江藤智選手、20年間の選手生活にピリオド
西武ファンにとって非常に悲しいニュースが飛び込んできた。球団は9月下旬、江藤智選手に対し戦力外通告を行った。江藤選手には40歳まで現役でやるという目標があり、39歳の今年、それは目前だった。戦力外通告を受けた後は他球団に移籍してプレーを続けることも考えたようだが、悩んだ末、引退を決意したようだ。子どもの頃は東京都東大和市(西武ドームに最も近い東京の市)に住み、西武ライオンズのファンクラブにも入っていた江藤選手。1988年のドラフト5位指名で、キャッチャーとして広島カープに入団し、93年にはホームラン王、95年にはホームラン・打点の二冠に輝く、球界を代表するスラッガーだった。
その後99年のオフにはFA宣言をして巨人に移籍。移籍後2年目までは30ホームランを放ちチームの勝利に大きな貢献をしたが、3年目以降はなかなか本来の打力を発揮することが出来ず、ホームラン数も年々減っていった。そして2005年オフ、西武からFA宣言し巨人入りした豊田清投手の人的保証として、江藤選手は西武へと移ってきた。巨人側の人的保証プロテクトリストに、江藤選手の名前が入らなかったのだ。
だが江藤選手にとっては、この移籍は本当に吉と出たと思う。2006~2009年、数字的には本領を発揮することは叶わなかったが、しかし「江藤智」という存在は、若い選手の多いライオンズにとってはまさに生き字引となった。特に2008年の日本一は江藤選手という心の支柱がなければ達成できなかったはずだ。渡辺監督もこのことについては、江藤選手のことを「影のMVP」と称えている。
そして江藤選手が残した最も大きな遺産は、中村剛也選手の成長だ。江藤選手はライオンズにアーリーワークが導入された昨年から、中村選手に付きっ切りでホームランバッターとしての心得を教え続けた。そしてそのアーリーワークを、誰よりも精力的にこなしていたのが江藤選手だった。こんな大ベテランが一生懸命やっているのに、それを見た若い選手たちが一生懸命やらないわけにはいかない。昨年ライオンズが日本一を達成することができたのは、そんな江藤選手の姿があったからだ。
今年6月13日の試合では、江藤選手は史上35人目となる1000得点を達成した。得点とは出塁し、ホームベースまで還って来た回数のことだ。この記録はヒットを打つだけでは達成できない。代走を出されてしまえばそのランナーがホームインしても、打ったバッターには得点は記録されない(代走で出たランナーに得点が記録される)。つまり自分の足でしっかりホームベースまで還って来なければ記録は付かないのだ。江藤選手は20年に及ぶ現役生活の中で、実に1000回もホームベースに還って来た。この記録は地味ではあるが、しかしチームに貢献したという何よりの証であると思う。
球団は戦力外通告をした後、江藤選手の引退セレモニーを行う意向を示した。だが江藤選手がそれを固辞。理由は、クライマックスシリーズ進出を目指してチームが戦っている最中に、そんなことはできないというものだった。ライオンズの中で最も人望がある江藤選手。そして勝利への執念を最も強く持っていたのもまた、江藤選手だったのかもしれない。
今後は指導者として球界に残るとのことだが、筆者は強く強く思う。来年以降もコーチとして絶対にライオンズに残ってもらいたい!と。もはや江藤選手は広島の人でも、巨人の人でもない。誰が何と言おうともう立派なレオ戦士なのだ!江藤選手には今後もライオンズで、若獅子たちを指導して行ってもらいたい。
筆者がよく覚えている江藤選手の思い出は、2006年4月15日の試合だ。筆者はその日、西武ドームのバックネット裏で観戦していた。試合的には田崎投手ら投手陣が打ち込まれてしまう内容だったのだが、しかしこの日活躍したのが移籍1年目の江藤選手だった。大敗ムードの試合において、江藤選手は美しい放物線を描く、まさにスラッガーの打球でホームランを放った。そう、この日は江藤選手の誕生日だったのだ。ライオンズファンからは「ハッピーバースデー」の合唱が沸き起こっていた。
筆者は江藤選手が大好きだ。心から野球を愛する選手の1人だったと思う。そしてとにかく人望が厚い。高木浩之選手(現西武アマチュア担当スカウト)の引退セレモニー、それまでほとんど接点のなかった2人だが、高木選手はセレモニー後、江藤選手の胸を借りて号泣していた。そうしたくなる江藤選手、そうさせてしまう江藤選手。江藤選手は選手としてだけではなく、1人の人間としても素晴らしい野球選手だった。
今後は更なる発展と技術向上のため、コーチとして野球界に貢献していってもらいたいと思います。江藤選手、20年間本当におつかれさまでした。そして本当にありがとう!!
江藤智選手
通算1834試合、6865打席、1559安打、364本塁打、1023打点、生涯打率.267

2009年10月02日 12:33

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