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小岩ジェッツ

中島裕之選手が守備に9割を割く本当の理由

今キャンプの中島選手は本気かもしれない。もちろん今までもずっと本気だったのだが、今年はさらに輪をかけて本気なのだと感じる。中島選手はコーチ陣に対し、キャンプでは8~9割を守備練習に当てたいと直訴したそうだ。強力打線の3番を担う中島選手であれば、普通であれば半分以上の時間を打撃練習に割きたいはず。しかし中島選手は半分どころか、9割の時間を守備練習に使おうとしている。アーリーワークでも守備練習が中心だし、連日1時間の特守も受けているようだ。

打撃練習の時間を減らしてしまえば、目標のトリプルスリー達成は難しいのでは?と思いたくなるところだが、しかしその心配はないだろう。もちろんトリプルスリーという目標は並大抵の努力では掴み得ない。ある意味ホームラン王を獲得することよりも難しいと言える。

ホームランとヒットというものは、似て非なるものだと筆者は考えている。人によってはホームランはヒットの延長であるとか、ホームランの打ちそこないがヒットだと言ったりするが、筆者個人としてはこの2つは別物だと考えている。

イチロー選手が昨年のWBCで放った、感動のセンター前ヒットを覚えている方は多いと思う。筆者にとっては、あれこそが“ヒット”なのだ。つまり打球をわざと詰まらせることで、バットとボールの接触時間を長くし、その分ボールの行方をより詳細にコントロールする。これが筆者にとっての、ヒットを狙った上でのヒットだ。しかしたまに例外的な選手がいて、和田一浩選手はこの打ち方でホームランを打つことができる。2004年の日本シリーズで和田選手が放った一発は、まさにこの打ち方によるレフトポール際へのホームランだった。そして典型的な短距離ヒッターで言えば、佐藤友亮選手がこの打ち方を採用している。

一方筆者が考えるホームランとは、単純に野手の手が絶対に届かない高さに打つボールのことだ。2m少々の高さでは、ジャンプをすれば野手は打球に届いてしまう。しかし3m以上の高さで打球を進行させれば、野手はジャンプしてもまずボールには届かない。

もっと細かく言うと、オーバーハンドスロー投手の一般的な140kmのストレートを打った場合、バットを水平状態から10℃の角度でアッパースウィングした時が、打球が最も遠くまで飛んで行く。ここ数年プロ野球でも主流になりつつあるが、軸足に体重を残したまま、遠心力を最大に使ってヒッティングする打ち方だ。ライオンズではG.G.佐藤選手が典型的な選手で、昨年に限れば片岡選手もこの打ち方を採用していた。

ヒットは確かにホームランに繋がるし、ホームランも確かにヒットになる。しかし筆者に言わせれば、厳密にはヒットとホームランとではまったく別物なのだ。

わざと詰まらせて打球を運ぶ打ち方なら、打率は劇的に飛躍するだろう。それこそイチロー選手や、青木宣親選手のように。しかしこの打ち方は、ミートポイントで肘が畳まれてしまう。つまりバットを柔らかく使うことはできるのだが、パワーを発揮することはできない。

逆に軸足に体重を残して打つと、ポイントはややピッチャーよりになり、両腕はきれいな二等辺三角形になる。この瞬間が、最もバットスウィングが速まる瞬間で、打球の勢いや飛距離はアップする。だがポイントがこの時点になってしまうとバットコントロールはもう不可能となり、確実性は低下してしまう。これらの理由から言って、ヒット数とホームラン数を共に増やすことは非常に難しいのだ。

さて、ここで話を中島選手の守備に戻したいと思う。恐らく中島選手は、トリプルスリーを達成するために守備練習をしているのだと筆者は見ている。普通に考えれば、トリプルスリーを達成するためには、朝から晩までバットを振り続ける必要があると考えるだろう。だが筆者の野球理論においては、これは必ずしも正しいとは言えない。

と言うのは、打撃練習というのは基本的には技術を向上させるための練習となる。少し分かりにくいのだが、技術を向上させる練習と、体力を向上させる練習とでは違ってくるのだ。打撃練習は、もちろん体力も向上されるが、それ以上に技術向上が最大の目的となる。だが守備練習は、守備の技術向上はもちろんのこと、打撃練習とは比較できないほどの体力向上を狙うことができる。

1時間特守を受けるということは、それだけ長い時間守備の姿勢をとっているということになる。野球経験者であればよく分かると思うが、ボールを待つ時の重心を低くする姿勢は、長時間続けるとかなりきつい。中島選手はそのきつい練習を連日続けているというわけなのだ。

これだけ守備に時間を割けば、下半身を主とした体力強化は我々の想像以上となるだろう。そしてこれは、バッティングの安定感に直結する。下半身がしっかりしてくれば、800~900gのバットを振っても身体がぶれなくなる。身体がぶれなければ当然バットスウィングにもぶれは生じず、ジャストミートできる確率をアップさせられる。

これはあくまでも筆者の予測でしかないのだが、恐らく中島選手は今季、短打狙いのバッティングはしないのではないだろうか?ツーベースの延長がホームランで、ツーベースの打ちそこないがシングルヒット、そういう考えで挑んでいるような気がしてならない。そして中距離ヒッターとして日本代表レベルの実力を手にした今、中島選手の自信は確信に変わっているのだろう。だからこそ打力低下に対する恐怖感もなく守備に9割の時間を使えるのだと思う。

そして技術に対ししっかりとした自信があるからこそ、その技術をさらに向上させるための体力を欲しがったのだろう。守備練習であれば守備の技術向上も、体力向上も図れてまさに一石二鳥だ。

近年のプロ野球は若干メジャー化している傾向があり、技術練習に多くの時間を使いたがる。しかし欧米人に比べて身体が小さい日本人では、その取り組み方では絶対的な技術を獲得することはできない。日本人の場合、絶対的な体力があることを前提に技術練習をしていかなければ、技術は思うようには伸びない。だからこそ過去の偉大な日本人選手たちは、人の2倍も3倍も走りこみをしていたのだ。中島選手は恐らく、そのことにハッキリと気付いたのだろう。今キャンプで9割を守備練習に当てるという宣言は、決して守備力向上だけが目的ではないと思う。

これだけ高い意識を持って練習に取り組める中島選手は、今年は本当にトリプルスリーを達成できるかもしれない。ヒットのメインをシングルヒットではなく、ツーベースヒットにシフトしていければ、中島選手の技術があればトリプルスリーは決して夢の数字ではない。中島選手にはぜひ2002年の松井稼頭央選手以来のトリプルスリーを達成してもらいたいと思う。

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2010年02月04日 14:22 


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