涌井秀章投手のピッチングモーション~良い点
昨日は涌井秀章投手のピッチングフォームの悪い点を筆者なりの視点で書いてみたが、今日は逆に良い点について書いてみようと思う。まず何よりも素晴らしいのは、ピッチングフォームのバランスだ。この安定感、フォームの乱れのなさは、元ロッテの小宮山悟投手のレベルに近い。ただ単にボールを投げているだけではなく、自分なりに研究を重ねてたどり着いたフォームなのだろう。高校時代に原型は出来ていたとしても、プロに入ってからの進化は目覚しい。
このバランスは、やはり走り込みの量が支えているとしか言えない。もちろんウェイトトレーニングもしているとは思うが、それだけではこれだけの安定感は生まれないだろう。チーム1、球界1とも言える走り込みの量をこなす涌井投手だからこそキープすることができる安定感だ。しかも筆者が受けた印象では、走り方もしっかり学んでいるように感じた。中には闇雲に走ってしまうピッチャーもいるのだが、ただ距離を走るだけでは効果は上がらない。正しいフォームで、効率的に筋肉を使った走り方をしなければ、走り込みの本当の効果は生まれないのだ。
もちろんただ走るだけでもそれなりの効果はある。毎日10kmずつ走ればスタミナは付くだろう。だがスタミナが付くことと、安定感が増すことはまた少し違うのだ。ランニングのフォームにもいくつか種類がある。筆者はこの分野に関しては専門外となるのだが、少なくとも短距離、中距離、長距離などによってフォームは変わっていく。これは当然のことなのだが、そこからさらにかかとの踏み込みを意識する走り方や、エッジングを意識する走り方などがある。恐らく涌井投手はエッジングを意識して走り込みをしているのではないかと筆者は予測している。
もしピッチャーをやっている方、目指している方がいてこれから走り込みをしていこうと考えているなら、オーバープロネーションに注意してもらいたい。実は筆者も昔はこのクセがあったのだが、これは走っている時の着地で、足首を外側に曲げてしまうことを言う。極端に言うと、足の裏の外側面を使って走っているようなイメージだ。つまり内側からのエッジングでうねりを生み出す走り方と真逆で、がに股やO脚になってしまう可能性がある。これでは足首を痛めるだけではなく、他の一部の筋肉や関節に余分な負荷をかけてしまい更なる故障に繋がってしまう。ということで、オーバープロネーションにはぜひ注意しながら走ってもらいたいと思う。ちなみに最近はオーバープロネーションを回避させるために設計されたジョギングシューズもあるので、興味がある方は調べてみてください。
さて、話を涌井投手に戻すと、安定感に次いで良い点はテイクバックだ。しっかりと肩甲骨を意識したテイクバックが行われている。このテイクバックが出来ることで、ボールのアクセラレーション(加速距離)を稼ぐことが出来る。アクセラレーションを長く取れれば、その分ボールのスピードは増す。
そして次はリリースポイントだ。涌井投手のリリースポイントが他のピッチャーよりもバッター寄りなのは有名な話だ。リリースポイントをバッター寄りにすることで、バッターがボールを見れる時間を減らしている。そうされることでバッターはボールを見極める作業が非常に困難になる。しかしこの点に関してはテレビ解説者もよく口にしているので、やはり知っている方は多いだろう。だがここからが涌井投手の凄いところなのだ。
涌井投手の腕のスウィングは真っ直ぐ縦に振り下ろされている。だがいくら真っ直ぐ振り下ろしていても、腕には若干の内回旋が掛かる。よく言われる「ボールがシュート回転している」状況とは、腕のこの内回旋が大きく影響している。
普通のピッチャーが腕を真っ直ぐに振ってリリースポイントをバッター寄りにすると、ほぼ100%シュート回転する。これは内回旋が始まった時にリリースをすることで、その内回旋の動きがそのままボールに伝わってしまうためだ。これがもしアマチュアや1軍半の選手であれば、リリースポイントをバッター寄りにしなくてもシュート回転してしまうことがある。シュート回転するということは肘の下がり具合の問題ではなく、腕の内回旋が原因なのだ。だがこの内回旋を0にすることは不可能だ。
涌井投手のリリースポイントは、普通のピッチャーであれば完全にボールを離した後の位置であり、腕は内回旋している。だが涌井投手の場合はあれだけリリースポイントをバッター寄りにしても、ボールにシュート回転が掛からないのだ。それどころか3塁側に傾いたしっかりとしたバックスピンがかけられている。恐らくこれができるピッチャーは、日本では涌井投手だけだろう。
リリースポイントをバッター寄りにすることは決して難しくはない。練習すれば1週間もあればできるようにはなるだろう。だがそれによって起こるシュート回転を消すことは非常に難しい。練習しても1年2年でできることではないはずだ。リリースポイントをバッター寄りにしても、外角球がシュート回転して真ん中に入ってしまえば、それはただのホームランボールになる。だがそうならないのが涌井投手の本当に凄いところだ。
これでもし高校時代のように身体をスピンさせて投げることができれば、球速はあと5kmは軽く伸びるだろう。そうなってもなお今のリリースポイントでバックスピンストレートを投げることが出来れば、まともに打てるバッターはほとんどいなくなるはずだ。
今シーズンは沢村賞投手となった涌井投手だが、その成績にはまだまだ納得行っていないと思う。本人からすればあと2勝はしたかったところだろう。もし涌井投手があと2勝して2敗減らすことが出来ていれば、プレーオフ争いももっと違った結果になっていたと思う。だが「もし」が存在しないのが野球だ。今シーズンの悔しさをばねに、涌井投手が来年どれだけの進化を遂げてくるか、筆者は今から楽しみでならない。
そして来年は優勝をし、球団最多の18勝以上を挙げて再び沢村賞を獲得してもらいたいと思う。今の涌井投手であれば、それを実現できるだけの能力は持っているはずだ。ファンのためにも、チームのためにも、自分のためにも、来季は涌井投手の更なる飛躍に期待をしたいと思う。
涌井秀章投手のピッチングモーション~悪い点について

2009年11月08日 15:33

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