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小岩ジェッツ

#15 大沼幸二



#15 大沼幸二 - Koji Ohnuma

投手(先発、リリーフ)、右投右打
2000年ドラフト1位(逆指名)
尽誠学園高~プリンスホテル~埼玉西武ライオンズ
大阪府東大阪市出身、1979年7月3日生、178cm / 81kg
球種:スライダー、カーブ、フォーク、ストレート(152km)

プロ入り9シーズンを終え、2009年は自己最多の54試合に登板した大沼投手。今やライオンズのブルペンには欠かせない存在となった。しかしそれでも年に何度かはファーム行きを命じられている。なぜなのだろうか?これだけの素質を持っていながら、なぜ大沼投手は1軍に完全に定着できずにいるのか。

まず一番のウィークポイントは入団当初からの制球難だろう。数年前と比べると格段に良くなったとは言え、それでもまだコントロールが良いとは言えない。だが筆者は、大沼投手のある日のピッチングをよく覚えている。それは2004年5月7日の日本ハム戦に先発した時のことだ。大沼投手は「愛娘に格好良いパパを見せたい」と言う思いのもとマウンドに立ち、(確か)1軍初先発マウンドで見事な好投を見せてくれた。気持ちのこもった本当に素晴らしいマウンドだった。

この時西武ドームで投げ合った投手は日本ハムのエース・ガンちゃんこと岩本投手だった。名前だけを見ると完全に負けていたのだが、しかしこの日に関しては大沼投手の方がエース並のピッチングを披露してくれた。そして最後は小関選手の決勝打で3-0の快勝。この時筆者は、2~3年後にはこの投手は必ずローテーションに入っていると確信した。

だがこれ以降の大沼投手は好調を維持することが出来ず、制球難により自滅する試合が増えていった。見ていて本当に切なかった。なぜコーチ陣は大沼投手の悪いところを直してあげないのだろうか、と。もちろんプロのピッチャーのフォームやモーションをいじることは大変な勇気がいることなのだが、しかしこの頃の大沼投手はまだ1軍での実績はほとんどなかった。ファームでは素晴らしいピッチングをしていたのだが、1軍に上がってくるとその力を発揮することが出来ずにいた。果たしてプロ野球のピッチングコーチには、どれだけの存在意義があるのだろうか。プロ経験のない筆者には想像もできない。

それでもここ数年の大沼投手は、その頃と比べるとコントロールが非常に良くなって来た。その理由は下半身の強化にある。下半身という土台をしっかりと作り上げたことで、上半身に生じるブレが減ったのだ。その結果、コントロールが良くなったように見えている。そう、見えているだけなのだ。実際はコントロールが向上していることは決してない。

大沼投手の150kmを超す剛速球は、並外れた上半身の強さが生み出している。だがその上半身の強さが、コントロールの邪魔をしてしまっているのだ。大沼投手自身は恐らく、一生懸命腕を振ろう振ろうと考えていると思う。そうすることで球速をキープしている。だがこの意識が強くなりすぎてしまうと、コントロールをポイントではなく、ゾーンで取り扱ってしまうのだ。

筆者は時々、プロを目指しているアマ投手のコーチをすることがあるのだが、彼らには常々こう言っている。「コントロールは肘でつけるものだ」と。コントロールに難があるピッチャーは大沼投手に限らず、指先でボールの行く先を操ろうとしてしまう。だがこれは大きな間違いだ。大沼投手のように腕を縦にまっすぐ振ってしまうと、指の腹は常にキャッチャー方向を向くことになり、これはつまり、いつでもリリースできるという状態と言える。

もっと分かりやすく言うと、大沼投手は的を絞って投げていないのだ。もちろん意識の中では常にキャッチャーミットを目掛けて投げていると思う。だがそれはあくまでも意識だけの話で、フィジカルではそれが出来ていない。もしくは取り入れていない。

コントロールを良くするためには、まずはリリースポイントを1点に限らせる必要がある。つまり腕のスウィングは小指からキャッチャー方向に入り(外回旋)、リリースする瞬間だけ指の腹がキャッチャー方向を向き、リリース後はそのまま内回旋させていく。こうすることで、リリースポイントは常に一定する。(西口投手岸投手星野投手が素晴らしい見本だ)

だが、これだけではコントロールは良くはならない。この前に、もう1つ大切なエッセンシャルモーション(必須動作)が存在する。それはターゲティングだ。大沼投手はこのターゲティングが非常に甘いのだ。

ターゲティングとはボールをリリースする寸前、肘が最も鋭い角度で曲がっている時、その肘の頭を投げたい方向に向ける動作のことだ。つまり射撃で言うところの、スコープを覗いて狙いを定める行動のことだ。大沼投手はこのターゲティングを行っていないためにコントロールが定まらないのだ。

ターゲティングを行い、リリースポイントをゾーンではなくポイントに変えることができれば、大沼投手は少なくともあと10年はピッチングでご飯を食べて行けるだろう。だが今のまま行けば、加齢による筋肉の硬化により、これ以上ピッチングが向上することはないと思う。42歳になってもなお146kmを投げていた工藤投手のようにはなれないだろう。

大沼投手は確かにコントロールは悪い。だが逆を言えば、筆者はそれを武器にするのも良いのでは?と考えている。バッターからするとコントロールが安定したSランクの変化球よりも、どこに来るか分からない剛速球の方がはるかに打ちづらいのだ。それを考えると大沼投手は細かいコントロールなんて気にすることなく、ど真ん中目掛けて力いっぱい投げたら良いと思う。

コントロールが悪いのであれば、ど真ん中を狙ってもど真ん中に入ることは少ないはずだ。そうなってくると、コースを狙って真ん中に入ってしまうよりも、真ん中を狙ってコースに外れる方がバッターは打ちづらい。150km以上の剛速球は、プロのバッターでもそう簡単には打てない。力負けせずに打ち返せるのはせいぜいクリーンアップの3人だけだろう。

今の球威でコントロールが良くなれば、大沼投手にとってはまさに鬼に金棒だ。だがコントロールを気にするあまり球威が落ちてしまうのなら、細かいコントロールなんて気にしない方がむしろ良いと思う。

ピッチャーとしては今まさに曲がり角に立っている大沼投手。31歳となる2010年、どのような成長を遂げて1軍のマウンドに立つのかが今から楽しみだ。

ちなみに大沼投手はストレートだけが素晴らしいピッチャーではない。スライダーとフォークも一級品だ。特にスライダーには自身があるようで、キャッチャーからスライダーのサインが出て大沼投手が首を振ることはまずない。ひょっとしたら大沼投手はストレート以上に、スライダーに自信を持っているのかもしれない。

ピッチャーとしての資質は素晴らしいものを持っている大沼投手だ。その実力を余すことなく1軍のマウンドで発揮できるようになれば、先発ローテーションだってクローサーの座だって狙えるだけの力を持っている。だからこそ秋季キャンプ・春季キャンプではピッチングコーチたちはその資質を存分に引っ張り出してもらいたい。

星野智樹投手は、2007年オフに骨盤を使って腕をスウィングする投法をマスターしている。この投げ方を大沼投手もマスターすることができれば、球速は確実にあと5kmは増すだろう。しかも今のように初速と終速に差がある剛速球ではなく、糸を引くように伸びていく切れのある剛速球が投げられるはずだ。

大沼投手を今のレベルで終わらせてしまうのは非常にもったいない。投げたがりの性格で、「行け」と言われればいつでも喜んでマウンドに向かう性格の大沼投手だ。筆者はこういうピッチャーにこそ大事な場面で投げられるようになってもらいたい。そうすればその選手の背中を見た子どもたちも、大きな夢を持てるはずだ。

 投球成績 Pitching Results








S H























2001 8 1 0 0 0 0 0 0 -- ---- 54 12.1 10 0 7 0 0 6 1 0 4 4 2.92
2002 5 1 0 0 0 0 1 0 -- .000 43 9.2 9 2 5 0 0 8 1 0 9 7 6.52
2003 14 1 0 0 0 0 1 0 -- .000 136 29.0 36 4 15 0 0 21 1 0 18 17 5.28
2004 36 11 1 1 1 4 6 3 -- .400 429 95.2 100 14 48 4 1 74 3 0 54 47 4.42
2005 31 7 1 0 0 5 7 1 1 .417 331 69.2 80 15 41 0 2 59 4 1 55 48 6.20
2006 9 0 0 0 0 0 1 0 1 .000 68 13.0 16 2 15 0 0 9 1 0 11 11 7.62
2007 9 6 0 0 0 1 2 0 0 .333 161 34.2 39 2 19 0 1 24 2 0 28 26 6.75
2008 52 0 0 0 0 2 4 1 7 .333 357 83.0 79 5 36 3 3 64 4 0 34 34 3.69
2009 54 0 0 0 0 4 7 1 15 .364 284 66.0 59 6 30 5 4 45 2 0 26 23 3.14
通算 218 27 2 1 1 16 29 6 24 .356 1863 413.0 428 50 216 12 11 310 19 1 239 217 4.73


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2009年11月13日 02:57 


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