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涌井秀章投手を支えるのは球界一の走り込み量



プロ生活5年を終え、今シーズン6年目を迎える涌井秀章投手。実は筆者は、もう少し早い段階で涌井投手は肩・肘の調子を一度落とすのでは、と考えていた。その理由はひとえに投球時の腕のスウィングにある。プロ2年目以降だったろうか。現在の腕の振り方に変えたことで、25歳前後で一度どこかを故障するのではと筆者は考えていた。だがその心配は要らなかったのかもしれない。今現在肩・肘に故障の兆候はまったくなさそうだ。

なぜ涌井投手の腕の振りに問題があるかと言うと、それは腕を直線運動で振り下ろしているためだ。しかもそれに加え、リリースポイントが打者に非常に近い。リリースポイントを打者に近づけられればその分勝負では有利になるが、自らの肩へのダメージは決して小さくはない。具体的に言うと、右肩後部の筋肉群、もしくは背中を故障しやすくなる。

高校時代の涌井投手は、今とはまるで違うタイプのピッチャーだった。どちらかというと荒削りで、勢いでピッチングをする姿も見られた。だがプロに入るとそのピッチングは通用せず、1年目を1勝6敗という数字で終えた。この数字を境にし、涌井投手はピッチングのモデルチェンジを行ったのだった。

涌井投手は絶対的に頼れる変化球を持っていなかった。そして球速もプロとしてはビックリするような速さではない。そこで考えたのがリリースポイントの移動だった。よりバッターの近くでリリースすることで、バッターに球種を絞りにくくさせる。

リリースポイントをバッターに近づけるという作業は、多くのピッチャーが挑戦していることだ。だがこれに成功しているピッチャーとなると数えるほどしかいない。なぜリリースポイントをバッターに近づけることがこれほどまでに難しいのだろうか?その理由はやはり腕のスウィングにあった。

真っ直ぐ投げをしていようが、スパイラル投法をしていようが、ボールをリリースした後の腕は多かれ少なかれインスパイラルすることになる。右投手の場合であれば、投手から見て時計と反対回りに腕がスパイラルし、親指が下の状態で手のひらがバッターを向いていく。スパイラル投法の投手がこうなるのは当然なのだが、真っ直ぐ投げをしている投手であっても、多少のインスパイラルは必ず起る。

リリースポイントをバッター寄りに移動させるということは、単純にインスパイラルが始まった段階でリリースするということになる。これはつまりボールにシュート回転がかかってしまうということだ。ボールにシュート回転がかかってしまうと、右打者の外角では勝負できなくなってしまう。なぜなら外角に投げたはずのボールはシュート回転によって、すべてど真ん中に入ってきてしまうからだ。この現象が起るからこそ、多くのピッチャーがリリースポイントの移動に失敗している。

だが涌井投手は成功どころか、大成功をしている。しかも真っ直ぐ投げが原因の肩の疲労を感じたのも2008年の一時期だけだった。

ピッチャーが肩を壊す最大の要因は疲労だ。だがこれは肩の疲労という意味ではない。下半身の疲労だ。ボールというものはピッチャーだけに限らず、野手であっても下半身を主動として投げなければならない。だが下半身にスタミナがなくなってくると足で踏ん張れなくなり、どうしても上半身だけでボールを投げてしまう。するとそれまでは下半身がリードしてくれていた肩は、自らの筋力でもってスウィングしていく必要がある。腕(肩)の筋肉を使って腕(肩)をスウィングする、これこそが野球肩の最大の原因なのだ。

また真っ直ぐ投げの場合、スパイラル投法のように肩周りの筋肉がバランスよく使われることがない。外なら外、後ろなら後ろと、投球に対する負荷が一部の筋肉に集中してしまう。そのためスパイラル投法よりも肩・肘に問題を抱えるケースが多くなる。

だが涌井投手はそうはならない。年間200イニングを投げてもスタミナに不安を感じさせることがないのだ。その理由は涌井投手の走り込みの多さにある。涌井投手は西武で1番ではなく、球界で1番多く走っている選手だ。この走り込みの多さが強靭な下半身を生み出し、肩の負担を軽減させている。もし涌井投手が並の投手と同じくらいしか走っていなければ、とっくに肩を壊していただろう。

今年も開幕投手は涌井投手でほぼ決まりだと思う。本人は渡辺監督に言われるまでは「一候補として頑張るだけ」と言ってはいるが、しかしこの段階で涌井投手を開幕投手に指名したとしても、誰もが納得するだろう。松坂イズムを継承する投手としても、今年は沢村賞投手としても、並み居るバッターを見下ろすような堂々としたピッチングを披露してもらいたいと思う。そして松坂投手が果たせなかった20勝を目指して欲しいと思う。

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2010年02月27日 02:11