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小岩ジェッツ

160kmより、130kmの良球質の方が投手は勝てる

雄星投手の投げる155kmという球速がクローズアップされる中、球速がピッチャーにとってどういうものなのかを考えてみたいと思う。まず球速とは、あるに越したことはないが、なくても問題はない。150kmを投げられるからと言って良いピッチングができるわけではないし、130kmしか投げられなくても176勝を挙げた星野伸之というピッチャーもいた。

1999年のある日、当時の東尾監督は試合前に先発陣を外野に集めて車座を組んだ。その輪の中にはプロ1年目の松坂投手や、絶対的エースとして君臨していた西口文也投手、そして投手陣のリーダー格となっていた石井貴投手、先発に転向しても結果を出した潮崎哲也投手らがいた。

そんなそうそうたる顔ぶれの中心となった東尾監督はこう切り出した。「スピードは女と同じようなものだ。若い頃は女の外見ばかりを見てしまいがちだが、30歳を過ぎると外見よりも内面を見れるようになる。ストレートも同じで、若い頃は球速にばかり気を取られてしまうが、30歳を過ぎると、球速よりも、球質の大切さが理解できるようになる」。東尾監督は、当時投げるボールの球速が大きく注目されていたルーキー松坂投手を諭す意味で、先発陣にこのような話を聞かせていた。

東尾監督が「わかったか?」と聞くと、「わかりました」と答える松坂投手。そしてそこに「どこまでわかったんだよ」とちゃちゃを入れる石井貴投手。今の松坂大輔というメジャーを代表するピッチャーが存在するのも、筆者はこの時の東尾監督の教えがあったからこそだと考えている。

球速というものには2種類存在する。1つ目は初速。つまり投げた直後のスピードだ。そして2つ目は終速。これはバッターの手元まで来た時の球速。

そして球速の意義を高める球質という言葉だが、これは初速と終速のスピードが少ない状態のことを表す言葉となる。つまり初速と終速とのスピード差が少なければ球質が良いとされ、その差が大きければ球質が悪いとされる。

球質が悪くても、160kmを投げられるピッチャーなら話は別だ。例えば「生ける伝説」と呼ばれたロジャー・クレメンス投手は、初速と終速とに10km以上の差があった。160kmを計測したストレートであっても、終速は140km台まで落ちていることがほとんどだった。だが150km弱というスピード自体がとても速いため、球質が悪くてもメジャーで354勝を挙げている。

ライオンズで言えば小野寺投手大沼投手がスピードボールを投げるが、この2投手の球質は良くはない。逆に岸投手野上投手は剛速球は投げられないが、球質が非常に良い。ただ野上投手の場合1年目の昨季は、その球質の安定感がまちまちだったために、良い日と悪い日の差が大きかった。だがダルビッシュ投手に下半身の使い方をレクチャーされた今季は、野上投手はかなり高い確率で先発ローテーションに加わってくるだろう。

昨年の野上投手は、下半身に粘りがある日は良いボールが行くのだが、下半身に疲れが見える日はボールがまったく行かなかった。この不安定さでは1軍ではなかなか通用しない。だがダルビッシュ投手にピッチャーに必要な下半身の使い方、つまり体重移動やエッジング、軸の回旋のさせ方などを自主トレで教わった今季は、ボールの安定感はかなり増すはずだ。野球選手としては小柄な野上投手ではあるが、下半身でボールを投げ続けることさえできれば、2ケタ勝利を目指せるだけのピッチャーになれると思う。

では球質の良いストレートを投げるためにはどうすればいいのか?これは言葉で説明するのはとても簡単なのだが、実際に取り入れるのは非常に難しい。簡単に言えば、下半身(主に骨盤)で上半身をコントロールし、腕・肩周りにある約40種類の筋肉群を満遍なく使えれば球質は向上する。さらにテイクバックで深く肩甲骨を使うことでアクセラレーションの距離を増やしてあげられれば、球質だけではなく球速もアップする。ライオンズでこれが完璧にできているのは工藤投手・西口投手・岸投手の3人だけだろう。

ピッチャーにとって大切なのは、150kmのボールを投げることではない。150kmのボールが投げられるからと言って、バッターを抑えることはなかなかできない。初速で150kmを投げられたとしても、終速で140km未満になっていればそれはただの棒球でしかなくなり、プロのバッターであればいとも簡単に打ち返してくるだろう。だからこそ大切なのは球速ではなく、球質なのだ。

雄星投手に関しても160kmを目指すのではなく、とにかく球質の向上を目指してもらいたい。そうすれば自ずと球速は上がり、少し力を抜いたストレートでも空振りを奪えるようになるはずだ。

星野伸之投手と対戦したことのあるバッターは口々にこう言う。「150km投げるピッチャーのボールよりも、130kmそこそこの星野さんのストレートの方がずっと速く感じる」と。これこそが投球術を含め、球質が良い好例だと言える。そして速球派の投手に対し、しきりにこのことを教えようとしたのが東尾監督だった。

スピードが出ている状態=球質の良さではない。スピードが乗っている状態=良い球質、ということになる。小野寺投手が今後クローサーとして復活するためには、150kmのボールを捨ててでも球質を向上させるべきだろう。特にこれから30歳を越えていけば、球速は年々落ちて行く。そうなった時、今の球質のままであれば小野寺投手はあと2~3年でユニフォームを脱ぐことになるだろう。

そうならないためにも、小野寺投手は球速から球質へのシフトチェンジが必要になってくると思う。小野寺投手だけに限らず、このシフトチェンジができないピッチャーは30歳を境に急速に結果の残せなくなって行く。逆にシフトチェンジに成功したり、元々球質にこだわっているピッチャーは、東尾投手や工藤投手のように20年以上第一線で投げ続けることができる。

現在春季キャンプをB班として送っている小野寺投手ではあるが、シフトチェンジするにはまだまだ遅くはない。こだわりを球速から球質に変え、あと10年西武ドームのマウンドで投げられるピッチャーになっていって欲しいと思う。

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2010年02月15日 20:48 




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