせる技を習得した。もっと細かく言うと、バットにトップスピンをかけてスウィングしているのだ。

バットにスピンがかかるとどうなるかと言うと、ジャストミートした打球に関してはそれほど大きな影響は出ない。だがそうじゃない打球に関しては、真っ直ぐバットを振った時と比べるとまったく質の違う打球が飛んでいくことになる。

ボールの下部を叩いてしまった場合、バットを真っ直ぐ振っていたらポップフライになる。だがバットにトップスピンがかかっていると、打球にはバックスピンがかけられることになる。ボールにバックスピンがかけられると、ボールには上に向かって行こうとするマグナス力が働き、その結果打球の飛距離が伸びるようになり、普通の外野フライが簡単にフェンスを越えて行くようになる。

逆にボールの上部を叩いてしまった場合、バットを真っ直ぐ振っていればそれはボテボテの内野ゴロになってしまう。だがバットにトップスピンがかけられていると、ボールにもトップスピンがかかってくる。トップスピンがかかった内野ゴロは、あっという間に野手の間を抜けて外野まで転がっていく。

このようにバットにトップスピンをかける技を、中村選手は今キャンプで習得した。これはその昔、868本のホームランを打った王貞治選手や、日本中の野球ファンを魅了した長嶋茂雄選手らが持っていた技だ。ひょっとしたら中村選手は今季、歴史に名を残す活躍を魅せてくれるかもしれない。

だがもし中村選手が今季55本塁打を打てたとしても、それは王選手の記録に並んだとは言えないだろう。なぜなら王選手が55本塁打した1964年と今とでは、ボールがまったく違うのだ。64年のボールは今のボールと比べると、まったく打球が伸びていかない。よく「飛ぶボール」という言葉が使われるが、飛ぶボールとは、ボールの弾力性を奪ったボールのことを言い、64年に使用されていたボールは、それとは真逆に弾力性の高いボールだった。

140kmのストレートを、160km以上のバットスウィングで打った場合、野球のボールは1/1000秒程度の間、約半分に潰されてしまう。通常このシーンを映像に収めることは不可能だ。なぜなら近年のハイスピードカメラであっても、1秒間に30フレームの撮影しかできないためだ。1/30秒というスピードでしか撮影できないカメラで、1/1000秒という瞬間を撮影することはできない。

だがもし機会があれば、王選手や長嶋選手が打ったホームラン映像をスロー再生で見ていただきたいと思う。この時代のカメラは当然現代のカメラよりも性能ははるかに劣る。しかしそれでも、ごくたまに王選手のバットに捕らえられたボールがかなり潰れて映されているのを確認することができる。つまり64年のボールにはそれほどの弾力性があり、バットとの衝突エネルギーを吸収してしまう性質があった。

このような理由から今季もし中村選手が今季55本塁打を打てたとしても、歴史に名は残るが王選手に並んだと表現することはできない。だからこそ筆者は中村選手には55本という数字ではなく、自分の背番号と同じだけのホームランを打てるバッターになってもらいたいと願っている。

2010年02月25日 16:48

日刊埼玉西武へのリンクバナーを作成しました

日刊埼玉西武ライオンズへのリンクバナーを作成いたしました。ご自由にご利用くださいませ。なお相互リンクをご希望の方は、メールにてお問合せください。よろしくお願いいたします。

相互リンクに関しましては、基本的には西武関連・野球関連のみとさせていただきますので、あらかじめご了承くださいませ。

2010年02月24日 18:00

小野寺力投手は、こころ優しき守護神

応援している選手の記事は、やはりついつい多く書いてしまう。小野寺力投手もその1人だ。筆者はこの投手がライオンズに入団した時から「この投手には活躍してもらいたい!」と思っていた。それがなぜかは分からないのだが、とにかくそんなことを思い続けていた。

だが2006年は素晴らしい活躍を魅せるも、それ以外のシーズンではなかなか力を発揮することができない。力があるのは分かっているし、素晴らしい資質を持った投手だ。それが分かるからこそ、ファンとしてはとても悔しくなってしまう。もちろん小野寺投手本人の悔しさほどではないが。

今季は肩関節包断裂から復帰を目指すグラマン投手に加え、ライオンズは工藤公康投手シコースキー投手を獲得した。さらには昨年移籍してきた藤田太陽投手も状態が良いようだ。今シーズンはこの4人が守護神の座を虎視眈々を狙っている。

だが今年の秋、筆者が胴上げ投手になってもらいたいと思う投手はリリーバーでは小野寺投手しかいない。もちろん星野智樹投手大沼幸二投手という素晴らしい生え抜きリリーバーもいるが、やはり胴上げ投手になるべく人は筆者は小野寺投手だと思っている。逆を言えば、小野寺投手は胴上げ投手にならなければいけないと思っている。

筆者はよくこのブログ内で、小野寺投手のことを厳しい目線で書くことが多い。時には技術論を踏まえて書くこともあるのだが、しかし筆者の技術論なんてまだまだたかが知れている。筆者が書いていることは、もし小野寺投手に伝えられる機会があったとしても、小野寺投手自身とっくに分かっていることだと思う。それどころか、もっともっと高い次元で野球を考えていると思う。

なぜ筆者が色々と書いてまで小野寺投手に活躍してもらいたいかと言うと、その理由は人柄にある。2004~2006年にかけて、筆者は何度か応援仲間に誘っていただき、小野寺投手が参加するファンイベントを観に行ったことがあった。そこで見た小野寺投手は、本当に紳士という言葉が相応しい人物だった。西武沿線にある西友というスーパーの前で行われたトークショーではマイクを握り、ファンと一緒に応援歌を歌ったこともあった。筆者は今年の6月32歳になり、プロ野球を見続けて四半世紀がゆうに経つ。だが小野寺投手(と赤田将吾選手)ほどファンを大切にする選手を見たことはなかった。

野球は人柄でするスポーツではない。特にピッチャーというポジションは性格の良さが弱点になってしまうことも少なくはない。仲の良いバッターに対してはどうしてもインコースを攻められなくなってしまうからだ。東尾監督などはよくこんなことを言っていた。「味方のバッターとは仲良くしておけ。そうすれば自分が投げている時に打ってもらえる。だが敵になるバッターとは仲良くするな。自分が相手の内角を攻められなくなる」と。

これは筆者自身のことも含めてという意味だが、プロ野球選手である限りは解説者、ファンから色々なことを言われてしまうのが宿命だ。筆者自身もファンとして、このブログを経由し自分の考えを発信し続けている。時に「これを選手本人が読んだら怒ってしまうかもしれない」ということを書いてしまったことだってあっただろう。だが筆者はできる限り批判にはならないように、あくまでも筆者自身の野球観をオープンにするという意味合いで本ブログを書いている。そもそも選手のことを批判する気ないし、そんな立場にはない。ただ純粋に応援したいという気持ちのみだ。

最近読者の皆さんからいただくメールで多いのが、ファンのマナーとモラルについて。例えば選手の迷惑を考えないような行動を勢い余ってしてしまうファンや、完全に選手を批判するブログを書いているファンも少なくないらしい。筆者自身は最近は試合以外で選手を観に行くことはないし、URLをお知らせいただいた方以外のファンブログを読むこともない。しかしマナーやモラルを考えないファンが多いということは、最近何人かの読者さんからいただいたメールで知ることとなった。

そういうメールをいただいている内に、自らの襟も正さなければいけないなと、最近よく考えるようになった。昨年の開幕から書き始めたこのブログも、今では毎日6000アクセス前後を数えている。ということは当然無責任なことは書けない。自分の意見を書くことに躊躇いはないが、それが選手であったり、その選手のファンを傷つけるような内容であってはならないと思う。

そしてこれもやはりある読者さんにいただいたメールで知ることとなったのだが、「日刊埼玉西武ライオンズは、選手を批判している」とネット上のどこかで書かれていたらしい。それがどこかは筆者には分からないのだが、少なくとも選手に対し悪意のある記事を書いたことは一度もない。現にファンの方からお叱りのメールをいただいたこともない。

今日はいつもとはかなり趣旨の違う記事となってしまったが、ある程度のアクセス数をいただけるようになったブログとして、自らを諌める意味でも大切だと思い書かせてもらった。筆者はこれからも自分の意見を書き続けて行くつもりではあるが、選手・ファンを傷つけるようなことだけは書かないように注意していきたいと思う。そしてこれは、ファンブログを書いている方、球場や練習場に選手を観に行くファンの方全員に気をつけて欲しいと切に願うばかりである。

2010年02月24日 08:51

中島裕之選手が首位打者獲るために足りない物

中島裕之選手が首位打者を獲得するためにはいくつかの課題がある。今回はその課題について書いてみようと思う。

まず中島選手が首位打者を獲得できる可能性だが、これは誰もが思う通り非常に高いと思う。ライオンズにおいて言えば、筆者は左打ちである栗山選手と並び可能性の高いバッターだと考えている。もし中島選手が3番ではなく、1・2番を打つバッターであればもうとっくに首位打者は獲得していただろう。だが3番であるがゆえに、未だ獲得には至っていない。

ではなぜ1・2番なら獲得できていて、3番だと獲得できないのか?その理由は1塁までへの全力疾走にある。1・2番の仕事はとにかく塁に出ることだ。そしてそのためにはどんな平凡なゴロであっても、常に全力疾走を心がける必要がある。例えば同じ右打者である片岡選手が、打ってから1塁に到達するまでの時間は約4.2秒を要している。そして中島選手の場合この数字は約4.3秒となる。筆者が中島選手に唯一不満なのがこの数字なのだ。

一見するとわずか0.1秒の差でしかない。だがこれが約27mあるホームベースから1塁ベースへの距離で考えると、0.1秒の差は約80cmの差になる。もし内野ゴロが野手から1塁に送球され、ファーストがその送球をキャッチした時、バッターランナーが1塁ベースの80cm手前を走っていたなら、それは野手からすると余裕のある内野ゴロだったことになる。そして4.3秒という中島選手の数字は、昨年膝痛や足首痛に苦しんだG.G.佐藤選手とほとんど同じタイムとなる。

そしてさらに言うならば、何も起こらなければ100%アウトになるであろう内野ゴロの場合、1塁までのタイムが5秒を大きく回ることさえもある。これは本当にもったいないことだ。もちろんプロ野球であるため、内野ゴロで何かが起こる可能性の方がはるかに低い。だが1つ1つのプレーによって、何かを起こすことは十分に可能なのだ。

他球団の野手も中島選手の走りに関してはすでに気付いている。「内野ゴロだと全力で走らないことがある」と考えながら守っているため、中島選手の内野ゴロに対しては余裕を持ってフィールディングする野手が多い。特にサード、セカンドは多いのではないだろうか。

もし中島選手が本来の走力をしっかり発揮し、片岡選手同等4.2秒で1塁まで到達することができれば、守っている野手は確実に慌てるはずだ。慌てれば悪送球などのエラーにも繋がり、チームにチャンスを呼び込める。そして守っている野手に「中島は全力疾走してくる」という考えがあれば、野手は自ずと一歩前を本能的に守りたがる。すると横に対する守備範囲が狭くなり、ヒットゾーンが野手の足一歩分広がり、内野安打や外野へ抜けていくヒットが年間数本増えることになる。

もし昨年、中島選手の走力で稼ぐヒットがあと10本多く出ていたら、打率は.327となり、首位打者を獲得した楽天・鉄平選手(左打)と並んでいた。

ではなぜ中島選手は全力疾走を諦めてしまうのか?中島選手は走れないのではない。場面によっては1塁まで素晴らしい全力疾走を魅せてくれることがある。つまり中島選手は間違いなく走れるのだ。それでも走らないのには、2つの理由が考えられる。まず単純に諦めてしまっているか、それかフルスウィングを優先したか、だ。

フルスウィングをして全力疾走が怠ってしまうのは仕方がない。右打者の場合、しっかりバットを振ると身体はどうしても3塁方向に流れてしまう。そこから1塁に方向転換するわけだから、こういう場面であれば走る始動が遅れ、タイムがかかってしまうことも仕方がない。

しかし2ストライクと追い込まれたあととなると話は別だ。中島選手は2ストライクに追い込まれると、バットを一握り短く持ち変える。つまり軽打によるシングルヒットを狙いに行っている。この場面で内野ゴロを打った時こそ、中島選手の走力の魅せ所になるわけだ。ここでもし中島選手があと0.1秒、距離にして80cm先を走る全力疾走を見せていけば、守っている野手の意識は確実に変わるはずだ。2ストライク後の中島選手に対しては、多くの内野手が一歩前を守りたがるだろう。なぜなら一歩前で打球処理をしなければ、内野安打になってしまう危険が多く生まれてしまうためだ。

こういう状況を中島選手がしたたかに演出することができれば、先述した通りヒットゾーンが広がるし、エラーによる出塁も増えてくる。そしてヒットであれエラーであれ出塁する回数が増えれば、それだけ盗塁する機会も増え、30盗塁も見えるようになってくる。

それと最後にもう1点中島選手にはあえて注文をしたいと思う。中島選手は2ナッシングと追い込まれると、気を抜いてしまう場面がある。つまり「3球目は1球ボールゾーンに外してくるだろう」と決め付けてしまうのだ。そのため2ナッシングを追い込まれると、あっさり凡退してしまうことが多い。

これが昨年首位打者を獲得した鉄平選手の場合、35打数6安打.171となるのだが、中島選手の2ナッシング時の打率は44打数3安打.068となる。つまり昨年の首位打者は中島選手よりもはるかに少ない打数で、倍の数のヒットを打っているのだ。これも昨年首位打者を獲った鉄平選手と、獲れなかった中島選手の昨年までの差だと言うことができるだろう。

中島選手は年々非常に速いスピードで進化して行っている。そのため筆者が中島選手のプレーを見ていても、なかなか彼の弱点を見つけることができない。このブログを書いていても、中島選手のことは誉めるしかなくなっている。だが読者はきっとそういう記事よりも、中島選手がさらに進化する余白がどれくらいあるのか、ということをこのブログには求めているのだと筆者は考えている。そういう理由もあり、若干あら探し的な記事になってしまったが、素晴らしいプレイヤーとなった中島選手にもまだまだ伸び白があるという意味で、こうして筆者なりの意見を書かせてもらった。

中島選手はまだまだ進化できる選手だと筆者は考えている。その余白が見つかる限り、魅力だけではなく、余白についてもこのブログではしっかり書いていこうと思う。もちろんそれは中島選手以外の選手についても同様に。

2010年02月23日 14:59

片岡・中島コンビは今後名手となれるだろうか

現在のライオンズに「名手」と呼べる選手がいるかどうかを考えてみた。ライオンズの歴代名手と言えば、まず名前が挙がるのが辻初彦選手だろう。そしてそこに最近では高木浩之選手が続いてくる。だが現在のライオンズの中には、筆者は「名手」と呼べる選手はいないと考えている。

片岡易之選手という素晴らしいピボットマンがいるが、しかしまだまだ名手と呼んでいい域には達していない。中島選手にしてもそれは同様だ。2人とも非常に守備の上手い選手ではあるが、名手かと聞かれればまだイエスとは答えられない。特に、名手と呼ばれる人たちから見れば片岡・中島両選手の守備にはまだ安心感を覚えることはないだろう。

現在のライオンズにおいて、片岡選手が最も守備の上手い選手の1人であることに間違いはない。片岡選手の好プレーのおかげで勝てた試合だって少なくはないはずだ。それでもなぜ筆者が片岡選手を名手と呼ばないかというと、それはプレーに対するギャンブル性に起因している。もちろんこのギャンブラー気質は片岡選手の大きな魅力となっているのだが、しかし名手という言葉をここに当てはめることはできない。

片岡選手が盗塁や走塁においてギャンブルスタートを切ることは広く知られている。しかし守備に関してもギャンブルしていることを、どれだけの人が気付いているだろうか。ギャンブルという言葉を使うと誤解を招いてしまうかもしれないが、名手が理性でプレーをしているのに対し、片岡選手は野生味でプレーをしているという印象だ。

例えばランナー1塁という場面、ファーストは1塁ベースに付いているため、一・二塁間のヒットゾーンが広くなってしまう。そのため通常のポジショニングであれば難なくファーストゴロになる当たりも、ライト前に抜けてしまうことがある。この打球を追う時、片岡選手はギャンブルをすることが多い。

結論から言ってしまうと、次のプレーを考えることなく、とにかく打球に追いつく動きのみを行っているのだ。そして打球に対しグラブ手を伸ばして行くシーンでも、打球を見ていないことが非常に多い。もちろんこれは良い悪いということではない。この野性味溢れる感覚は片岡選手の魅力にもなっているため、これはこれで良いと筆者は考える。しかしこれを「名手」の部類に入れても良いかと聞かれれば、筆者はノーと言うわけだ。

では名手とは?筆者はライオンズにおいては辻初彦選手、高木浩之選手をリアルタイムで見続けて来た。この2人は間違いなく名手と呼べるだろう。では片岡・中島両選手と、辻・高木両選手の違いとは?まず最初に比べられるのが走力だろう。片岡・中島両選手に比べると、辻・高木両選手は決して足は速くはなかった。走塁技術に関しては非常に高いものを持つ2選手ではあったが、50mのタイムを計ったなら、片岡・中島両選手の俊足さには敵わないだろう。だが守備範囲に関しては走力のある中島選手よりも、むしろ足が速くない部類に入っていた高木選手の方が広かった。

辻・高木両選手は、片岡・中島両選手にはないものを持っている。それは確固たる理性だ。つまり、常に次のプレーが頭に入っているのだ。例えば先ほど挙げた片岡選手のギャンブルプレーに関しても、辻・高木両選手の場合は追いついた先のことも考えている。捕球後1塁に投げるのか、2塁に行ったランナーを牽制するのか。これらの動きに対する流れが、辻・高木両選手に関しては常に存在していた。

片岡選手が打球に対して目を切ってしまうシーンでも、辻・高木両選手はグラブ手に右手を添える仕草を見せている。つまり捕るだけではなく、捕った後すぐに投げられるように準備をしているということだ。

そしていわゆるファインプレーに関してもそうだ。ダイビングキャッチをしてアウトを奪うとスタンドは大いに沸く。だがこのダイビングに関しても上手い下手の見分けができる。ダイビングに関しては、中島選手よりも片岡選手の方が上手い。

中島選手の場合、すべてがすべてと言うわけではないが、真横にダイブするシーンがまだ見受けられる。真横にダイブして捕球できるということは、あと1歩足を使えば打球に追いつけるということを意味している。名手は決して真横にはダイブしない。そもそも名手と呼ばれる選手は基本的にはダイビングキャッチを嫌う。最近で言えばヤクルトの宮本慎也選手、中日の井端弘和選手などがそうだろう。

名手がダイビングキャッチを試みる時は、選択肢の最後の最後、飛ばなきゃ捕れないし、飛んで止めることさえできれば失点を防げるかもしれないという場面だけだ。そして何度も言うが真横にダイブすることはなく、ダイブする時は必ず斜め後ろにダイブをする。斜め後ろにダイブして辛うじて捕れる打球というのは、真横に追いかけたりダイブしても決して捕れない打球なのだ。

中島選手がもう一段上のショートストッパーになるためには、この判断も大切な要素となってくるだろう。さらに言えば中島選手はストライドがやや大きい。二遊間を守る選手は、守備ではストライドを小さくする必要がある。それこそ股関節をクルクルと回してサササーっと走っていくイメージだ。この動きをしていたのが辻選手であり、高木浩之選手だったわけだ。

このようにさらに上のプレーを考えて行った時、ライオンズには非常にもったいないと感じさせる面がある。それはコーチングスタッフの編成だ。中島選手は恐らく近い将来メジャーリーグに移籍してしまうだろう。となるとショートストッパーの育成は現在急務となっている。だがファームの守備コーチを任されているのは、鈴木康友コーチと熊澤とおるコーチだ。鈴木コーチは現役時代確かに守備は上手い方だったとは思うが、しかし名手ではなかった。一方熊澤コーチは、守備よりも打撃理論に長けているコーチだ。

色々と理由があるとは思うのだが、筆者はなぜ高木浩之氏にコーチを任せないのか不思議でならない。現在は編成部(スカウト)でアマチュアを担当しているのだが、彼の野球観を編成部に置いておくのは非常にもったいないと筆者は感じる。もちろん球団としてはその野球観でもって、次世代の内野手を探して欲しいという考えなのだろうが、原選手、浅村選手、美沢選手などが高木氏の指導を受けられれば、彼らはもっと伸びていくはずだ。また高木氏は大学時代にキャプテンを任されていた経歴もあるため、言葉を使うことは決して苦手ではないはず。

ここで守備に定評のある中日ドラゴンズを少し見ていくことにしよう。中日の守備コーチを見ていくとまず見つかるのが辻初彦コーチだ。そして奈良原浩コーチ、苫篠誠治コーチがいる。彼らは黄金時代のライオンズで鉄壁の守備陣を支えた名手たちだ。特に辻コーチ、奈良原コーチの守備は芸術的とも言えた。そしてさらに2軍監督には川相昌弘監督の名前がある。言わせてもらえれば、名手だらけだ。これだけ名手と呼ばれたコーチ陣がいるのだから、中日の守備が鉄壁であることにも納得ができる。

もちろんコーチ陣に名手を集めればそれで良いというわけではない。指導力・洞察力のある名手である必要がある。例えば有名どころで言えば山崎裕之氏のような人材だ。ライオンズは山崎氏に対し何度も監督要請を行ってきたが、「家族の側にいたい」という本人の意向が強く、山崎監督誕生は実現していない。それだったら家族の側にいられるように2軍で臨時コーチなどを任せてみたらどうかと筆者はよく考えてしまう。

いずれにせよライオンズは今後、外部招聘を含めたしがらみなきコーチ編成を行えないようでは、鉄壁の守備陣形を整えることは難しいだろう。特に数年後、中島選手が抜けてしまった後は間違いなく苦労すると思う。そのためにも球団は、名手を育てられる環境を整える必要があるだろう。そしてそれは同時に片岡・中島両選手のさらなるレベルアップにも直結していくと筆者は考えている。

2010年02月22日 13:18

小野寺投手のボールが簡単に打たれる理由

小野寺力投手はなぜ打たれてしまうのか?なぜあれだけ恵まれた体格を持ち、素晴らしいボールを投げられるのに、打たれる時はいとも簡単に打たれてしまうのか?筆者が考えるに、それは変化球が曲がり出すポイントだと思う。つまり変化球が曲がり出すタイミングが早すぎるために、打者に球種を見極められてしまうということだ。

そもそも変化球とは何物なのだろうか?なぜ曲がるのだろうか?例えばスライダー。小野寺投手もスライダーを投げることができるが、スライダーという球種は誰にでも投げることができる。そしてスライダーが横にスライドしていく原理は、重力に隠されている。地球に重力が存在するからこそ、スライダーという球種は存在している。ここで「あれ?」と思われた方も多いと思う。「スライダーは横に滑る球種なのに重力?それじゃフォークボールじゃないか」と。最もな疑問だと思う。

速い初速で投げられたボールは、ある程度の時間は重力の影響を受けない。と言うよりは、重力よりも強いエネルギーを持って突き進むことができる。だがそれもバッターの手元近くまで行くとその勢いは衰え、重力やマグナス力が働きやすくなる。

右投手が投げるスライダーの場合、通常のバックスピンから左側に回転軸が傾く。ボールに串が刺さっていると想像してみて欲しい。バックスピンストレートの場合はその串の左右がほぼ水平になっている。この串が、首をかしげるようにして左に傾けばスライダーとなり、右に傾けばシュートとなる。

ボールを投げられた直後というのは、まだ手から放たれた時の勢いがそのまま活きている。しかしマウンドからホームベースまでの18.44mの後半に入って行くとその勢いは衰え、ボールは重力の影響を受け出す。つまり下に沈んで行くということになる。通常のバックスピンであれば、ボールは重力に身を任せそのまま落下していく。だがスライダー回転がかけられて投げられたボールは、その回転のマグナス力の影響を受け、ボールは左打席側へと滑って行く。

右投手が投げるスライダーのマグナス力は、左上に向かって働く。だがスライダーが左上に曲がることはありえない。なぜなら上方向に働くマグナス力は、重力によって相殺されてしまうからだ。そうすると残る力は左方向へのマグナス力のみとなる。ボールは、空気抵抗が少ない方少ない方へと曲がりたがる。つまりマグナス力が働いている方向だ。

もし地球に重力が存在していなかったら、投じられたボールの勢いが衰えることはない。いや、そもそも重力がなければ、ボールにエネルギーを込めることは不可能だろう。速いボールを投げることにも、ボールを遠くまで打つことにも欠かせないのが反力だ。つまり地球に、重力という反力があるからこそ球技は成り立っている。

さて、話をここで小野寺投手に戻したいと思う。小野寺投手の変化球は曲がり出すタイミングが非常に早い。理由はもうすでにご理解いただいていると思うが、小野寺投手のボールは、他の投手のボールよりも早いタイミングで重力に負けてしまっているのだ。だからこそ早いタイミングでボールが曲がり出してしまっている。

150km以上の剛速球を投げるのに、130km台の野上投手のボールよりも重力に早く負けてしまっている。これはなぜなのか?その理由は投球モーションにある。小野寺投手の投球モーションは、アクセラレーション(ボールを加速するための腕のスウィング動作)の距離が非常に短い。岸投手西口投手と比べたらその差は歴然だ。

アクセラレーションの距離が短いと、加速距離が減るということになるため、ボールの勢いは短時間しかキープできない。つまりピッチングにおいては、18.44mの前半でしかキープできないということになる。逆にアクセラレーションの距離が長いと、18.44mの7割前後の間、ボールの勢いをキープできるようになる。それだけ長い時間勢いをキープすることができれば、初速と終速の差もそれだけ小さくなる。

小野寺投手の場合はアクセラレーションの距離が短いため、ボールの勢いは18.44mの前半で失速してしまう。例え初速が150kmだったとしても、終速は130km台だろう。150kmのままであればバッターは振り遅れてくれるが、130km台まで落ち込んでしまうと、せっかく振り遅れたバットにボールの方が合って行ってしまう。

そしてフォークにしてもスライダーにしても早い段階で曲がり出してしまうため、打者には簡単に見極められてしまう。フォークボールが良い場所に落ちているにも関わらず空振りを取れないというのは、ここに原因がある。

対処法としては、サイドスローに挑戦するというものがある。もちろんサイドスローに転向するという意味ではなく、サイドスローに挑戦することで、肩甲骨を深く使うという感覚を身体に覚えさせるのだ。サイドスローの腕の角度の場合、肩甲骨を最も楽に動かしやすくなる。そして覚えた肩甲骨の動きを、オーバースローの中に取り組めれば小野寺投手のボールはもっと良くなるはずだ。ちなみにこの調整方法で大成功したのが巨人の斎藤雅樹投手だった。斎藤投手はサイドスロー転向後、5度最多勝に輝いている。

小野寺投手は肩甲骨を上手に使えているピッチャーではない。それはピッチングモーションを見ていれば良く分かる。分かりやすく表現するため大袈裟に言うと、小野寺投手のモーションは二次元なのだ。つまり縦と前後のみ。ピッチングモーションの中に左右の動きが少ないため、縦と前方向の動きのみでボールを投げてしまっている。ということは左右の動きが少ない分ボールに勢いをつけられないし、少ない個所に投球の負担を集中させてしまうため、故障も起こしやすくなる。

変化球投手ならこれでもある程度は通用するだろう。だが小野寺投手は違う。本格派だ。しかし小野寺投手のモーションは、上半身・下半身ともに変化球投手の動きをしている。昔阪急にいた山沖投手を覚えている方はいるだろうか?小野寺投手の下半身の使い方は、山沖投手によく似ている。上げた左足を垂直方向に落とし、落とし切ったら今度は前方向へと並進させていく。つまりステップが直角の動きになっているのだ。

このステップは、球速を求めない変化球投手の場合には球の出所を安定させられる効果があるが、小野寺投手の場合は自身の魅力を殺してしまう結果となる。つまりボールの安定感を求めるあまり、ボールの勢いを失ってしまっているのだ。そしてこれは、変化球が早く曲がり出してしまう大きな要因にも繋がってしまっている。

筆者はこう考えている。小野寺投手には身長が188cmあることを忘れて欲しい、と。もし身長が175cmしかなかったとしたら、果たして小野寺投手は今と同じ投げ方をするだろうか?筆者は決してしないと考えている。もし自分が175cmだったらどんな投げ方をしようとするか、小野寺投手にはそれを考えてもらいたい。自分の身長に頼らないピッチングができるようになれば、小野寺投手は必ず良くなるはずだ。そして今季は工藤公康投手という素晴らしいお手本もいる。

小野寺投手にはいつまでもB班にいるのではなく、直訴してでもA班に上がって来てもらいたい。先日松下投手がB班に落とされた際、A班に上げられたのは長田投手と山本投手だった。この悔しさをもっと前面に出し、今季小野寺投手には復活を遂げてもらいたいと筆者は切に思う。

2010年02月20日 15:28

赤田選手のトレードは、西武側の要望で実現

赤田選手のトレードはファンにとってもチームにとっても悲しい出来事となった。しかし赤田選手本人にとっては、これが吉となるトレードとなって欲しい。

筆者はこのトレードが、てっきりオリックス側からの要望で実現したものだと思っていた。しかし実際には西武側が申し入れる形で成立したらしい。オリックスの岡田監督自身も驚いていて、まさかストーブリーグが終了したこの時期になって、しかも同一リーグでトレードが成立するとは思っていなかったようだ。現に小瀬選手の穴は空けたままシーズンを迎える覚悟だったらしい。

西武がこのトレードを申し入れたのは、恐らくは親心からだろう。決して赤田選手が必要ではなかったということではない。むしろ赤田選手はライオンズというチームを1つにまとめるためにも必要な選手だった。それでも西武が赤田選手を放出したというのは、やはり親心なのだろう。

近年ライオンズの外野争いは熾烈を極め、赤田選手は怪我などもありなかなかレギュラーを獲得することができなかった。真面目な性格である赤田選手にはこれがプレッシャーにもなっていただろう。本来ならば自分がチームを引っ張って行かなくてはならないのに、怪我をしたり調子が上がらずにファームに落ちたり。気持ちと身体がリンクして行かないジレンマもあったと思う。

それならば、ライオンズよりももっとレギュラーを獲得しやすいチームに移籍させてあげ、もっと伸び伸びと野球をあらせてあげたいと球団は考えたに違いない。プレッシャーの少ない場でプレーをさせてあげれば、赤田選手はもっと結果を出せる選手だ。

赤田選手にはオリックスで確固たるセンターの定位置を獲得し、笑顔で西武ドームに帰ってきてもらいたい。そしてその時にはぜひファン全員で、スタンディングオベーションで迎えてあげましょう!

2010年02月19日 14:49

赤田将吾選手、18日朝に伝えられたトレード

赤田選手本人にトレードが通告されたのは、18日の午前9時半のことだった。アーリーワークを終えると球団スタッフに呼ばれ、オリックスへの移籍を告げられた。このニュースは筆者にとっても本当に悲しいものだった。昨年からトレード話が頻繁に浮上していた赤田選手ではあったが、球団はそのたびに「トレードの話はない。これからもライオンズで頑張って欲しい」と赤田選手に伝えていた。だが現実は違い、春季キャンプも終盤に差し掛かるこの時期でのトレードとなった。

その背景にあるのは当然小瀬選手の死だ。小瀬選手の穴を埋めるべくオリックスが探していたのが俊足巧打の外野手だった。そして主戦級の選手以外となると若干層が薄くなるライオンズの内野陣。この2チームの思惑が合致し、今回のトレードに至った。

ライオンズのナインに伝えられたのは、18日に行われた韓国斗山との試合後だった。試合中は誰も赤田選手のトレードのことは知らず、知るのは赤田選手のみ。だからこそ赤田選手はこの試合で何が何でもヒットを打ちたかった。すると途中出場した8回での打席、その強い思いが実を結び、ライオンズでの最終打席をライト前ヒットで締めくくった。

試合後、ナインは食堂に集められて赤田選手のトレードの話を聞かされた。誰よりも先に号泣し出したのはエース涌井投手だった。涌井投手は石井貴投手が引退した2007年の西武ドーム最終戦でも号泣している。一見クールに見えるが内面はとても繊細で、感情の豊かな選手なのだ。そしてそんな涌井投手の姿を見てもらい泣きしてしまったのが、当の赤田選手だった。

トレードが知らされるとナインは赤田選手を外野に引っ張り出し、胴上げをした。背番号と同じく9回、赤田選手は宙を舞った。その間も赤田選手はずっと目頭を押さえていた。ライオンズというチームはチームであると同時に、ファミリーでもある。こんなに温かい雰囲気のチームは、他を探しても見つからないはずだ。

11年間まとったライオンズのユニフォーム。ライオンズのコアなファンから、誰よりも愛された選手が赤田将吾だった。そしてライオンズのために、ライオンズファンのために、誰よりも尽力してきたのも赤田将吾だった。度重なる怪我に熾烈な外野争い。赤田選手にとっては必ずしも良い時期ばかりではなかった。2004年にブレイクをするもその後は長い時期を怪我のためにファームで過ごした。

だが赤田選手はライオンズを愛し、ライオンズもまた赤田選手を愛した。だからこそこのトレードには非常に驚いてしまった。筆者としても「まさか」という思いが強かった。近日アップするつもりで赤田選手のコラム記事も書き溜めていただけに、この突然のトレードには本当に驚いてしまった。

怪我さえなければもっと早い時期にレギュラーの座をつかめていたと思う。松井稼頭央選手に憧れているだけに、ファンとしても赤田選手には稼頭央選手のような選手になってもらいたかった。ライオンズのユニフォームを着て。

筆者が初めて赤田選手のプレーを見たのは99年の後半戦だった。松坂大輔投手とともに高卒1年目で、2軍で大活躍をしての1軍昇格だった。当時の東尾監督は松坂投手の話し相手として赤田選手を昇格させたのだったが、しかし赤田選手は昇格後、13試合で14安打放つという活躍を見せた。まだセカンドを守っていた時期だったと思う。

入団時から応援し続けている選手が移籍、引退してしまうのは、ファンとしては本当に悲しい。だが一緒に戦い続けたナインたちはもっと悲しいのだろう。マウンドではあれだけ度胸満点のピッチングをする涌井投手であっても、涙を押し殺すことは出来なかった。そして未だB班にいる親友小野寺投手にとっては、とても悔いが残ったことだろう。本来ならばA班で一緒に胴上げをしてあげたかったはずだ。

ファンとしては本当に悲しいことではあるが、今シーズン赤田選手が西武ドームに帰ってきたら、筆者は心からの拍手を送ってあげたいと思う。

赤田選手、オリックスに行ったら今まで以上に大活躍し、いつか選手・指導者としてまたライオンズに帰ってきてください。大阪でも暴れん坊将吾で頑張れ!!

赤田選手本人のトレードに関するコメント
小野寺力投手のコメント
藤田太陽投手のコメント

2010年02月19日 01:56

赤田将吾選手、オリックス阿部選手とトレード成立

赤田将吾選手のオリックスへのトレードが球団から発表された。突然のトレード成立に赤田選手は「気のいい仲間と野球をやらせてもらい、選手会長としてビールかけの音頭をとったことが思い出です。前向きにとらえて頑張ろうと思います」とコメント。赤田選手はライオンズ、そして埼玉に本当に大きな貢献をしてくれた。オリックスに行っても頑張ってもらいたいと思うし、今まで以上の活躍をしてもらいたいと思う。

赤田選手のトレード相手は阿部真宏選手で、それぞれ19日から新チームに合流予定。

2010年02月18日 17:07

片岡易之選手の新打法、打ち損なって打つ長打

片岡易之選手は今季、新打法に挑戦をしている。昨年はヤクルトの青木選手のバッティングを取り入れた片岡選手だったが、今季はイチロー選手のバッティングを参考にしているようだ。こちらの記事でそのバッティング関して少し解説をしているのだが、結論から言えばわざと打球を詰まらせるバッティングに挑戦している、ということになる。

この打ち方は、片岡選手のように高い出塁率が求められる選手にとってはベストだと筆者は考える。昨年までの片岡選手は、ポイントをかなり前に置いていた。ポイントに関しては、筆者は大まかに5段階に分けて考えている。打つポイントとはその名の通りで、ボールをどのポイントで打つかということだ。

1.前(スウィング時に両腕が二等辺三角形を作り出すポイント)
2.少し前(両腕がホームベース型を作り出すポイント)
3.体の前
4.体の後ろ
5.1よりも前
筆者はこの5段階でポイントを分類している。

昨年の片岡選手はこの例で言うと1で打っていることが多かった(昨年の13本塁打はこれが大きく関係している)。このポイントで打つのはホームランバッターだ。中村選手G.G.佐藤選手は完全にこのポイントでしか打っていない。このポイントで打つメリットは、両腕で作り出す二等辺三角形に隠されている。バットを振った際、両腕で二等辺三角形ができる瞬間が最もバットスウィングのスピードが速くなる。つまりそれだけ多くのエネルギーをボールにぶつけていけるため飛距離が伸びる。

反面デメリットは、この段階になるともうバットを動かすことができなくなる。つまりバットを振っている最中に「空振るかも?!」と思っても、そこからバットの軌道を修正することはほぼ不可能に近い。さらに言えば緩急でタイミングを外された場合、1の前にあるポイントは5となる。5のポイントでバットを振りに行っても、バットがボールに当たることはない。なぜならば、ボールがまだバットの届く範囲まで来ていないためだ。

逆に1のポイントで打ちに行って射し込まれた場合は、ポイントは2になる。「ホームランの打ちそこないがヒットになる」という表現があるが、これはまさにポイントが1から2に移った時の状況を言い表している。

昨年までの片岡選手は上述の1のポイントで打つことが多かったのだが、今季はこれを2のポイントに移しているようだ。つまり両腕が二等辺三角形ではなく、ホームベース型になるポイントで打とうとしている。

2のポイントで打つ最大のメリットは、ボールをインパクトしたあとでもバットコントロールがまだ可能ということだ。1のポイントで打った時を「弾き返す」と表現するならば、2のポイントで打った時は「乗せて運ぶ」という表現ができる。2のポイントで打つ場合は若干詰まることが多くなるのだが、わざと詰まらせることでバットにボールを乗せて打ちたい方向にボールを運んで行くことが可能になる。もちろん技術としては非常に高度ではあるが、片岡選手のレベルであればそれも可能になる。

なぜバットにボールを乗せて運ぶことができるかと言うと、1のポイントで打った時よりも、2のポイントで打って詰まらせた時の方がバットとボールが接している時間が長くなる。1のポイントで140kmのボールを打った際は、バットとボールが接している時間は1/1000秒程度。しかし2のポイントで打つとこれを1/800秒程度に引き伸ばすことができる。わずかに1/200秒という差でしかないのだが、野球というスポーツはこの差が結果を大きく左右させる。

2のポイントで打つと、打球の飛距離はそれほどは伸びない。だが1にはないメリットが生まれる。それはタイミングを外された時だ。スローボールでタイミングを外された場合、2のポイントで待っていればそれは1のポイントに移ることになる。つまりホームランゾーンだ。片岡選手やイチロー選手のようなタイプの場合、ホームランになる確率はもちろん高くはないのだが、1で打ちそこなったシングルヒットが、2のポイントでツーベース・スリーベースになる確率が高くなる。

逆に差し込まれた場合は3のポイントに移ることになる。これは佐藤友亮選手や、左打席での赤田将吾選手、もしくは往年の辻初彦選手がよく使っているポイントだ。もちろんこのポイントはヒットを打つためのポイントではなく、ファールを打つためのポイントとなる。野球というスポーツは、ファールであれば何十回打ってもアウトになることはない。このルールを最大に利用できるのがこのポイントなのだ。

体の前までボールを呼び込むことができれば、両目の均衡を保った状態でボールを打ちに行けるため、よほどタイミングが外されない限りは高い確率でバットにボールを当てることができる。この時手首を返して行かなければ、ボールはほぼ確実にファールゾーンに転がって行くだろう。このポイントで際どいコースはカットしておいて、2のポイントに絶好球が来るまで待つ、というのが、現在片岡選手が取り組んでいる新打法だ。

この打法を自分のものにすることができれば、片岡選手は今季間違いなく3割バッターになることができるだろう。だが右打者であるが故に、森打撃コーチの言う200安打というのは非常に難しい。可能性がないということはないが、右打席というのは、左打席に比べると1塁までの距離が長い。その分左バッターよりも内野安打が減ってしまうため、右打者の200本安打というのは、簡単に口に出せるような数字ではない。

とにかく毎年新しいことにチャレンジし、常に進化を目指している片岡選手は本当に素晴らしいと思う。もし片岡選手が頭を使うセカンドというポジションではなく、もっと本能的に動くことができるポジションであったなら、ひょっとしたら手の付けられないレベルのバッターになっていたかもしれない。だが逆に片岡選手がセカンドにいるからこそ勝てた試合も多々ある。やはり片岡選手にはセカンドを守りながら、首位打者争いに加われるバッターに進化してもらいたい。今季もし片岡選手と栗山選手が首位打者争いを繰り広げることがあれば、ライオンズは間違いなく独走するだろう。

2010年02月18日 16:07

岸孝之投手のカーブが魔球と呼ばれる所以

筆者が今シーズン最も期待しているローテーションピッチャーは岸孝之投手だ。涌井投手がエースであることに間違いはないし、彼ならば放っておいてもしっかりと結果を出すだろう。だが更なる飛躍をと考えた時、筆者が最初に名前を挙げたいのは岸投手だ。

岸投手は今季4年目となるのだが、筆者は西武ドーム、テレビ中継、録画を含めると、レギュラーシーズン・ポストシーズン・日本シリーズと、これまでの岸投手のピッチングをほぼ全球見て来た。

昨季までの岸投手には、まだまだ身体のひ弱さが感じられていた。例えば疲れが出てくると、下半身と上半身のバランスがすぐに崩れていた。良いピッチャーというのは、上半身よりも下半身の方に先に疲れがやってくる。そういう意味では岸投手は間違いなく良いピッチャーなのだが、ただ絶対的な筋繊維の強さが少し足りなかった。そのために疲れが出てくると、なかなかそれを持ちこたえることができない。つまりすぐに上半身に頼るピッチングになってしまい、ボールが行かなくなってしまう。

だが一年前の岸投手と現在の岸投手を見比べると、下半身の安定感がまるで違う。体型自体はほとんど変わらず、スリムで典型的な投手体型なのだが、下半身のブレがほとんどなくなったように筆者は感じている。恐らくオフの間にかなり体幹トレーニングを行ったのだろう。春季キャンプの岸投手のフォームを見ていると、投球時に出現する身体の軸が本当に美しい。そしてリリース前後の体勢も、下半身が非常にバランスよく立てられていて、その上にある上半身もまたバランスよく乗せられている。ピッチャーとしては本当に理想的なフォームで、このフォームだけを見ると筆者は、今季は涌井投手よりも勝ち星を挙げるのではないかとさえ考えてしまう。

岸投手が主に投げる球種は4種類。ストレート・カーブ・スライダー・チェンジアップだ。その他カッターなどいくつかの変化球も持ってはいるが、主に使う球種はこの4つ。球種だけを見ると非常にオーソドックスで、どこにでもいるようなピッチャーに思える。しかし実際には違う。2008年の日本シリーズ、巨人打線相手に14回2/3を無失点、12イニング連続奪三振を記録して以来、岸投手のカーブは魔球と呼ばれるようになった。

通常の変化球というのは、バッターの手元近くになってから動いて来る。その動くタイミングがバッターに近くなればなるほど、バッターはその変化球に対して対応ができなくなる。逆に早く曲がり始めてしまうと、変化球はストレートよりも打ちやすい。

岸投手のカーブは普通の変化球ではない。リリースされた瞬間からすでに変化が始まっている。昔で言うところのドロップと呼ばれる変化球だ。そしてドロップで思い出されるのはやはり沢村栄治投手だろう。沢村投手のドロップは三段ドロップとも呼ばれるほど鋭く大きく変化した。ちなみに沢村投手はこの三段ドロップを今で言うツーシームの握りで、人差し指・中指ともに縫い目にかけて投げていた。岸投手のカーブは、沢村投手のドロップにも匹敵すると筆者は真剣に考えている。

人間の目というのは横に並んでいる。そのため、縦の動きに大きな弱点を抱える。これが野球の場合、スライダー系の横に動くボールに対しては両目を使ってパノラマでボールを追うことができるのだが、フォーク系の落ちるボールの場合、どうしても片目でボールを追う傾向が強くなってしまう。つまり2つの目で見れていたボールを、縦の変化の場合1つの目でしか見れなくなってしまうことがある。

岸投手のカーブは高低差が非常に大きい。リリースされた直後のボールは、バッターは顎を上げなければボールを追うことができない。逆に手元まで来ると今度は顎を下げて行かなければボールを追えなくなってしまう。これが岸投手の投げるカーブの強みだ。縦方向に弱点を抱える人間の目を、上下を使って揺さぶる。これだけ目線を動かされたら、バッターはなかなかバットをコントロールすることはできない。

フォークボールは下にしか変化はしない。しかし岸投手のカーブは一度上に行ってから下に落ちてくる。この2方向への動きはバッターにとっては脅威だ。しかも岸投手がさらに素晴らしいのは、このカーブをストレートと同じ腕の振りで投げられることだ。

同じカーブの使い手であっても星野伸之投手の場合、ストレートとカーブでは腕の使い方は異なっていた。この差はすでに、2人の間には大きく現われ出している。星野投手は通算18年で貯金は36勝(通算176勝)だったが、岸投手はまだ通算3年という短さにも関わらず、すでに20勝(通算36勝)の貯金を挙げている。どの球種に対してもほとんど同じ腕の振り方でボールを投げるということが、この数字だけでどれだけ大切であるかが分かってもらえると思う。

今季フィジカルで成長を見せ始めた岸投手は、よほど調子を崩さなければ15勝は間違いなく狙って行けるだろう。今季は結婚もして、心身ともに充実している岸投手だ。どのポジションの選手よりも神経質なピッチャーという人種は、精神的な安定を得られるだけで大きく飛躍することができる。恐らく岸投手もそうなるだろう。だからこそ筆者は今季、岸投手に対し背番号以上の貯金を作ってもらいたいと考えている。つまり具体的には16勝5敗という数字だ。春季キャンプの投球を見た限りでは、十分に可能な数字だと筆者は考えている。

だが勝つにしても負けるにしても、大切なのは怪我をしないことだ。怪我をしてしまえば、先発ピッチャーとして最低限の務めであるローテーションを守るということもできなくなってしまう。だからこそ岸投手には春季キャンプでしっかりと身体を磨き上げ、1年間怪我なく投げ続けられる状態にしてもらいたいと思う。そしてそれさえクリアできれば、ライオンズから2年連続で沢村賞投手が出る可能性も高くなるだろう。

2010年02月17日 12:58

2010/02/13 紅白戦

紅組 13
白組

南郷スタジアム
紅組継投:許銘傑~武隈星野
白組継投:山岸~藤田~山崎

紅組ホームラン:高山
白組ホームラン:ブラウン


【ゲームレビュー】
調整遅れかと心配されていたブラウン選手だったが、この日は一振りで首脳陣を安心させた。武隈投手が投じた高めのスライダーを見事なライナーでバックスクリーンに放り込んだ。渡辺監督も「あの弾道であそこに打ったのは評価できる。予想外の一発。顔がいいじゃん。悪人顔じゃない。性格も良い」と新助っ人に高い評価を与えていた。

そして打でもう1人気を吐いたのは2年目の坂田選手だった。前日はシートバッティングでバットを一度も振らずに見逃し三振をしたり、守備でも2度のミスを繰り返していたが、「もっと攻めろ」と渡辺監督に言われたことでギアを入れ直し、守備でも好プレーを連発し、打てば3安打2打点の猛打賞。これには渡辺監督も「彼にとってはただの紅白戦ではなかったはず」とにんまりだった。このまま行けばひょっとすると、ライトは赤田選手でも松坂選手でもなく、坂田選手が食い込んでくる可能性もあるだろう。

この試合、打撃陣はよく打った印象が強いのだが、反面投手陣では6人中で1人もパーフェクトピッチングを見せることができなかった。星野投手と山岸投手は自責点0に抑えたが、星野投手は1回を投げてフォアボール1、山岸投手は3回を投げて2本のヒットを打たれた。山岸投手は近年あまり良い数字を残せていないため、今年は勝負の年となる。そのためオープン戦に入る前からしっかりと結果を残して行かなくてはならない。

そして白組の山崎投手に関しても同じだ。三井投手が背負っていた29番という背番号に変わり、左のリリーバーとして期待されている。しかしこの試合では2回を投げて9安打4自責点と炎上。これでは大事な試合を任せてはもらえないだろう。

最後に付け加えてもう少しブラウン選手のことを話すと、ホームランを打った際のスウィングはとても良いものだった。下半身はしっかりと変化球を待つことができているし、バットはとてもシャープに振れていた。外国人特有の、力で持って行っただけのホームランではなかったと思う。しかも大きいのは、左打者でありながら、左投手から打ったことだ。いくら経験の浅い武隈投手が相手とは言え、ボールが高めだったからとは言え、外国人選手がこの時期に、順手投手の変化球をライナーでホームランにしたということは大きな収穫だったと思う。この試合のようなバッティングができていれば、シーズンに入ってもひどく苦しむことは恐らくないだろう。

なお明日17日は南郷スタジアムで、12:30から韓国の斗山ベアーズとの練習試合があります。平日ではありますが、お近くの方はぜひ応援しに行ってみてください。

2010年02月16日 23:46

中島裕之選手、豪快さの影にある繊細な打撃

中島裕之という選手は、天性のバッターだと思う。もし他のバッターが簡単に中島選手の真似をしたとしても、中島選手のように打てるようになることはないだろう。それほど中島選手のバッティングには努力の量と同等に天性のものが感じられる。

伊丹北高校時代の中島選手は、エースで主砲だった。だがアマ球界では無名の存在で、プロのスカウトたちのほとんどがマークしていなかった。1年生の頃からレギュラーを獲得してライトを守るようになった中島選手は、2年生になると1番に昇格し、3年生になるとエースとして1番を打っていた。つまりアマチュア時代の中島選手は、ショートなど守ったことはなかった。

元々投手として入団した中島選手は、打撃を活かすためすぐにショートにコンバートされた。それは近い将来、当時1軍のショートを守っていた松井稼頭央選手のメジャー移籍が濃厚とされていたためだった。そしてこのコンバートは中島選手にとって吉と出た。入団1~2年目はファームでみっちりと守備・打撃練習に明け暮れ、3年目からは1軍にも長期帯同するようになり、松井稼頭央選手の抜けた4年目にはついにレギュラーを獲得した。ショートとして7番を打ち、全試合フルイニング出場を果たした。

なぜ筆者が中島選手のバッティングに天性のものを感じるかと言うと、その理由は目線の動きにある。中島選手は打席では比較的よく動くタイプだ。まず足を豪快に上げている時点で、身体にはブレが生じ、当然それは目線のブレにも繋がっていく。しかし中島選手の場合、このブレを上手く利用しているように筆者は感じるのだ。

ブレるということはつまり、身体の動きがルーズになるということ。ルーズになればブレるというデメリットとは逆に、動かしやすいという相対するメリットも生まれる。中島選手はこのメリットを上手く利用している。

ルーズになった身体・目線を上手く動かすことで、柔軟にその目線を投球の軌道上に乗せることができている。しかしアマチュア野球ではこの動きは良しとはされない。目線と身体をブラさずに打つことを徹底して教えられる。もし中島選手が名門報徳学園に合格していたら、恐らくまったく違ったタイプのバッターにされていただろう。そう考えると報徳学園に落ち、伊丹北で伸び伸びとプレーできたことは中島選手にとっては大きな財産になったと思う。

中島選手のバッティングを一見すると、非常に豪快だ。「ぶった斬り打法」とも呼ばれる上段に構えるバットに、大きく上げていく前脚。このフォームそのものが豪快だ。だが中島選手のバッティングメカニズムを1つずつ分析して行くと、バッティングモーションに関しては豪快さは少なく、むしろ繊細さ、巧さばかりが感じられる。上述した目線に関してもその1つだ。

ただ筆者は1点だけもったいないなぁと感じる個所がある。それは、最初からバットを上段に構えてしまっている点だ。もちろんこれが悪いというわけではない。ここにバットを構えることで、目線だけではなく、バットスウィングの軌道も投球の軌道上に乗せやすくなる。この打ち方なら打率が高いことに不思議はない。だがホームラン数に関しては、この打ち方では今後劇的に増えることは考えにくい。

打率を1分下げてでもホームランを10本増やす、と考えた時、始動時に構えた時のバットは身体と正対する位置に構えると効果はすぐに現われるだろう。つまりタフィ・ローズ選手のように、身体と正対する位置で肩甲棘と上腕骨を水平にし(0ポジション)、バットをキャッチャー側にやや傾けるのだ。これを行うと何が起こるかと言うと、反力が生まれる。すべてのスポーツに限らず、すべての動物の動きは反力があってこそ成り立つ。もし地面という反力がなければ、いくら足を蹴っても前に進むことはない。

バッティングにおいて反力を利用すると、その分バットスウィングに込められるエネルギーが増幅される。つまりより強い力をボールにぶつけることができる。この反力を最も分かりやすい言葉で表したのが、テイクバックという言葉だ。テイクバックこそが反力を、もっと分かりやすく言えば反動を巧く利用したバッティングモーションとなる。

中島選手の場合は最初からバットを上段に構えてしまっているため、上半身のテイクバックが極端に少ない。ただその分バットコントロールの質を高めているために打率は非常に高い。だがボールに伝えられるエネルギーは多くないため、なかなかホームラン数は増えていかない。

中島選手は3割3分・20本塁打打つ能力があることは2008年にすでに証明した。すると今後求められるのは3割2部・30本塁打であり、トリプルスリーを目指す中島選手自身、この数字を具体的に考えているはずだ。

今季中島選手がバットを立て気味に構えるシーンがあれば、それは確実に長打を狙っている場面となるだろう。昨季も中村選手が故障し、4番に座った際にはバットを立てて構え、明らかに長打を狙いに行っていた。

バッティングそのものはまだ変える必要はないと思う。ただボールを狙いに行く動作の始動時において、バットを構える位置だけを動かすことができれば、打球の飛距離は10m単位で伸びる可能性を秘めている。そうすれば、昨季まではウォーニングゾーンで失速していた打球も、確実にスタンドインするようになるだろう。

とにかく中島選手はまだまだ進化の過程にいる。WBCやオリンピックもなく、落ち着いてシーズンに挑める今季は、恐らく中島裕之史上最強の中島裕之を見ることができるはずだ。12球団最高のアーチストである中村選手に、日本代表クラスのスラッガーである中島選手が居並ぶライオンズの打線は、今季は今まで以上に他球団の脅威となるだろう。西武ファンとしてではなく、野球ファンとして冷静に見たとしても、今季ライオンズが優勝争いに絡めない可能性はないと思う。中島選手の更なる進化によって、それを確信的に考えることができる。

2010年02月16日 14:50

160kmより、130kmの良球質の方が投手は勝てる

雄星投手の投げる155kmという球速がクローズアップされる中、球速がピッチャーにとってどういうものなのかを考えてみたいと思う。まず球速とは、あるに越したことはないが、なくても問題はない。150kmを投げられるからと言って良いピッチングができるわけではないし、130kmしか投げられなくても176勝を挙げた星野伸之というピッチャーもいた。

1999年のある日、当時の東尾監督は試合前に先発陣を外野に集めて車座を組んだ。その輪の中にはプロ1年目の松坂投手や、絶対的エースとして君臨していた西口文也投手、そして投手陣のリーダー格となっていた石井貴投手、先発に転向しても結果を出した潮崎哲也投手らがいた。

そんなそうそうたる顔ぶれの中心となった東尾監督はこう切り出した。「スピードは女と同じようなものだ。若い頃は女の外見ばかりを見てしまいがちだが、30歳を過ぎると外見よりも内面を見れるようになる。ストレートも同じで、若い頃は球速にばかり気を取られてしまうが、30歳を過ぎると、球速よりも、球質の大切さが理解できるようになる」。東尾監督は、当時投げるボールの球速が大きく注目されていたルーキー松坂投手を諭す意味で、先発陣にこのような話を聞かせていた。

東尾監督が「わかったか?」と聞くと、「わかりました」と答える松坂投手。そしてそこに「どこまでわかったんだよ」とちゃちゃを入れる石井貴投手。今の松坂大輔というメジャーを代表するピッチャーが存在するのも、筆者はこの時の東尾監督の教えがあったからこそだと考えている。

球速というものには2種類存在する。1つ目は初速。つまり投げた直後のスピードだ。そして2つ目は終速。これはバッターの手元まで来た時の球速。

そして球速の意義を高める球質という言葉だが、これは初速と終速のスピードが少ない状態のことを表す言葉となる。つまり初速と終速とのスピード差が少なければ球質が良いとされ、その差が大きければ球質が悪いとされる。

球質が悪くても、160kmを投げられるピッチャーなら話は別だ。例えば「生ける伝説」と呼ばれたロジャー・クレメンス投手は、初速と終速とに10km以上の差があった。160kmを計測したストレートであっても、終速は140km台まで落ちていることがほとんどだった。だが150km弱というスピード自体がとても速いため、球質が悪くてもメジャーで354勝を挙げている。

ライオンズで言えば小野寺投手大沼投手がスピードボールを投げるが、この2投手の球質は良くはない。逆に岸投手野上投手は剛速球は投げられないが、球質が非常に良い。ただ野上投手の場合1年目の昨季は、その球質の安定感がまちまちだったために、良い日と悪い日の差が大きかった。だがダルビッシュ投手に下半身の使い方をレクチャーされた今季は、野上投手はかなり高い確率で先発ローテーションに加わってくるだろう。

昨年の野上投手は、下半身に粘りがある日は良いボールが行くのだが、下半身に疲れが見える日はボールがまったく行かなかった。この不安定さでは1軍ではなかなか通用しない。だがダルビッシュ投手にピッチャーに必要な下半身の使い方、つまり体重移動やエッジング、軸の回旋のさせ方などを自主トレで教わった今季は、ボールの安定感はかなり増すはずだ。野球選手としては小柄な野上投手ではあるが、下半身でボールを投げ続けることさえできれば、2ケタ勝利を目指せるだけのピッチャーになれると思う。

では球質の良いストレートを投げるためにはどうすればいいのか?これは言葉で説明するのはとても簡単なのだが、実際に取り入れるのは非常に難しい。簡単に言えば、下半身(主に骨盤)で上半身をコントロールし、腕・肩周りにある約40種類の筋肉群を満遍なく使えれば球質は向上する。さらにテイクバックで深く肩甲骨を使うことでアクセラレーションの距離を増やしてあげられれば、球質だけではなく球速もアップする。ライオンズでこれが完璧にできているのは工藤投手・西口投手・岸投手の3人だけだろう。

ピッチャーにとって大切なのは、150kmのボールを投げることではない。150kmのボールが投げられるからと言って、バッターを抑えることはなかなかできない。初速で150kmを投げられたとしても、終速で140km未満になっていればそれはただの棒球でしかなくなり、プロのバッターであればいとも簡単に打ち返してくるだろう。だからこそ大切なのは球速ではなく、球質なのだ。

雄星投手に関しても160kmを目指すのではなく、とにかく球質の向上を目指してもらいたい。そうすれば自ずと球速は上がり、少し力を抜いたストレートでも空振りを奪えるようになるはずだ。

星野伸之投手と対戦したことのあるバッターは口々にこう言う。「150km投げるピッチャーのボールよりも、130kmそこそこの星野さんのストレートの方がずっと速く感じる」と。これこそが投球術を含め、球質が良い好例だと言える。そして速球派の投手に対し、しきりにこのことを教えようとしたのが東尾監督だった。

スピードが出ている状態=球質の良さではない。スピードが乗っている状態=良い球質、ということになる。小野寺投手が今後クローサーとして復活するためには、150kmのボールを捨ててでも球質を向上させるべきだろう。特にこれから30歳を越えていけば、球速は年々落ちて行く。そうなった時、今の球質のままであれば小野寺投手はあと2~3年でユニフォームを脱ぐことになるだろう。

そうならないためにも、小野寺投手は球速から球質へのシフトチェンジが必要になってくると思う。小野寺投手だけに限らず、このシフトチェンジができないピッチャーは30歳を境に急速に結果の残せなくなって行く。逆にシフトチェンジに成功したり、元々球質にこだわっているピッチャーは、東尾投手や工藤投手のように20年以上第一線で投げ続けることができる。

現在春季キャンプをB班として送っている小野寺投手ではあるが、シフトチェンジするにはまだまだ遅くはない。こだわりを球速から球質に変え、あと10年西武ドームのマウンドで投げられるピッチャーになっていって欲しいと思う。

2010年02月15日 20:48

優勝するための最低条件は、鉄壁の外野陣

今季、ライオンズの外野陣容はどうなるのだろうか?黄金時代は秋山幸二選手や平野謙選手らを中心に鉄壁を誇ったライオンズの外野陣だったが、ここ数年は決して鉄壁とは言えない状態が続いている。ピッチャーからすると、外野陣の守備力に安心感を覚えられると思い切ったピッチングができるため嬉しい。

現在外野で固定起用されているのはセンターの栗山選手ただ1人だ。レフトとライトに関してはまだまだ流動的な要素が大きい。レフトに関しては不安な膝への負担を軽減させるためにG.G.佐藤選手がライトからコンバートした。そして空いたライトではまずブラウン選手がテストされるようだ。

栗山選手は数年前までは守備への不安が非常に大きな選手だった。大事な場面でエラーをしてしまったり、エラーにならずともミスを繰り返していた。しかし今は違う。肩こそは決して強肩とまでは言えずとも、守備に関しては安心してセンターを任せられるだけのレベルアップを成し遂げた。昨年に関してもゴールデングラブ賞を受賞していてもおかしくない守備の安定感だった。

だが安心感の強い栗山選手の横を固めるG.G.佐藤選手、ブラウン選手には大きな不安要素がある。まずG.G.佐藤選手は肩こそ強いものの走力がない。打球に対しての一歩目も決して早い部類ではなく、恐らく左中間への強い打球に追いつくことはできないだろう。ブラウン選手も同様で、アメリカでの盗塁数を見る限りでは決して足は速そうではない。となると、ピッチャーからするとこの陣容は非常に大きな不安を覚えてしまう。

センター寄りの左中間・右中間への打球は守備範囲の広い栗山選手が追いついてくれるとしても、レフト寄り・ライト寄り、もしくはレフト線・ライト線への打球は確実に長打に繋がるだろう。特にライトの守備がもたついてしまうと大量失点に繋がりかねない。

レフトへの打球であれば、レフトから3塁への距離が近い分3塁打にはなりづらい。だがライトから3塁への距離は遠いため、長打が簡単に3塁打になってしまう場合がある。俊足のライトであればシングルヒットで止められるような打球であっても、足が遅いライトの場合は右中間を抜かれて同じ打球を3塁打にしてしまう。これではピッチャーはひとたまりもない。

こうして考えて行くと、やはり守備の良くない選手を外野に2人置くという選択肢は避けるべきだと筆者は思う。それでなくても近年はファールゾーンが狭くなり、ファールフライでアウトを稼げる回数が大幅に減ってしまった。その上守備に不安のある選手を外野に2人も置いてしまえば、ピッチャーは独り相撲をし出しかねない。

だからこそライトはブラウン選手ではなく、赤田選手松坂選手を起用すべきだと筆者は考える。赤田選手も今季は状態が良さそうだし、松坂選手に関しても年々大きくレベルアップしている。この2人のどちらかを7~9番のどこかで起用できれば、打線にもつながりが出てくるだろう。もちろん2人が期待にそぐうバッティングを見せてくれることが条件となるが。

となるとブラウン選手はやはり指名打者が妥当なポジションとなるだろう。G.G.佐藤選手にしてもブラウン選手にしても、肩は強い。だが外野手の仕事は、まずはボールに追いつくことだ。ボールに追いつくことができれなければどれだけ強い肩を持っていても意味を成さない。

言い方を変えれば、例えばランナー2塁で際どい場所へのライトフライが上がった際、ボールに追いつくことで初めてその強肩を活かすことが出来る。強肩というのは、レーザービームを披露することだけが強肩ではない。ランナーに強肩であるということを意識させ、外野フライ後のタッチアップをさせないことも強肩の見せ所だ。メジャーリーグで言えば近年、イチロー選手の肩に挑戦するランナーは激減した。そのためにイチロー選手の補殺数は強肩とは比例せずに決して多くはない。筆者が考えるに、これこそが外野手の強肩の強みだと考える。そしてこれを可能にするためにも、まずは打球に追いつく走力・守備力が必須とされる。

ピッチャーにとれば、シングルヒットをツーベースにされるか、ツーベースをシングルヒットで抑えられるかでは雲泥の差だ。G.G.佐藤選手やブラウン選手の強肩を活かすことも大切だとは思うが、渡辺監督にはぜひともピッチャーから信頼を得られる外野の布陣を敷いてもらいたいと思う。そしてこれはチーム防御率を向上させるためにも必要な戦略だ。優勝するためには3.50よりも良いチーム防御率が必要とされるが、これを可能にするためにも、外野の守備力は内野同様に重要視しなくてはならない。

日本一奪回をテーマをし今季に挑むのであれば、1つの小さなプレーも大切にして行く必要がある。そのためにも渡辺監督には、黄金時代さながらの鉄壁を誇る外野陣を形成してもらいたいと思う。

2010年02月14日 02:06

#33 星秀和



#32 星秀和 - Hidekazu Hoshi

外野手、右投左打
2004年ドラフト5位
前橋工業高~埼玉西武ライオンズ
群馬県前橋市出身、1986年11月10日生、180cm / 92kg
2010年推定年俸:560万円


星選手は入団時からその身体能力の高さゆえに、非常に大きな期待を多くのファンから寄せられていた。その星選手も2010年は6年目を迎える。今後のことを考えて行くと、2010年は星選手にとっては1つの正念場となるだろう。今年ダメなら戦力外、という強い気持ちで挑まなければ、ライオンズの熾烈な外野争いを生き残ることはできない。

前橋工業出身ということは、渡辺監督の後輩となる。そのためファーム時代からよく知っている星選手に対し、渡辺監督がかける期待は決して小さくはないと思う。だが1軍で初出場した2008年、そして2009年ともに、監督の期待に応えることはできなかった。

星選手は近年、G.G.佐藤選手を師事して肉体改造に挑んでいた。そして短い期間で12kgもの筋肉量を増やし、元々の身体能力の高さをさらに強調して見せた。しかし筆者個人の考え方で言わせてもらえるのなら、必要以上の筋肉量は必要ないと思う。打球の飛距離は、筋力で伸ばすものではない。あくまでもタイミングとミートが重要で、そこにパワーが折り重なってくる。そしてパワーとは筋力×スピードのことで、筋力があったとしても、そこにスピードがなければパワーを最大限に発揮することはできない。

星選手は今季100安打を目標にしている。100安打を打つためにはほぼ毎試合で先発出場が必要になってくる。つまりレギュラーを獲得できなければ達成できない数字だ。星選手がレギュラーを掴むためには、やはりバッティングが課題となってくるのだろう。

星選手のバッティングを見ていると、左打ちである利点がほとんど使えていないことが分かる。分かりやすく例えれば、右打者の打ち方で左打席に立ってしまっているのだ。つまりスウィング時、もっと右骨盤を1塁方向に移動させてあげられれば、バットはもっとスムーズに出てくる。バットがスムーズに出てくれば、それだけミート幅を広げることもできる。星選手はスウィング時、脊柱(背骨)を軸とした回旋が非常に弱い。どちらかと言うと上半身の筋力に頼った打ち方になってしまっている。

バットスウィングを上半身の力に委ねてしまうと、ドアスウィングしやすくなってしまう。バッテリーからすれば、ドアスウィングになっているバッターほど打ち取りやすいバッターはいない。今後星選手が1軍で活躍するためには、上半身の力を最大限に活かすためにも、下半身主導のバッティングができるようになる必要がある。逆を言えば、それができなければ1軍でレギュラーを張ることは不可能だろう。

星選手は非常に恵まれた身体能力を持っている。その能力を活かすためにも、筋肉に頼ってプレーをする選手にはなって欲しくはない。筋肉に頼ってしまうと野球らしい動作に制限が生まれてしまい、故障にも繋がりやすい。大切なのは筋肉の量ではなく、野球の動作を補助できる筋肉の質なのだ。例えば中村剛也選手を見てみて欲しい。彼は体重こそ100kgを超えるが、筋肉の量だけを測ればG.G.佐藤選手や星選手よりもずっと少ないと思う。しかしそれでも48本塁打できるのだ。

星選手本人は、将来どのような選手になりたいのだろうか?その辺りは筆者には分からない。だが将来に対する明確なビジョンがあるのならば、星選手はまだまだ中途半端だと思う。アベレージヒッターになりたいのか、ホームランバッターになりたいのか。まずはそこからハッキリさせて、自分のプレースタイルを確立させなければ、1軍ではなかなか役割は与えてもらえないだろう。

もしアベレージヒッターになりたいのであれば体重90kgは重過ぎるし、ホームランバッターになりたいのならバットスウィングに対するモーションをもっと工夫する必要がある。

星選手はもう新人選手ではない。6年目ということは、そろそろ花咲いてもらわなければ困るし、我々ファンもそれを強く望んでいる。そして花を咲かせるためにも、まずは明確なプレースタイルを築き上げる必要があるだろう。期待が大きいだけについ厳しく書いてしまったが、星選手には今季、本当に頑張ってもらいたいと思う。

 打撃成績 Batting Results





























2008 3 7 7 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 .000 .000 .000
2009 7 19 18 3 4 1 0 0 5 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 .222 .222 .278
通算 10 26 25 3 4 1 0 0 5 0 0 0 1 0 0 0 0 4 0 .160 .160 .200

2010年02月13日 00:04

#31 坂田遼



#31 坂田遼 - Ryo Sakata

外野手、右投左打
2008年ドラフト4位
横浜創学館高等学校~函館大学~埼玉西武ライオンズ
神奈川県横須賀市出身、1986年10月2日生、178cm / 86kg
2010年推定年俸:1000万円


坂田遼選手は、2010年に最も活躍が期待できそうな若手選手の1人だ。昨年は1年目から1軍の試合に出るという経験を積み、1軍と2軍の違いを肌で感じてきたと思う。そこで感じたことを今季しっかり活かすことができれば、1軍定着も十分に狙っていけるだろう。

風貌だけで判断してしまうと、坂田選手は長距離砲という印象がある。しかし実際のプレーでは違うようで、どちらかと言うと中距離砲だと言える。ファームでは昨年77試合に出場し、.342というハイアベレージを記録した。ヒット数82本のうち、ホームランは9本のみで、二塁打が13本。

坂田選手の体格だけを見ると、もう少しホームラン数が多くても良いのかな、という印象があるのだが、バッティングを見てみると、大振りをすることが非常に少ない。バットをコンパクトに出し、ボールの軌道に対し上手くバットを入れていっている。そして右脚の股関節・骨盤の使い方も左打者特有で、チームでは原選手と共通している。

坂田選手が1軍でもっと打つためには、右の膝が重要になってくるだろう。坂田選手を見ていると、踏み込んだ右の膝を開いてしまうクセがあるようだ。もちろん全打席というわけではないのだが、1軍レベルの選手と比べると、それが非常に多い。膝が開いてしまうと、緩いボールを待てなくなってしまう。そしてそれがピッチャーに見破られてしまうと、1軍では緩急のみで抑え込まれてしまうだろう。ファームでは通用したとしても、1軍では通用しない。

バットの運び方は、上本選手にやや似ている。これも左打者特有なのだが、腰ごとバットを持って行くようなイメージだ。だがこのスウィングには欠点があり、ボールとバットが点でしか交わらなくなってしまう。つまりバットの軌道上に投球がやってくるポイントが1点に絞られてしまうため、空振りをする確率が非常に高くなる。これをもっと、ボールの軌道上にバットを入れやすいスウィングにすれば、ファームでの三振42個は劇的に減って行くだろう。もし中距離砲を目指すのであれば、これはすぐにでも修正すべきだと思う。バットコントロール自体は巧い選手なので、上述したバットの入れ方をここで相殺しなければ、打率はもっと伸びるはずだ。

近年のライオンズはドラフトで本当に良い選手を獲得できていると思う。坂田選手もその1人で、彼は将来間違いなく1軍の主軸を担うはずだ。ライオンズのスカウト陣は、他のチームが足を運ばないような地区の高校・大学にまで視察をしに行く。現に函館大学の選手がドラフト指名されたのは坂田選手が初めてだった。

野球に対し本当に真剣そのものの坂田選手は今オフ、しっかりとトレーニングを積んできたようだ。その成果を2010年のレギュラーシーズンで発揮できるように、まずはキャンプでしっかりと結果を残し、開幕1軍の座を掴み取って欲しいと思う。外野手争いに坂田選手が加われば、その争いはさらに熾烈を極め、底辺も一気に底上げされて行くだろう。そうなれば赤田選手G.G.佐藤選手はうかうかしてはいられない。今年は坂田選手が外野陣のカンフル剤になってくれればと筆者は期待している。

 打撃成績 Batting Results





























2009 5 13 10 2 1 0 0 0 1 2 0 0 0 0 2 0 1 3 1 .100 .308 .100
通算 5 13 10 2 1 0 0 0 1 2 0 0 0 0 2 0 1 3 1 .100 .308 .100

2010年02月12日 14:14

#18 松坂大輔

#18 松坂大輔 - Daisuke Matsuzaka

先発投手、右投右打
1998年ドラフト1位
横浜高~西武ライオンズ~ボストン・レッドソックス
東京都江東区出身、1980年9月13日生、182cm / 83kg
タイトル:新人王(99)、最多勝(99~01)、最多奪三振(00、01、03、05)、最優秀防御率(03、04)、沢村賞(01)、ベストナイン(99~01)、ゴールデングラブ(99~01、03~06)、オールスター出場(99~01、04~06、02・03は怪我により辞退)、WBC最優秀選手(06、09)

98年春の選抜甲子園大会、松坂大輔投手はマスコミから出場選手に配られるアンケートシートに、プロに行くなら「巨人、西武」と書いていた。しかしそれが夏の甲子園では「巨人、横浜」と変わっていた。アンケートの回答に変化が見られたとは言え、松坂大輔投手は当時、決してライオンズに悪い印象は持っていなかった。また、松坂投手のご両親、横浜高校の渡辺監督も育成に定評のある西武ライオンズというチーム、そして当時の東尾監督に好印象を持っていた。

だが当の松坂投手本人の意中の球団は横浜ベイスターズだった。ドラフトでもし横浜に入団できなければ、松坂投手は社会人野球に進むと公言していた。これはオリンピック出場を視野に入れての選択で、この当時はまだプロ野球選手がオリンピックに出場するという文化が根付いていなかった。日の丸に強いこだわりを持っている松坂投手にとって、意中の球団に行けないのならオリンピックを目指そうという考えは、十分に納得の行くものだったと思う。

そして運命のドラフト会議当日。松坂投手を1位指名したのは西武、横浜、日本ハムの3球団だった。本来ならばもっと多くても良かったのだが、松坂投手自身が横浜入りを熱望していたため、他球団は断られる可能性の高い松坂投手よりも、いわゆる松坂世代と呼ばれる他の選手たちを確実に獲りに行った。

松坂投手を1指名した3球団のうち、クジで交渉権を引き当てたのは西武の東尾監督だった。西武も実は他の選手を1位指名する予定だったのだが、当時の堤オーナーの指示で松坂投手を強行指名しに行っていた。交渉権を引き当てた際の東尾監督は満面の笑みで、まさにしてやったりと言った表情。しかし当の松坂投手本人は「1位指名されて光栄です。でもやっぱり外れちゃいましたね」と浮かない表情を見せていた。

その後数日、東尾監督は悩みに悩んだらしい。何をどう話せば松坂投手が西武入りを決意してくれるかを。そして悩み抜いた末に東尾監督が取った行動は、食事の席で自分の著書『私の真実―わが悔いなき野球人生 』を手渡すことだった。あれこれと話すよりは、自分の野球感を詰め込んだ一冊の本を手渡した方が、自分が考える野球を理解してもらえるはずだと考えたらしい。そしてその効果はてき面で、東尾監督の著書を読み終えた松坂投手は、すっかり東尾“投手”の野球理論、野球感に対し感銘を受けていた。そして例の200勝記念ボールだ。東尾監督は自身の200勝記念ボールを「200勝を目指して頑張って欲しい」というメッセージを込めて松坂投手にプレゼントしていた。この時点で松坂投手自身、「落ちた」と感じていたようだ。

実はこの時、西武は入団の条件としてオリンピックへの出場を認めていた。つまりプロで投げながらもオリンピックを目指せるという現実が、松坂投手の気持ちを入団に向けてさらに前向きにさせていた。また編成担当スタッフも社会人野球チームを奔走し、松坂投手のオリンピック派遣を約束する代わりに、松坂投手の受け入れを見送って欲しい旨を頼みまわっていた。こうした球団側の努力も実り、松坂大輔投手は西武ライオンズというチームで高校時代に次ぐ怪物伝説第2章を歩み出した。


入団1年目、つまり99年の松坂投手は先発第6の男だった。当時は西口投手が絶対的エースとして君臨し、そして石井貴投手との2枚看板は絶大な信頼感を誇った。そして豊田清投手も先発として活躍している頃で、潮崎投手も先発に転向して結果を出していた。

球団側、つまり営業サイドは、松坂投手を開幕第2戦に先発させて欲しいと東尾監督にリクエストを出していた。確かに99年春季キャンプの松坂フィーバーは凄まじかったし、西武ドームでの開幕2連戦の2試合目に先発させれば、かなりの観客動員が望まれただろう。これに関しては、堤オーナーも暗に東尾監督に圧力をかけていた。しかし堤オーナーのお気に入りだった東尾監督は、営業サイドのその期待には応えなかった。

その理由は、先述した実績十分の先発陣に対し示しが付かないからだった。もしこの時東尾監督が営業サイドのリクエストに応え、まだ実績0の松坂投手を開幕第2戦で先発させていたら、チームの士気は開幕の時点で急降下していただろう。しかしそうしなかったためにパ・リーグ2連覇中だったチームは東尾監督の下、開幕から1つにまとまることが出来た。

そして2つ目の理由はマウンドだった。当時の西武ドームのマウンドは、絶対的なエースである西口投手の好みに調整されていた。プロ球場のマウンドのほとんどは、そのチームのエースの好みに合わせてマウンドが調整されている。99年の西武ドームのマウンドは、かなりオーソドックスなマウンド傾斜だった。だが松坂投手のようにストレートを目一杯の力で投げるピッチャーに対しては、西武ドームのマウンドよりも傾斜のきつい東京ドームの方が合っていると東尾監督は判断した。この判断は結果的には正しかった。東京ドームでのプロ初登板では155kmや156kmというストレートを連発し、結果的に日本ハム相手に8回5安打2失点という好投でプロ初勝利を挙げている。

プロ初登板以降も比較的順調にピッチングを続け、ついに99年5月16日という日がやってきた。この日は筆者も西武ドームにいたのだが、外周通路だけではなく、スタンドの階段にも多くの観客が座り込むほどの混雑で、日本シリーズ以上の観客動員数となっていた。そう、この日は松坂投手が西武入りを決める1つの切っ掛けともなった人物、オリックス・イチロー選手との初対決の日だった。松坂投手はこのバッターと対戦することにモチベーションを高め、西武入りを決意したという経緯もあった。

この時の対戦を今さら説明する必要はないかもしれない。4打席対戦し、3連続三振のあと、4連続三振を狙いに行ったフォアボールが1つ。3三振・1四球という対戦結果だった。この試合の直後、松坂投手は「自信が確信に変わりました」という名言を残している。

そして時を経て松坂投手とイチロー選手は海を渡り、片やシアトル、片やボストンへと移籍し、WBCではチームメイトとしてジャパンの連続世界一に大きく貢献した。過去2回のWBCにおいては、松坂投手は両方でMVPを獲得している。

松坂投手のことを本気で書き出したら、きっと本ブログ1記事ではすまないだろう。それこそ1ブログすべてをそのまま松坂投手の話で埋められてしまうほどだ。そのため日刊埼玉西武ライオンズでは、松坂投手が西武入りを決意した経緯のみを簡単に紹介させてもらった。もし今後機会があれば、これ以降の松坂投手のこともじっくり書いてみようと思う。筆者が松坂投手を初めて見たのは、確か93年のことだったと思う(松坂投手中学1年、筆者が中3)。当時の松坂投手は丸々とした顔をしていて、周りからはアンパンマンと呼ばれていた。そのアンパンマンが今や世界を代表する大投手となったのだ。同じグラウンドで野球をしていた身としては、松坂投手は地元の英雄でもある(出身は江東区だが、所属チームは江戸川南という江戸川区のシニアチームだった)。

2009年は股関節痛により不本意なシーズンを送ってしまった松坂投手だったが、今年は復活を遂げてくれると思う。今オフの松坂投手はアリゾナにあるアスリート・パフォーマンス・インスティテュートという、股関節に関する専門トレーナーがいる施設で自主トレを行っていた。股関節というのはピッチングにおいて、肩と同じくらい重要な器官であるため、今オフのトレーニングは必ず2010年におけるさらなる飛躍に繋がると筆者は確信している。松坂投手は股関節だけではなく、指関節なども含めて全般的に関節が固いピッチャーだ。だからこそ部位ごと丁寧に鍛えることで可動域を広げ、パフォーマンス向上を目指して行く必要がある。

体調さえ万全であれば、メジャーリーガー相手に18勝3敗という数字を残せる松坂投手だ。WBCで性急な調整が必要なかった分、今季は万全な状態で開幕を迎えてくれるはずだ。今年も松坂大輔投手の大活躍に期待したいと思う。

 投球成績 Pitching Results



































 西武ライオンズ
1999 25 24 6 2 0 16 5 0 .762 743 180.0 124 14 87 1 8 151 5 2 55 52 2.60
2000 27 24 6 2 0 14 7 1 .667 727 167.2 132 12 95 1 4 144 2 0 85 74 3.97
2001 33 32 12 2 1 15 15 0 .500 1004 240.1 184 27 117 1 8 214 9 1 104 96 3.60
2002 14 11 2 0 0 6 2 0 .750 302 73.1 60 13 15 1 7 78 2 1 30 30 3.68
2003 29 27 8 2 1 16 7 0 .696 801 194.0 165 13 63 2 9 215 4 0 71 61 2.83
2004 23 19 10 5 0 10 6 0 .625 601 146.0 127 7 42 0 6 127 5 0 50 47 2.90
2005 28 28 15 3 3 14 13 0 .519 868 215.0 172 13 49 0 10 226 9 0 63 55 2.30
2006 25 25 13 2 2 17 5 0 .773 722 186.1 138 13 34 0 3 200 5 0 50 44 2.13
 ボストン・レッドソックス
2007 32 32 1 0 1 15 12 0 .555 874 204.2 191 25 80 1 13 201 5 0 100 100 4.40
2008 29 29 0 0 0 18 3 0 .857 716 167.2 128 12 94 1 7 154 5 0 58 54 2.90
2009 12 12 0 0 0 4 6 0 .400 283 59.1 81 10 30 1 2 54 8 0 38 38 5.76
NPB 204 190 72 18 7 108 60 1 .642 5768 1402.2 1102 112 502 6 55 1355 41 4 508 459 2.95
MLB 73 73 1 0 1 37 21 0 .638 1873 431.2 400 47 204 3 22 409 18 0 196 192 4.00
通算 277 263 73 18 8 145 81 1 .642 7641 1834.1 1502 159 706 9 77 1764 59 4 704 651 3.19

2010年02月11日 21:22

#86 潮崎哲也

#86 潮崎哲也 - Tetsuya Shiozaki

リリーフ・先発投手、右投右打
1989年ドラフト1位、2004年引退
徳島県立鳴門高~松下電器~西武ライオンズ
徳島県鳴門市出身、1968年11月26日生、177cm / 75kg
タイトル:会長特別賞(優秀新人賞・90)、日本シリーズ優秀選手賞(93)、オールスター出場(95)

現役時代の潮崎投手と言えば、魔球とも称されたシンカーが代名詞だった。このシンカーは面白いように打者の空振りを誘うことができ、ヤクルト時代の野村克也監督は高津臣吾投手に対し「潮崎のシンカーを会得しろ」と言ったほどだった。

現在は岸投手のカーブが魔球と称されている。岸投手の場合はカーブであるため、ボールは左打席側に曲がりながら落ちて行く。潮崎投手のシンカーは、岸投手のカーブによく似た軌道で右打席側に落ちて行った。シンカーを投げる投手自体が少ないし、しかもあれだけフワリと落ちて行くシンカーを投げられるのは、潮崎投手しかいなかった。そのためにバッターはあのシンカーを、狙ってもなかなか打つことができなかった。

このシンカーは、中指と薬指で挟むようにしてボールを握り、サイドハンドスロー特有のインスパイラルで腕を振ることで、ボールにトップスピンをかけて投じられていた。普通のシンカーは回転をかけて落とすイメージの方が強いが、潮崎投手のシンカーは恐らく抜いて投げていたのだと思う。恐らくリリース時にはもうボールは手から離れている感覚だったのではないだろうか?

筆者は数年前にダルビッシュ投手を見たその瞬間、「潮崎投手にそっくりだ」と思ったことを今でもよく覚えている。ダルビッシュ投手のグラブ側の手の使い方、腰の使い方、軸足の使い方など、潮崎投手に本当によく似ている。そして奇しくも潮崎投手とダルビッシュ投手は、まったく同じボールの握り方でシンカーを投げている。

潮崎投手は小柄で、しかもサイドスローでありながらも150km近いストレートを投げていた。それを可能にしていたのはグラブ手による反動・腰を上手く使っていた脊柱軸の回旋・軸足エッジングからのキックの3点だったと思う。強靭な下半身がなければなかなかできることではないのだが、この3点が特に優れていたために、潮崎投手は球界を代表するピッチャーになることができた。

また同時期に、鹿取義隆投手という救援のスペシャリストがいたことも、潮崎投手にとっては大きなプラスに働いたと思う。鹿取投手から学べたことは、決して少なくはなかったはずだ。

球界を代表するリリーバーも、晩年は年齢による身体の衰えを隠しきれなかった。最後の1~2年に関しては登板の指示が出されるたびに「投げたくないなぁ」と思っていたそうだ。実働15年で82勝55敗55S。もしプロ入りの最初から先発を任されていたなら、100勝は確実に達成できていただろう。

2004年9月21日は、筆者も西武ドームにいた。潮崎投手の最後の勇姿を観るために。ライオンズはこの年、12年ぶりの日本一を達成している。ライオンズ黄金時代の後半を支えたリリーバーは、2人の愛息と共にグラウンドを一周し、数え切れないほどの紙テープの祝福を浴び、ユニフォームを脱いだ。

【通算成績】
523試合/82勝/55敗/55S/1249.1回/967奪三振/防御率3.16

2010年02月11日 14:41

中島裕之選手が名ショートと呼ばれるためには

今キャンプ、毎日1時間の特守を繰り返す中島裕之選手。レギュラーを獲得した2004年以降、この6年でショートストッパーとしてどれだけ腕を上げたのだろうか?評論家や他球団の名ショートの中には、まだまだ中島選手を「巧い」と言う人は少ない。ファンとしてこの6年間の1軍でのプレーを見ている限りは、中島選手は目を見張る成長を遂げていると思う。だがそれでもプロ中のプロたちからの評価が低いのはなぜなのだろうか?中島選手はあとどこを修正すれば名ショートストッパーになれるのだろうか?

中島選手がショートに挑戦し出したのはプロに入ってからのことだった。松井稼頭央選手がFAによるメジャー移籍が有力視され始めた頃、中島選手は初めてショートというポジションに就くようになった。それは高卒1年目の2001年のことだった。ショートストップという、野球の中で最も難しいとされるポジションを19歳で初めて取り組むようになり、この9年でここまで上達したことは評価に値すると思う。野球というスポーツは不思議なもので、ショートストッパーに統率力がないチームはなかなか勝てない。

基本的に中島選手は打の印象の方が強い。トリプルスリーに最も近い選手だけあってそれは当然なのだが、中島選手本人としては、守備にも非常に高い意識を持っている。そしてその意識、力が認められ、2009年のWBCでは2番ショートに抜擢され、ジャパンのV2に大きく貢献した。これだけを見ると、中島選手は日本一のショートストッパーに成長したと言っていいだろう。だがそれでもヤクルトの名手・宮本選手を始めとし、過去を含め球界の名ショートストッパーたちは中島選手は「ショートの選手ではない」と口にする。

確かに宮本選手や井端選手らに比べると、中島選手の守備はまだまだ粗い。送球の安定感もまだまだだし、イージーなミスをすることもたまにはある。だがそれ以上に中島選手がなかなか名ショートストップと呼ばれない理由がある。それは併殺完成の数だ。ここ数年で併殺数が伸びてきているとは言え、本当に併殺数が多いと言えたのは2009年の89個だ。しかしそれでも90台には及ばなかった。さかのぼって行くと08年が79個、07年が73個、06年が44個、05年が45個、04年が73個となっている。ちなみに井端選手は昨年は92個の併殺を完成させていて、自己最高は97個となっている。この数字の差こそが中島選手が名ショートと呼ばれない最大の理由だと筆者は考えている。

ではどうして中島選手の併殺数は少なかったのだろうか?その理由は、中島選手の動きの中にあるクセを他球団が掴んでいるためだ。そのクセとは4-6-3のダブルプレー時、中島選手はセカンドからの送球を受けてファーストに投げる際、身体が外野側に流れてしまう。このことに他球団はすでに気付いていて、利用してきている。

良いショートはこのプレーの際、1塁ベースと2塁ベースを直線で結んだ線上、つまりランナーが走ってくる線上でボールをファーストに投げることができる。これができるとランナーは送球が当たるのを恐がり、2塁ベース上のショートに対し激しいチャージはかけてこない。だが中島選手のように外野側に身体を流して送球する選手に対しては、ボールが自分に当たる心配がないため猛チャージをかけてくる。猛チャージをかけられると送球もしにくくなり、悪送球にも繋がってしまう。

中島選手が今後、ショートストッパーとして一皮剥けるためには、ランナーが恐がるようなプレーをしなければならない。ピッチャーで例えるのなら、いかにして内角を攻められるかということになる。中島選手の場合は性格が優し過ぎるため、ひょっとしたら「送球をランナーに当ててはいけない」という無意識下の意識が働いてしまっているのかもしれない。だがこのクセを直せない限りは、中島選手が名手たちに認められることはないだろう。

中島選手は将来的にはメジャー移籍を視野に入れている。メジャーリーグのチャージは日本人選手の比ではない。ショートストッパーがベース上にいることなどお構いなしにチャージをかけてくる。だからこそデレク・ジーター選手のように、ジャンピングスローやスーパーマンスローができなくてはならない。逆を言えば、それができなかったからこそ松井稼頭央選手は、メジャーではショートストッパーとしては通用しなかった。

メジャーリーグのショートストッパーは、日本以上に重要視されている。まさにピッチャーに次ぐ花形ポジションと言えるだろう。中島選手が今後、世界で通用するショートストッパーになるためにも、まずは上述したクセを修正する必要がある。もし修正することができなければ、今年も併殺数90を数えることはないだろう。だが修正できれば、90以上を狙えると思う。そして二遊間コンビで90個の併殺を完成させることができれば、チーム防御率も向上するだろう。

優勝するためには3.50よりも良いチーム防御率が必要だと言われている。そのチーム防御率に大きく影響してくるのが併殺数だ。中島選手が今季、昨年以上の併殺を完成させることができれば、日本一奪回にまた一歩近づくことができるだろう。

2010年02月11日 02:37

一本足に目覚めた栗山巧選手、首位打者争いへ

強力なライオンズ打線で2番センターを担う栗山巧選手は、今キャンプで一本足打法に挑戦している。元々一本足で打つことの多かった栗山選手だが、調子が落ちてくるとミートを重視してすり足打法に変えることもあった。だが今季は本格的に、一本足打法に取り組んで行く姿勢らしい。

この取り組みに関しては、筆者は賛成だ。元々栗山選手はミート力を持っているため、あえてすり足打法を採用する理由はない。筆者の理論で言わせてもらうと、一本足系打者と、すり足系打者というのはまるで先天的タイプが異なる。例えば一本足でバッティングを覚えたバッターが、ミートを重視するためにすり足打法に変えても、ミート力はほとんど上がらない。栗山選手もこの例に当てはまると思う。

バッティングのタイミングというのは、練習によってある程度のアジャストは可能だが、しかし先天的、本能的なタイミングを越えることはできない。一本足でバッティングを覚えてきた選手が、大人になってから突然すり足打法に変えても結果はなかなか出ない。むしろ自分自身の先天的能力を打ち消してしまうことで、さらにバッティングを壊してしまうことにも繋がる。

逆に、あえて一本足で打たせられていた子でも、すり足打法に変えることである日突然打てるようになることがある。これは、先天的なタイミングの取り方が一本足にあったということになる。

バッティングに最も大切なのはミートではない。タイミングだ。少なくとも筆者はそう考えている。なぜなら、ミート力というものは簡単に向上させることができるからだ。アマチュア選手であってもティーバッティングや、バッティングセンター通いを続ければミート力は必ずアップする。ミート力とは動体視力×バットコントロールということになるのだが、この2つは練習をすることによって必ず上達する。

だがタイミングに関してはそうはいかない。タイミングの取り方は、普通のティーバッティングやバッティングセンター通いだけではどうにもならない。例えばティーバッティングであれば、ティーアップの体感スピードを、実際の投球と同じスピードに調整するなどの工夫が必要だ。そうしなければピッチャーに対してのタイミングを練習することはできない。よくトサーが座ってトスを上げているシーンを見かけるが、この練習ではミート力しか養われない。

ここで栗山選手に話を戻すと、栗山選手は間違いなく一本足打法に先天的なタイミングを持っている選手だ。昨年は打率が上がらない時にすり足気味の打ち方にシフトしていたが(カウントが追い込まれた時は特に)、筆者はこれこそが不調を長引かせた原因だったと考えている。これは先天的に左利きだった子に、右手で箸やはさみを持たせているようなものだ。バッティングコーチは去年の早い時期にこのことにしっかりと気付き、栗山選手に本来の打撃を取り戻させなければならなかった。

昨年は開幕から21打数ノーヒットという不振に陥ったが、これを気にする必要はまったくなかった。2008年は最多安打を獲得しているバッターなのだから、研究されて当然だし、研究されればそれだけ打てなくなる。だからこそ打てなかったことなど気にする必要はなかった。それよりもむしろ、研究された分を研究仕返せばよかったのだ。苦手なコースばかり衝かれるのなら、苦手なコースに投げさせないバッティングをすればよかった。

プロ野球選手ともなれば、苦手なコースをヒットにできないまでも、ファールにすることはできる。だからこそ1試合における3~4打席の間、10球でも20球でもファールを打ち続け、ピッチャーに別のコースで勝負をさせればいいのだ。バッターは10回中3回ヒットを打てれば合格点だ。ということは、30%という確率で得意なコースにボールを投げさせることができればいいわけだ。

大不振に陥った昨年、バッティングコーチ2人が栗山選手にどのようなアドバイスを送ったのかは分からない。だが今季はオフの間から栗山選手は独自に考え、一本足打法への固定に至ったようだ。ミート力は十分に持っている栗山選手だ。となると残す課題はタイミング。筆者が見た限り一本足に先天的タイミングを持っている栗山選手は、今季タイミングを自在に操れるようになることで、3割は確実に超えてくるだろう。そして前半戦の早い時期に一本足打法を仕上げることができれば、後半戦は中島選手と共に首位打者争いを繰り広げているかもしれない。今年のライオンズは3・4番だけではなく、2・3番にも注目だ。


余談ではあるが王貞治選手のお話。彼は中学か高校までは右打ちだった。しかし練習中に通りすがったおじさんから「君は左で打つべきだ」とアドバイスをもらったことで、左で打つようになった。すると打球は面白いように飛んで行くようになり、生涯868本塁打を打つ打者へと成長していった。もし通りすがりのおじさんの一言がなければ、王選手はひょっとしたらプロ野球選手にすらなっていなかったかもしれない。

若き日の王選手のように、先天的な能力が開花すると本当に素晴らしい選手になることがある。これからの時代の野球指導者は、子どもたちの先天性を見極められるだけの眼力も必要とされるだろう。指導者個人の知識を選手に押し付ける時代は、もうとっくに終わっているのだ。

2010年02月09日 14:27

昨年は守護神不在も、今季は候補4人+1人

2010年、今年のライオンズの守護神は誰が努めるのだろうか?候補としてはまだキャンプには合流していないが、左肩を手術したグラマン投手、ロッテから移籍してきたシコースキー投手、16年振りの西武復帰となった工藤投手、昨年阪神から移籍し活躍した藤田太陽投手らがいる。これだけズラリと名前を並べると、役者は揃ったという強い印象さえ受ける。ブルペンに関しては、去年とはまるで違う様相となりそうだ。

小野寺投手の名前を挙げなかったのは、単純にB班だからだ。本来であれば小野寺投手が不動の守護神となっていなければならない。しかしこの3年、まったく不甲斐ない成績が続いてしまっている。小野寺投手はよくメンタルの弱さを指摘されるが、まさにその通りだ。しかし小野寺投手の場合、メンタルトレーニングでそれを解決することはできないだろう。小野寺投手の場合1軍のマウンドに立ち、しびれる場面を三者凡退で抑える投球を続けることでしか、メンタル面の強化を図ることはできないと筆者は考えている。そしてそのためには小野寺投手自身が、何かを新しく変えていく必要がある。

さて、話をクローサー争いに戻すと、今キャンプでは今のところ藤田投手が頑張っているようだ。「リリーフを任されている限り、クローサーを目指す」という力強い言葉も残しているだけに、移籍に活路を見出した男の今年にかける意気込みは相当強いように感じられる。7日のフリーバッティングでもブラウン選手後藤選手に計45球を投げ、ヒット性の当たりは僅かに4本だけだった。この時期はまだ打者よりも投手の仕上がりの方が早いとは言え、45球中4本というのは上々の出来だったと思う。渡辺監督にしても、藤田投手のクローサー起用に関しては常に含みを持たせている。

そして工藤投手だが、工藤投手のクローサー起用も十分にありうるだろう。第2クールの後半からはブルペン入りも予定していて、ボール次第では十分にクローサーを任せられるだけの能力は持っている。何よりも注目なのは、プロ入りして以来初めてリリーバーとしてオフを調整してきたという点だ。昨年の工藤投手は横浜で、先発ピッチャーとしてリリーフを任されていた。まさに去年の西口投手のような使われた方だ。そのためにリリーフ転向直後はなかなか思うようなピッチングができなかった。それでもリリーフとしての調整を掴み始めると、徐々に抑えられる試合の方が増え、戦力外通告をされた後はすべての登板で失点0に抑えている。ボールの切れ、投球術は今もなお一線級の工藤投手だ。クローサーになりうる可能性は低くはないだろう。

グラマン投手に関してはまだまだ未知数としか言いようがない。A班入りとなっているとは言え、まだキャンプには合流をしていないし、現時点でどれだけ回復しているのかも分からない。ただ予想よりも速いペースで回復しているのは確かなようなので、もう10日前後アメリカの暖かい土地で調整を続け、焦らずに肩を作ってくれれば良いと思う。肩さえ万全であれば抑えとしての能力は証明済みだ。だからこそ今は焦ることなく、まだ寒さの残る南郷よりも、暖かい土地での調整を続けてもらいたいと思う。

最後にシコースキー投手だが、彼がクローサーになるとしたら繋ぎとしてのクローサーになるだろう。つまり正規のクローサーが不調に陥ったり、怪我をした場合だ。いくらでも連投の利くシコースキー投手は、やはり出来ることならばセットアッパーとして起用したいのが監督の正直なところだと思う。クローサーはビハインドの場面ではあまり使いたくはないが、セットアッパーであればビハインドでも登板させ、味方の逆転を待つこともできる。だからこそチーム1のタフネス右腕はセットアッパーとしての起用がベストなのだ。もちろんクローサーとしての資質も高いのだが、しかし監督としてはセットアッパーとして起用したいはずだ。

昨年は1年間クローサーを失ったままシーズンを終えてしまったライオンズだったが、今年はなんとクローサー候補が4人もA班にいる。しかも実績十分な投手や、意気込み十分な新鋭ばかりが4人。今の段階では、やはりB班にいる小野寺投手がここに食い込む余地はないだろう。小野寺投手がクローサー争いに食い込むためには、まずは自分自身をB班に入れた監督に対する反骨精神が必要不可欠だと思う。そして監督自身もそれを期待し、小野寺投手をB班に入れることで無言の檄を飛ばしたのだと思う。もし小野寺投手が今後A班に加わり、クローサーの座を奪い取ることができれば、小野寺投手はきっと本物のクローサーになることができるだろう。だがそのためにも小野寺投手は何かを変えることで、まずはA班に加わらなければならない。それだけ今季役者の揃ったブルペン陣に小野寺投手が主戦投手として加わることは、決して簡単なことではないと思う。

2010年02月08日 15:45

西口・石井一両投手を覚醒させた工藤公康投手

16年ぶりに復帰した工藤公康投手だが、あらゆるところで“工藤効果”が現われている。まず一番変わったのはベテラン先発陣だろう。西口文也投手石井一久投手だ。例年であれば西口投手はB班からスタートし、徐々にペースを上げていくという調整方法を取っていたのだが、今年は最初からA班に加わりハイペースで調整を行っている。

西口・石井両投手は、球界の常識で考えれば大ベテランの部類に入る。活躍云々という以前に、まずこの2人の年齢までプロ野球選手でいられるということが脅威だ。近年は選手寿命が延びているとは言え、それでも平均すると多くの選手は25~26歳で現役を退いている。

年齢のことだけを考えたなら、西口・石井両投手はもっとスロー調整でも良いところだ。しかし今年はそうは行かない。なぜなら大ベテランである2人よりもさらに10歳も年上の工藤投手が加わったからだ。工藤投手は今年の5月5日には47歳となる。これだけの選手がA班のトレーニングにしっかりついて行っているのだ。となると工藤投手よりも10歳も年下の西口・石井両投手が頑張らないわけには行かない。

西口投手は、自主トレは例年通り沖縄で行っていた。だがその内容は例年よりもずっとハイペース調整だったようで、キャンプインすると4日連続でブルペン入りを果たした。まだ全力投球とは行かないまでも、爪を割りながら初日から4日連続でブルペン入りするということは、今までのベテランとなった西口投手にはほとんど経験がなかったはずだ。

西口投手は決して大きなことは言わない。具体的な目標をコメントすることもほとんどない。しかし今年は確かな口調で「先発にこだわりたい」と宣言した。昨年は不調に陥りリリーフに降格させられた西口投手だったが、その起用法を受け入れたとは言え、やはり悔しさは尋常ではなかったのだろう。しかも2ケタ勝利からも、17勝を挙げた2005年以来遠ざかっている。先発投手として、今年にかける思いはひとしおなのだと思う。

そして石井一久投手からも、今年は若干ハイペースなのかな、という印象を受けている。ブルペンでも強い投球をし始めているようだし、やはり実績十分の投手としては、高卒ルーキー左腕雄星投手にローテーションの枠を奪われたくはないはずだ。

それにしても石井投手は相変わらず半そでである。もし東尾監督であったなら、間違いなく注意されるところだろう。東尾監督は利き腕の怪我を防ぐためにも、投手が半そでを着ることは夏でも許さなかった。

西口投手、石井投手ともに非常にレベルの高い投手だ。石井投手は不真面目に見られることも多々あるが、しかし野球に関しては想像以上に真面目に取り組んでいる。グラウンド上で野手がつまらないミスをすると、マウンド上でわざと不機嫌な顔をし、野手陣の気を引き締めるということも時々行っている。

西口投手に関しては「この人のために何とかしよう!」といつも野手陣に思われている。それだけ人望があるのだ。そして野手陣にそう思われていることは、西口投手自身も十分承知のはず。だからこそここ数年の不甲斐ないピッチングは本当に悔しかったはずだ。歳を重ねるたびに思い描く動きができなくなるもどかしさ。内転筋への不安。色々な要素があるとは思うが、しかし昨年の4勝という数字を考えると、西口投手自身そんな不安を口にすることはしないだろう。

西口投手にしろ石井投手にしろ、今年ダメなら引退という文字も浮かんでくる時期だと思う。ファンとしては来年も再来年も2人のピッチングを見ていたいが、しかしそのためにはまずは今年、周りを納得させられるだけのピッチングをしなくてはならない。

こうして考えていくと、やはり工藤投手の加入は大きかった。この2人の大ベテランの気持ちを、工藤投手はただいるだけで引き締めてくれている。練習に対するモチベーションをキープすることは非常に難しい。それは高い技術を持っているベテランほど難しくなる。若い頃は「もっと上手くなりたい」という気持ちがモチベーションを自然と高めてくれるが、しかしベテランになると手にした技術をキープすることに終始してしまう。そうなってしまうと、やはりモチベーションはどうしても上がらなくなる。

だが工藤公康投手が加入したことで、2人のモチベーションは嫌でも上がることとなった。「上には上がいる」という言葉は、誰もが分かっていることだ。しかしこれを自分に置き換えて考えることはなかなか難しい。しかし工藤投手が加入したことで、2人はそれを目の前で体験することができた。自分たちよりもはるか上のレベルでプレーをしてきた更なる大ベテランが、目の前で自分たち以上に頑張っているのだ。これでモチベーションが上がらないという方がおかしい。

横浜を戦力外になった工藤投手の獲得は、ファンにとってもチームにとっても素晴らしい補強になったと思う。工藤投手は試合での戦力ということ以前に、選手の意識に対する戦力にもなってくれた。今年西口投手と石井投手が、昨年の成績に対してどのようなリベンジを果たしてくれるのか、ファンとしては非常に楽しみとなった。

2010年02月07日 03:02

江藤智選手の役割を受け継いだ平尾博嗣選手

今キャンプで、最も意気込みが高い選手の1人が打では平尾博嗣選手だと思う。自主トレは10日間サイパンで行い、かなり充実したトレーニングができたようだ。体調に関しても近年では最も良い状態だと言う。17年目となる今季、結果が残せなければクビになるという覚悟も強く持っているようだ。

昨オフ、江藤選手の引退の意味を最も強く感じたのは平尾選手だったと思う。2008年の日本一は渡辺監督もよく口にしていたように、江藤選手の支えがなければなし得ないものだった。チームが苦しい状態の時、江藤選手が下から支えてくれたからこそ、チームは最後まで沈まずに日本一を達成することができた。そして今年、その役目を担うのが自分自身であると平尾選手は強く認識していると思う。

阪神の今岡選手が戦力外にされた際、ライオンズも獲得を検討していた。しかし最終的に見送ったのは、やはり平尾選手への期待と配慮だったろう。平尾選手がしっかりと仕事をしてくれれば、あえて今岡選手を獲得する理由もない。球団としてはそういう期待も込めて、今岡選手の獲得を見送ったのだと思う。いや、もしかしたら渡辺監督がそういう考えを持っていたのかもしれない。渡辺監督にはそこまでの配慮ができる懐の広さがある。

平尾選手は守備も安定しているし、バッティングに関しても非常に勝負強い。監督としては平尾選手のようなユーティリティプレイヤーがいてくれると、本当に心強いだろう。しかし平尾選手の欠点は、ムラッ気があることだ。一度集中力が途切れてしまうと、なかなかそれを戻してくることができない。そのためにファームに落とされたこともこれまでに少なくはなかった。

だが今年はさすがに今までと同じにはならないだろう。江藤選手が抜け、野手では完全に最年長となった。最年長選手として、中途半端な姿を後輩たちに見せるわけには行かない。現にキャンプでも、誰よりも大きな声を出してチームを盛り立てているようだ。

縁の下からチームを支えた江藤選手に対し、平尾選手は後輩たちの尻を叩きながら鼓舞するタイプだ。2人のタイプはまったく異なるが、しかし役割は同じだ。1年間戦って行く中で、どんなに強いチームであっても必ず苦しむ時期がやってくる。そんな時支えになってくれるのが経験豊富なベテラン選手なのだ。

ライオンズの黄金時代前半ではその役目を東尾修投手らが努め、後半においては辻初彦選手らが努めていた(キャプテンとは別の役割として)。チームが苦しくなった時、ベテランの些細な一言がチームを救ってくれる。97・98年とパ・リーグを連覇した際、日本一になれなかったのはそれができるベテラン選手が不在だったためだと筆者は考えている。そして97年に関して言えば本来なら、渡辺久信投手がその役割を担わなければならなかった。

平尾選手に100試合以上の出場を監督は求めていないはずだ。平尾選手には年間50~60試合出場してもらい、出場した時にはその言動によってチームに活力を注入してもらいたい、そう考えているはずだ。野手最年長の平尾選手が頑張っている姿を見て刺激を受けない若手選手などいない。平尾選手が誰よりも元気に頑張ることで、ライオンズはさらに元気なチームへと成長して行くはずだ。

そして2010年秋に渡辺監督はきっとこう言っているだろう。「今年の日本一は平尾がチームを支えてくれたおかげだ」と。

2010年02月06日 15:29

雄星投手が今現在抱えている投球に関する欠点

ライオンズ関連ニュースのほとんどが雄星投手の話題という中、やはりこのブログも雄星投手の話題がどうしても多くなってしまう。しかしこれだけ注目されている中、それでもしっかりと自分のプレーを追い求めることができている雄星投手は、やはり只者ではないのだろう。

春季キャンプも第1クールが終了し、いよいよ雄星投手の欠点も見え始めて来た。他球団のスコアラーや解説者たちは口を揃えて雄星投手を褒め上げるが、しかしその言葉に筆者はいつも疑問を感じてしまう。確かに雄星投手は素晴らしい資質を持っている。しかしこの段階ですでに実績を残しているピッチャーたちを越えているような評価はどうなのかと思ってしまう。しかしそんな中でもその言葉を筆者がとても信頼している野球人がいる。それは広岡達朗氏だ。

誰もが雄星投手を褒める中、広岡氏だけは手放しで褒めるようなことはしなかった。雄星投手の資質を認めながらも、現段階での弱点をしっかりと見極めているようで、教え子でもある渡辺監督にも早くそれに気付くようにとのコメントを発信していた。

広岡氏と言えば、ライオンズの黄金時代を作り上げた監督だ。工藤投手にしても未だに当時の広岡監督の指導には感謝をしている。筆者個人としても、非常に尊敬している野球人の1人だ。その広岡氏がどのポイントにおいて雄星投手の弱点や欠点を指摘しているのかは分からない。だが少なくとも現段階においては、雄星投手は先発ローテーション入りできるレベルではないと見ているようだ。

そこでここでは、筆者がこれまでに集めた情報、映像などから雄星投手の弱点を見直してみたいと思う。

まず最初に言えるのは、やはり投球時の腕の角度だろう。これに関しては夏の甲子園からずっと思い続けていたのだが、雄星投手はじゃっかん腕を上げ過ぎる傾向にある。そもそも人体における骨格というものは、腕を肩よりも高く上げることは想定されていない。腕を上げるためには肩甲骨を動かす必要がある。四十肩、五十肩と言われる現象はまさに、肩甲骨周りの使用頻度が落ちたために筋肉や骨格が凝り固まり、腕を肩よりも高く上げられなくなる状態だと筆者は考えている。

20歳未満であればまだまだ筋肉や骨の柔軟性は十分にキープすることはできる。しかし25歳にもなりそれがなくなってくれば、今のモーションでは必ず不調に苦しむ時期が出てくるだろう。そして現段階においても、雄星投手のボールは日によって球質が大きく変わってしまう。つまりボールそのものに安定感がないのだ。調子が良い日は勝てるが、調子が悪い日は勝てない。これでは潮崎コーチの言う通り、プロとしては通用しないだろう。

腕の角度に関しては、細川捕手も手取り足取り雄星投手にアドバイスを送ったようだ。キャッチャーというのは、ピッチャーが自分では感じ取れていない自分自身のことにも気付いてくれる。細川捕手はこの時、ストライクを取りに行く時に左肩が下がるクセを指摘したようだ。高校・大学ではこれでも通用したとしても、プロではやはり通用しないのだろう。

潮崎コーチは雄星投手のスライダーを見てうなった。しかしさすがはコーチだけのことはあり、うなるだけでは事は済まさない。スライダーを投げた直後、スライダーの腕の角度でストレートを投げた時の威力は抜群だったようだ。だがスライダーの腕の角度で投げようと意識すると肘が下がってしまい、今度はストレートの球威が一気に落ちてしまう。これに関しては渡辺監督も気付いているようだ。

ボールの切れが最も良くなる腕の角度は、上腕長軸が脊柱(背骨)に対して直角になるポイントだ。これはオーバーハンドスローでもスリークォーターでもサイドでもアンダーでも共通する。だが雄星投手の場合はこの角度の安定感がまだない。どちらかと言えば上腕軸の角度が脊柱軸よりも上になってしまう。この状態では常に良いボールを投げることはできないだろう。小野寺投手が近年苦しんでいる理由もここにあると筆者は見ている。

この上腕軸と脊柱軸で良好な関係を保つためには、カッター(カットボール)を覚えるのが得策だと筆者は考える。良いピッチャーになればなるほど、どの球種を投げてもピッチングモーションは同一となる。そんな中でもカッターは、スライダーとストレートのちょうど中間に当たる球種だ。

ストレート、カッター、スライダーの投げ方の違いは、手首の角度とリリースの位置だけだ。あとはすべて同じであることが望ましい。具体的に違いを挙げると、リリースが最も早いのはスライダーで、遅いのがストレート。リリース時に、より深い角度で小指が打者方向を向くのがスライダーで、人差し指と中指が打者に正対するのがストレート。そしてそれぞれの中間点にあるのがカッターというわけだ。

野球に限らずどのようなスポーツでも同じだと思うが、やはり段階を踏んで変化を付ける練習は大切だと思う。雄星投手の場合はストレートとスライダーを交互に投げるだけではなく、その中間点にあるカッターを投げることでストレートとスライダーをそれぞれ交わらせるのがベストなのではないだろうか。

開幕までのあと1ヵ月半で、雄星投手が岸投手のカーブをマスターできるということはないだろう。投げられるようになるかもしれないが、しかしマスターできるかと聞かれれば、それは難しいと思う。あの有名な変化球の使い手東尾修投手を以ってしても、1つの変化球をマスターするまでには2~3年かかったと言う。

だからこそ雄星投手は焦る必要はないのだ。そもそも1年目から16勝を挙げて最多勝を獲得した松坂大輔投手の方がおかしいのだ。彼と雄星投手を比べてはいけない。19歳になる春の段階での2人には、大きな実力差がある。松坂投手が凄すぎただけの話なのだ。もちろん雄星投手もそのことは十分に理解していると思う。だから今はローテーションに入ろうなどとは考えず、まずは開幕1軍に残ることだけを考えれば良いと思う。高卒ルーキーがそれを達成できるだけでも偉業なのだ。

2010年02月05日 14:39

中島裕之選手が守備に9割を割く本当の理由

今キャンプの中島選手は本気かもしれない。もちろん今までもずっと本気だったのだが、今年はさらに輪をかけて本気なのだと感じる。中島選手はコーチ陣に対し、キャンプでは8~9割を守備練習に当てたいと直訴したそうだ。強力打線の3番を担う中島選手であれば、普通であれば半分以上の時間を打撃練習に割きたいはず。しかし中島選手は半分どころか、9割の時間を守備練習に使おうとしている。アーリーワークでも守備練習が中心だし、連日1時間の特守も受けているようだ。

打撃練習の時間を減らしてしまえば、目標のトリプルスリー達成は難しいのでは?と思いたくなるところだが、しかしその心配はないだろう。もちろんトリプルスリーという目標は並大抵の努力では掴み得ない。ある意味ホームラン王を獲得することよりも難しいと言える。

ホームランとヒットというものは、似て非なるものだと筆者は考えている。人によってはホームランはヒットの延長であるとか、ホームランの打ちそこないがヒットだと言ったりするが、筆者個人としてはこの2つは別物だと考えている。

イチロー選手が昨年のWBCで放った、感動のセンター前ヒットを覚えている方は多いと思う。筆者にとっては、あれこそが“ヒット”なのだ。つまり打球をわざと詰まらせることで、バットとボールの接触時間を長くし、その分ボールの行方をより詳細にコントロールする。これが筆者にとっての、ヒットを狙った上でのヒットだ。しかしたまに例外的な選手がいて、和田一浩選手はこの打ち方でホームランを打つことができる。2004年の日本シリーズで和田選手が放った一発は、まさにこの打ち方によるレフトポール際へのホームランだった。そして典型的な短距離ヒッターで言えば、佐藤友亮選手がこの打ち方を採用している。

一方筆者が考えるホームランとは、単純に野手の手が絶対に届かない高さに打つボールのことだ。2m少々の高さでは、ジャンプをすれば野手は打球に届いてしまう。しかし3m以上の高さで打球を進行させれば、野手はジャンプしてもまずボールには届かない。

もっと細かく言うと、オーバーハンドスロー投手の一般的な140kmのストレートを打った場合、バットを水平状態から10℃の角度でアッパースウィングした時が、打球が最も遠くまで飛んで行く。ここ数年プロ野球でも主流になりつつあるが、軸足に体重を残したまま、遠心力を最大に使ってヒッティングする打ち方だ。ライオンズではG.G.佐藤選手が典型的な選手で、昨年に限れば片岡選手もこの打ち方を採用していた。

ヒットは確かにホームランに繋がるし、ホームランも確かにヒットになる。しかし筆者に言わせれば、厳密にはヒットとホームランとではまったく別物なのだ。

わざと詰まらせて打球を運ぶ打ち方なら、打率は劇的に飛躍するだろう。それこそイチロー選手や、青木宣親選手のように。しかしこの打ち方は、ミートポイントで肘が畳まれてしまう。つまりバットを柔らかく使うことはできるのだが、パワーを発揮することはできない。

逆に軸足に体重を残して打つと、ポイントはややピッチャーよりになり、両腕はきれいな二等辺三角形になる。この瞬間が、最もバットスウィングが速まる瞬間で、打球の勢いや飛距離はアップする。だがポイントがこの時点になってしまうとバットコントロールはもう不可能となり、確実性は低下してしまう。これらの理由から言って、ヒット数とホームラン数を共に増やすことは非常に難しいのだ。

さて、ここで話を中島選手の守備に戻したいと思う。恐らく中島選手は、トリプルスリーを達成するために守備練習をしているのだと筆者は見ている。普通に考えれば、トリプルスリーを達成するためには、朝から晩までバットを振り続ける必要があると考えるだろう。だが筆者の野球理論においては、これは必ずしも正しいとは言えない。

と言うのは、打撃練習というのは基本的には技術を向上させるための練習となる。少し分かりにくいのだが、技術を向上させる練習と、体力を向上させる練習とでは違ってくるのだ。打撃練習は、もちろん体力も向上されるが、それ以上に技術向上が最大の目的となる。だが守備練習は、守備の技術向上はもちろんのこと、打撃練習とは比較できないほどの体力向上を狙うことができる。

1時間特守を受けるということは、それだけ長い時間守備の姿勢をとっているということになる。野球経験者であればよく分かると思うが、ボールを待つ時の重心を低くする姿勢は、長時間続けるとかなりきつい。中島選手はそのきつい練習を連日続けているというわけなのだ。

これだけ守備に時間を割けば、下半身を主とした体力強化は我々の想像以上となるだろう。そしてこれは、バッティングの安定感に直結する。下半身がしっかりしてくれば、800~900gのバットを振っても身体がぶれなくなる。身体がぶれなければ当然バットスウィングにもぶれは生じず、ジャストミートできる確率をアップさせられる。

これはあくまでも筆者の予測でしかないのだが、恐らく中島選手は今季、短打狙いのバッティングはしないのではないだろうか?ツーベースの延長がホームランで、ツーベースの打ちそこないがシングルヒット、そういう考えで挑んでいるような気がしてならない。そして中距離ヒッターとして日本代表レベルの実力を手にした今、中島選手の自信は確信に変わっているのだろう。だからこそ打力低下に対する恐怖感もなく守備に9割の時間を使えるのだと思う。

そして技術に対ししっかりとした自信があるからこそ、その技術をさらに向上させるための体力を欲しがったのだろう。守備練習であれば守備の技術向上も、体力向上も図れてまさに一石二鳥だ。

近年のプロ野球は若干メジャー化している傾向があり、技術練習に多くの時間を使いたがる。しかし欧米人に比べて身体が小さい日本人では、その取り組み方では絶対的な技術を獲得することはできない。日本人の場合、絶対的な体力があることを前提に技術練習をしていかなければ、技術は思うようには伸びない。だからこそ過去の偉大な日本人選手たちは、人の2倍も3倍も走りこみをしていたのだ。中島選手は恐らく、そのことにハッキリと気付いたのだろう。今キャンプで9割を守備練習に当てるという宣言は、決して守備力向上だけが目的ではないと思う。

これだけ高い意識を持って練習に取り組める中島選手は、今年は本当にトリプルスリーを達成できるかもしれない。ヒットのメインをシングルヒットではなく、ツーベースヒットにシフトしていければ、中島選手の技術があればトリプルスリーは決して夢の数字ではない。中島選手にはぜひ2002年の松井稼頭央選手以来のトリプルスリーを達成してもらいたいと思う。

2010年02月04日 14:22

雄星投手の肩がなかなか温まらない理由

どうやら昨日の雄星投手散々だったようだ。投球練習をすればボールが行かず、潮崎コーチに「ペラペラ」と評されるし、投内連携をすれば小刻みすぎるステップを涌井投手に笑われる始末。キャンプ2日目とは言え、まだまだプロの水には慣れてはいないようだ。当たり前と言えば、当たり前だが。

昨日は雄星投手の肩の出来が遅いということが話題になっていた。つまりピッチングができるまでの肩のウォームアップに時間がかかるということだ。どうやら雄星投手はピッチングができるまでに50~60球を要するらしい。同じように非常に遅い小野寺投手でも40球だと言うのに、50~60球というのは少し多すぎる。50~60球と言えば、試合なら4~5イニング投げる計算となる。

ではなぜこれほどまでに素晴らしい資質を持ちながら、雄星投手の肩は温まるまでに時間がかかるのだろうか。その答えは明確だ。小野寺投手と同じ理由なのだが、それは腕を縦に振り下ろす動作でボールを投げているためだ。いわゆる“真っ直ぐ投げ”と呼ばれるアームスウィング。

真っ直ぐ投げだとなぜ肩を作るのに時間がかかるかと言うと、真っ直ぐ投げというのは腕にある約40種類の筋肉を満遍なく使えないからだ。つまり、酷使しがちな部分の筋肉はすぐに温まるのだが、あまり使われていない部分の筋肉はなかなか温まらない。これが雄星投手の肩が温まるまでに時間がかかる理由だ。

例えばライオンズで言えば、西口投手岸投手のようにスパイラル投法を採用しているピッチャーは、肩が温まるのが非常に早い。恐らく「行け」と言われれば10~20球のウォームアップでピッチングができるのではないだろうか?また過去を振り返れば、鹿取義隆投手は4球あればピッチングができるようになり、現コーチの潮崎哲也投手も10球とはかからなかった。

一部の筋肉を酷使しがちな真っ直ぐ投げに対し、スパイラルリリースは約40種類の腕の筋肉を満遍なく使うことができる。そのため肩が温まる状態になるまで長い時間を要することはないし、一部の筋肉だけが酷使されることもない。

もっと分かりやすく解説すると真っ直ぐ投法の場合は、例えば腕の外側の筋肉に8の負荷がかかり、内側の筋肉に2の負荷しかかからないというケースもある。ということは、外側の筋肉はあっという間に温まるのだが、内側の筋肉はなかなか温まらない。そのために全体として肩が温まるまでに時間がかかってしまうわけだ。

逆にスパイラル投法の場合、内外共に5ずつの負荷がかかるため、バランスよく筋肉を温めることができる。もちろん厳密に説明をするとこんなに単純なことではないのだが、分かりやすく解説をさせてもらうと、つまりはこういうことになる。

肩を故障するほとんどのピッチャーは真っ直ぐ投げを採用している。肩を故障するということは、筋肉の中でより多くの負荷がかかっている個所を痛めてしまうということだ。雄星投手の場合は左肩後部の筋肉を痛めやすいのでは?と筆者は考えている。

雄星投手が現在採用しているピッチングモーションは、18歳だからこそ可能なものだ。今後20歳を過ぎ、25歳を過ぎ骨や関節が固くなっていけば、今のモーションではいつか必ずどこかを故障してしまうだろう。あの松坂大輔投手だって、これまでに数回の故障を重ねてきている。

雄星投手は高卒ルーキーとしてはずば抜けた実力・人間形成を手にしている。しかしプロ意識となると、さすがにまだまだ足りないようだ。キャンプ2日目にしても、ピッチング練習の直前までダッシュをしていた。ダッシュをして下半身が疲労した状態でブルペンに入れば、ボールが行かないのは当然の結果だと言える。これに関しては潮崎コーチも少し不満だったようだ。

とは言え、真面目すぎる性格が心配された雄星投手だったが、チームにはしっかり馴染めているようでファンとしては安心した。宿舎で同部屋の松下投手と野球ゲームのパワプロで息抜きしたり、バスの中では岸投手にボンバーマンを挑み全敗したり。また新選手会長の中島選手は自分の部屋に雄星投手を呼び、キャンプやプロのいろはをアドバイスしたそうだ。

投手育成に優れたチームというだけではなく、チーム内の雰囲気においても雄星投手は本当に良いチームに入ったと筆者は感じている。松坂大輔投手が99年に新加入した際は、デニー友利投手や石井貴投手らが教育係を任されていた。そして今、雄星投手のことを多くの先輩たちが気にかけてくれている。それもやはり雄星投手自身の人柄のせいだろう。この投手には将来、本当に良いピッチャーになってもらいたいとつくづく思わせられてしまう。

2010年02月03日 15:00

片岡易之選手+中村剛也選手=最強のランナー

野球というスポーツに限らず、どんなスポーツにおいても最も重要な動きは「走る」ということだ。競技中に走ることがないスポーツであっても、それは例外ではない。ましてや競技中に走るという動きが常時付いてくる野球であれば、それはなおさらだ。だからこそ走ることに対し高い意識を持っている選手は、活躍できる幅がどんどん広がって行く。

例えばライオンズで走ることに対し非常に高い意識を持っている選手の1人に、中村剛也選手の存在がある。パッと見の体型からすると意外と思われる方も少なくはないと思うが、しかし中村選手の走ることへの意識は非常に高い。

筆者から見た中村選手の走り方の印象は、動物的だということ。ほとんどの選手は、基本的には作られた走り方で走っている。例えば手足は走る方向に対し真っ直ぐ出して行くというのは、作られた走り方の一例だと言える。陸上競技の日本人スプリンターには比較的多い走り方なのではないだろうか。

そもそも速く走るためにはどうすれば良いのだろうか?その答えは非常に簡単なものなのだが、しかしアスリートでそれを意識して走っている人は意外にも多くはない。ライオンズにおいてそれをはっきり意識して行っているのは、筆者が知る限りでは工藤公康投手だけだと思う。工藤投手は運動生理学などをしっかり勉強された選手だけあって、身体のメカニズムに関しては本当に多くの専門知識を有している。

答えを言ってしまうと、速く走るためには両足が地面から浮いている時間を少なくすればいいのだ。つまり究極を言えば競歩だ。競歩のように、常にどちらかの足が接地している状態で走るのが、究極の走り方だと言える。ただ現実的にはそれは不可能に近いので、できる限りそこに近づけるという意識が重要になってくる。

速く走りたいと頑張っている選手が、少しでも強く足を後ろに蹴って進もうと頑張っている姿をたまに見かける。しかしこれは筋肉に頼る走り方であって、身体のメカニズムを効率的に使ってという走り方ではない。大切なことは、後ろに蹴った足をどれだけスピーディーに前へ戻せるかということなのだ。

そのため速く走るためには後ろ足を蹴りすぎてはいけない。股関節を自転車のペダルのようにクルクルと回す、この意識で足を動かすことが重要なのだ。こうすることで接地時間を多く稼ぐことができ、地面からの反力も多く得られる。進行方向に対し反力が増えれば、その分身体は前へ進みやすくなる。筆者が考えている限りでは、この走り方ができているのが中村選手なのだ。

逆にこの走り方に至っていないのが、片岡易之選手だ。片岡選手は一般的なスプリンターに近い動きでの走り方をしている。つまり端的に言うと、脚力に頼った走り方なのだ。もし片岡選手が今後、中村選手のような身体のメカニズムに則した走り方ができるようになれば、本当の意味での俊足となり、盗塁王のタイトルは今後も不動のものとなるだろう。

とは言え、身体のメカニズムに則し切れていないとしても、片岡選手の走塁技術は一級品だ。投手のモーションを盗む観察力や、走塁の動きに関する考え方も一流だと言える。特にベースの蹴り方だ。例えば2塁にいて、後続打者のヒットで一気にホームを狙う際、普通のランナーは3塁ベースの1塁側の角を蹴る。これが普通だし、基本としてプロ・アマ問わずこう教えられる。しかし片岡選手は違うのだ。

片岡選手の場合、3塁ベースの2塁側側面を蹴るのだ。なぜそうするのかと言うと、3塁ベースの角を蹴ってしまうと慣性モーメントを抑えにくくなり、走っている身体がファールエリアに流れてしまう。しかし角ではなく、側面を蹴ることでベースの壁を使って慣性モーメントを小さくし、瞬間的に方向転換をすることができる。つまり3塁ベースを蹴った瞬間から、3塁とホームベースの直線上に入れるというわけなのだ。

だがこのベースの蹴り方にはリスクも生じる。ベースの壁に足を衝突させるため、その衝撃は決して小さくはない。足首が硬かったり、捻挫しやすい体質の選手にとっては危険なベースランニングとなる。

動物的に走る中村選手と、理論的に走る片岡選手。この2人の走り方をミックスさせることができれば、きっと最強のランナーが誕生することになるだろう。

ライオンズはチームカラー自体が昔から走ることに対して意識の高いチームではあるが、それは今なお継承されている。渡辺監督も工藤投手に対し、「うちの選手は本当によく走るので、無理して付いて行かないでいいですからね」と話しているほどだ。だが工藤投手曰く広岡監督時代は、100mダッシュを100本走らされていたと言う。100mを100本ということは、10kmを全力疾走するということを意味する。このような昔のエピソードを耳にすると、なぜ黄金時代のライオンズがあれだけ最強だったかがよく分かる気がする。

2010年02月02日 15:19

好調投手陣を生かすのも殺すのも、捕手次第

2月1日と言えば、プロ野球選手にとっては正月ということになる。この日からいよいよ2010年の選手たちの戦いがスタートする。そして今年はそれぞれの選手が充実した自主トレ期間を過ごせたようで、投打ともに初日から勢いのある報告ばかりが飛び込んでくる。

まず最初に飛び込んできたのは石井一久投手の初日だった。普段は比較的スロースターターである石井投手だが、昨年が不甲斐ない数字だったという自覚があるだけに、今年は捕手を立たせたままながら、初日から71球の投げ込みを行った。そして昨年は全投球をセットから投げていたのを、今年はノーワインドアップに変えるというチャレンジも行っている。どうやら今年の石井投手には、チャレンジを行えるだけの余裕があるようだ。身体の状態も去年よりも良いらしい。

続いて飛び込んできたのは雄星投手の情報だった。今日はブルペン入りする予定はなかったらしいのだが、何と渡辺監督に自ら志願し、ブルペンで投げ込みを行ったようだ。まず捕手を立たせたまま72球を投げ、その後は捕手を座らせて86球。座らせた後はスライダーも織り交ぜ、合計158球。

雄星投手という大きな存在が加わったことで、今年のピッチングスタッフには例年以上の緊張感があるようだ。色々な情報をチェックしていても、明らかに調子の悪そうな投手の話はほとんど聞かれない。特に先発陣に関しては、キャンプインまでに限ればどの投手も万全であるようだ。

投手陣が良いとなってくると、やはりここで再度注目したいのは捕手だ。細川捕手銀仁朗捕手の正捕手争いは、例年になく激しくなるだろう。だが筆者は、現時点ではまだ細川捕手が正捕手だと考えている。

銀仁朗捕手は、昨年は大きく飛躍した。前半戦はリード面においてなかなか信頼してもらえなかったのが、後半戦になると少しずつ投手に信頼されるリードができるようになっていった。しかしそれでも、銀仁朗捕手の場合はまだリードにキーが存在してしまう。キーとは「この状況はこの球」という方程式を打者に与えてしまうことを言う。エース涌井秀章投手ほどになれば、そのキーを嗅ぎ付けてサインに首を振ることもする。しかし経験の浅い1軍半の投手にそこまで求めるのは酷というもの。

反面細川捕手の場合は、そのキーがほとんど存在しない。細川捕手は打者を本当に細かく観察しているため、例えば1球目を投手が投げる前は「最終的にはスライダーで仕留めよう」という逆算があったとしても、打者が少しでもスライダーを狙っている素振りを見せると、スライダーを一切投げさせずに、スライダーで勝負させるリードにシフトしていく。

「スライダーを投げずに、スライダーで勝負する」と書くと、非常に分かりにくいと思う。もう少し解説をすると、スライダーを決め球として使う配球をして、スライダーを狙っているであろう打者にあえてスライダーを待たせておく。そしてスライダーを投げるべくポイントで、意表をついたインハイのストレートなどで勝負させるということが、「スライダーを投げずに、スライダーで勝負する」ということになる。

現代野球において、プロ・アマ問わずスライダーを投げられないピッチャーはまず存在しない。スライダーじゃないにしても、スラーブを投げたり、球速が速めのカーブを投げたりする。つまりスライダー系のボールは、球種が多くない投手と対戦する際、変化球に対してはそのボールに合わせておけば問題ないと思える球種なのだ。

細川捕手の場合は、そのスライダーを巧く使って配球を組み立てることができる。しかし銀仁朗捕手はまだそのリードができない。もちろん年齢差・経験差を考えれば当然のことではあるが、経験の差が大きい分、やはり正捕手争いでは細川捕手が2~3歩リードしていると筆者は感じている。

いくら投手陣の状態が良いとは言え、それを生かすも殺すも鍵を握っているのはキャッチャーだ。キャッチャーがいかに心地よくピッチャーにボールを投げさせられるか、これが勝利の鍵を握っている。

勝てるピッチャーというのは、キャッチャーからボールが返球された時にはすでに次に投げたいボールを決めている。そしてすでにその握りでボールを持っていたり、その握りをしやすいようにボールをグラブに収めてからキャッチャーのサインを覗く。そのためもしキャッチャーが明らかにその球種とは違うサインを出してくると、ピッチャーのリズムが狂ってしまうことも少なくはない。

だからこそ投手陣の状態が良い今年は特に、キャッチャーの存在が大きくなってくるのだ。渡辺監督は基本的には細川捕手と銀仁朗捕手を競わせるだろうが、よほどのことがない限りは、細川捕手を主戦扱いとして使おうと考えているはずだ。去年の開幕前にも渡辺監督は、細川捕手を正捕手として起用することをしっかり明言している。明言したということは、それだけ実力差があるということで、その差は消して1~2年の経験だけで縮まるものではない。

銀仁朗捕手には将来性があるし、細川捕手の次の正捕手は、ほぼ間違いなく銀仁朗捕手となるだろう。だが今現在のキャッチャーとしての能力を見比べると、やはり細川捕手の方が上だと言える。だが銀仁朗捕手は本当に幸せだと思う。今や捕手として球界ナンバー1の評価を得ている細川捕手を、毎試合身近で見ることができるのだから。3年後4年後、銀仁朗捕手がどれだけ素晴らしい捕手に成長しているか、ファンとしては非常に楽しみである。

2010年02月01日 15:16

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