中島裕之選手が名ショートと呼ばれるためには
今キャンプ、毎日1時間の特守を繰り返す中島裕之選手。レギュラーを獲得した2004年以降、この6年でショートストッパーとしてどれだけ腕を上げたのだろうか?評論家や他球団の名ショートの中には、まだまだ中島選手を「巧い」と言う人は少ない。ファンとしてこの6年間の1軍でのプレーを見ている限りは、中島選手は目を見張る成長を遂げていると思う。だがそれでもプロ中のプロたちからの評価が低いのはなぜなのだろうか?中島選手はあとどこを修正すれば名ショートストッパーになれるのだろうか?中島選手がショートに挑戦し出したのはプロに入ってからのことだった。松井稼頭央選手がFAによるメジャー移籍が有力視され始めた頃、中島選手は初めてショートというポジションに就くようになった。それは高卒1年目の2001年のことだった。ショートストップという、野球の中で最も難しいとされるポジションを19歳で初めて取り組むようになり、この9年でここまで上達したことは評価に値すると思う。野球というスポーツは不思議なもので、ショートストッパーに統率力がないチームはなかなか勝てない。
基本的に中島選手は打の印象の方が強い。トリプルスリーに最も近い選手だけあってそれは当然なのだが、中島選手本人としては、守備にも非常に高い意識を持っている。そしてその意識、力が認められ、2009年のWBCでは2番ショートに抜擢され、ジャパンのV2に大きく貢献した。これだけを見ると、中島選手は日本一のショートストッパーに成長したと言っていいだろう。だがそれでもヤクルトの名手・宮本選手を始めとし、過去を含め球界の名ショートストッパーたちは中島選手は「ショートの選手ではない」と口にする。
確かに宮本選手や井端選手らに比べると、中島選手の守備はまだまだ粗い。送球の安定感もまだまだだし、イージーなミスをすることもたまにはある。だがそれ以上に中島選手がなかなか名ショートストップと呼ばれない理由がある。それは併殺完成の数だ。ここ数年で併殺数が伸びてきているとは言え、本当に併殺数が多いと言えたのは2009年の89個だ。しかしそれでも90台には及ばなかった。さかのぼって行くと08年が79個、07年が73個、06年が44個、05年が45個、04年が73個となっている。ちなみに井端選手は昨年は92個の併殺を完成させていて、自己最高は97個となっている。この数字の差こそが中島選手が名ショートと呼ばれない最大の理由だと筆者は考えている。
ではどうして中島選手の併殺数は少なかったのだろうか?その理由は、中島選手の動きの中にあるクセを他球団が掴んでいるためだ。そのクセとは4-6-3のダブルプレー時、中島選手はセカンドからの送球を受けてファーストに投げる際、身体が外野側に流れてしまう。このことに他球団はすでに気付いていて、利用してきている。
良いショートはこのプレーの際、1塁ベースと2塁ベースを直線で結んだ線上、つまりランナーが走ってくる線上でボールをファーストに投げることができる。これができるとランナーは送球が当たるのを恐がり、2塁ベース上のショートに対し激しいチャージはかけてこない。だが中島選手のように外野側に身体を流して送球する選手に対しては、ボールが自分に当たる心配がないため猛チャージをかけてくる。猛チャージをかけられると送球もしにくくなり、悪送球にも繋がってしまう。
中島選手が今後、ショートストッパーとして一皮剥けるためには、ランナーが恐がるようなプレーをしなければならない。ピッチャーで例えるのなら、いかにして内角を攻められるかということになる。中島選手の場合は性格が優し過ぎるため、ひょっとしたら「送球をランナーに当ててはいけない」という無意識下の意識が働いてしまっているのかもしれない。だがこのクセを直せない限りは、中島選手が名手たちに認められることはないだろう。
中島選手は将来的にはメジャー移籍を視野に入れている。メジャーリーグのチャージは日本人選手の比ではない。ショートストッパーがベース上にいることなどお構いなしにチャージをかけてくる。だからこそデレク・ジーター選手のように、ジャンピングスローやスーパーマンスローができなくてはならない。逆を言えば、それができなかったからこそ松井稼頭央選手は、メジャーではショートストッパーとしては通用しなかった。
メジャーリーグのショートストッパーは、日本以上に重要視されている。まさにピッチャーに次ぐ花形ポジションと言えるだろう。中島選手が今後、世界で通用するショートストッパーになるためにも、まずは上述したクセを修正する必要がある。もし修正することができなければ、今年も併殺数90を数えることはないだろう。だが修正できれば、90以上を狙えると思う。そして二遊間コンビで90個の併殺を完成させることができれば、チーム防御率も向上するだろう。
優勝するためには3.50よりも良いチーム防御率が必要だと言われている。そのチーム防御率に大きく影響してくるのが併殺数だ。中島選手が今季、昨年以上の併殺を完成させることができれば、日本一奪回にまた一歩近づくことができるだろう。

2010年02月11日 02:37

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