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小岩ジェッツ

中村剛也が48本塁打できた秘密

2年連続ホームランキングとなった中村剛也選手。筆者は数年前から、彼は必ず主力級の活躍をすると確信していた。だが正直なところ、まさかここまでのバッターに成長するとは思っていなかった。具体的には打率3割弱で30本塁打くらい打てるようになるのでは、と考えていた。しかし昨年は46本、今年は48本と、実際にはとてつもない数字を残すバッターへと成長を遂げた。

筆者の野球理論の中に、野球は“筋肉”で行うスポーツではないというものがある。もちろん野球というスポーツをこなすだけの、最低限の筋肉は必要だ。しかし、必要以上の筋肉量は、野球には必要ないと考えている。150kmのボールを投げるためにも、140mのホームランを打つためにも、必要なのはボディビルダーのような隆々とした筋肉ではない。

シンプルに考えてみよう。150kmのボールを投げるためには、腕を150kmのスピードでスウィングすればいいのだ。そして150kmのボールをホームランにするには、150km以上のスピードでバットをスウィングできればいい。ちなみに一流バッターのバットスウィングのスピードは150km以上だと言われている。

今回はヒットというものは無視することにして、ホームランについてのみ語ることをあらかじめご了承ください。筆者は、ホームランはバットスウィング、タイミング、角度の3点で打つものだと考えている。極論を言えば、フルスウィングをしなくてもホームランは打てるのだ。

アレックス・カブレラ選手のように160m弾を放ちたいというのなら話は別だが、普通の球場で、普通のホームランを打つためであれば、必要以上のパワー(筋肉)は必要ないのだ。それよりも、ホームランを打つためのポイントでしっかりとボールを叩くことの方が大事だ。

G.G.佐藤選手はライオンズの典型的なパワーヒッターだ。バットのどこにボールが当たろうが、パワーでスタンドインさせられる能力がある。だが調子の波が激しいことも事実だ。その理由は必要以上のフルスウィングにある。バットを最後まで振り抜くことと、フルスウィングを同意語として使っている指導者もプロアマ問わず未だ多いが、この2つは似て非なるものだ。

G.G.佐藤選手の場合は余分な力をバットスウィングに加えてしまっているため、スウィングに常にブレが生じてしまっている。調子が良い時は軸足にしっかりと体重が残りきれいなハンマースウィングが出来ているのだが、調子が悪くなると軸足に体重が残らなくなってしまう。つまり重心の位置が定まらないために、バットをイメージ通りの軌道でスウィングさせることができないのだ。

だが中村剛也選手は違う。これは本人も以前コメントしていたことなのだが、中村選手のホームランのほとんどは70~80%の力加減で打たれたものだ。逆にフルスウィングをした時は、ポップフライになることが多い。つまりフルパワーでバットを振ってしまうと、バットコントロールが難しくなり、ホームランを打つためのミートポイントから外れやすくなってしまう。

物理学的に野球を見ていくと、一般的なストレートをホームランにする場合、バットは10°という角度でアッパースウィングした時にボールが最も遠くまで飛んでいく。それ以上の角度だと打球が上がりすぎて普通の外野フライになる可能性が高まり、それ未満の角度だと打球そのものが上がりにくくなる。そして10°の角度でアッパースウィングした際、ボールの下2/3を叩くイメージで打つと、より遠くへ飛んでいく。

中村選手のホームラン映像を何十本と見ていくと、10°のアッパースウィングでボールの下2/3を叩けている打席がほとんどなのだ。中村選手はテレビ解説者には未だ「確実性が低い」と評価されているが、実はそんなことはなかったのだ。ホームランにこだわりを持つ中村選手の、ホームランが打てる確実性は非常に高かったのだ。

現に中村選手の今年の長打率は.651という驚異的な数字だ。オリックスのカブレラ選手.519、ローズ選手の.583、楽天の山崎選手の.519と比べると、いかに中村選手の.651が凄まじいかが分かる。ヒット10本中、6~7本は必ず長打になるのだから、この確実性はずば抜けている。

同じホームランバッターであっても、中村選手とG.G.佐藤選手は真逆のタイプだ。いわば日本人スラッガーと外国人スラッガーと言ったところだろう。具体的にどう違うかと言うと、一番大きな違いはタイミングの取り方だ。G.G.佐藤選手はボールが来るのをひたすら待つタイプのバッターなのだが、中村選手はピッチャーのモーションでタイミングを計っている。

ピッチャーの投球前、中村選手が打席で身体を揺らしていることは皆さんお気づきだと思うが、これはピッチャーのモーションでタイミングを計っている動作だったのだ。分かりやすく言えば、ピッチャーのタイミングを自分のタイミングとして使えているということ。これはピッチャーからしたら投げづらくて仕方がない。マウンドから見ているとひしひしと感じてしまうのだ。バッターが、自分(ピッチャー)のタイミングでボールを待っていることを。

中村選手がフォームを崩してスウィングするシーンを見たことがある人はどれくらいいらっしゃるだろうか?少なくとも筆者は数回程度の記憶しかない。中村選手のスウィングの安定感を褒めるテレビ解説者は多いが、その理由まで解説してくれる人は少ない。そしてその理由こそが、上述したピッチャーのタイミングでボールを待っているという点なのだ。

スウィングが崩されてしまうということは、ピッチャーの投球に対してタイミングが合わせられなかったということ。つまり逆の良い方をすれば、ピッチャーの投球にタイミングを合わせ続けられれば、スウィングを崩されることはほとんどありえないのだ。そしてこの打法をマスターしている有名なバッターが、シアトルマリナーズのイチロー選手だ。ただし中村選手とイチロー選手では求めるものが違うため、ホームラン数と打率それぞれに大きな違いはあるが。

ピッチャーの投球にタイミングが合った時のメリットは非常に大きい。まずミートタイミング時の両腕の関係が、ほぼ二等辺三角形になる。この状態でボールを叩いた時が、スウィングが生み出したパワーを最もボールに伝えることができる。そして重心を使ったしっかりとしたスウィングがキープできるため、慣性モーメント(遠心力と考えてください)も有効活用できる。

ボールを遠くに飛ばすためには慣性モーメントを活用することが大切になってくるのだが、慣性モーメントは身体の芯がシャープであるほど強くなる。つまり慣性モーメントだけでバッティングを考えた場合、太った選手(または筋骨隆々の選手)よりも痩せた選手の方が慣性モーメントは強くなる。筆者はこのことを考えて、中村選手は30本塁打のバッターと予想していたのだ。もし中村選手が、若き日の清原和博選手のような細身の体型であったなら、筆者は迷わず50本打つようになると言い切っていただろう。

だが、それを差し引いたとしても中村選手のスウィングは、まさにホームランを打つために計算されたスウィングだと言うことができる。そして昨年辺りから、中村選手自身のホームランに対する意識も変わってきたのだろう。それまではバットを寝せて構えていたのだが、しっかりと立てて構えるようになった。

バットを寝せて構えるとバットを最短距離で出せるため、ホームラン数は減るがヒットに対する確実性は増す。逆にバットを立てるとヘッドの重さを最大限に引き出すことができるため、ヒットに対する可能性は下がるが、打球の飛距離は確実にアップする。ちなみに中村選手が怪我でファームにいた時期4番に座った中島選手だが、3番では寝せて構えていたバットを立てて構えていた。恐らく4番としてホームランを欲しがったためだろう。

風貌からはとても想像できないが、中村剛也という選手は我々ファンが想像できないほどクレバーな選手だ。ホームランを打つ確率を少しでもアップさせるために、この2年は様々な試行錯誤を繰り返している。そしてその試行錯誤が実を結び、去年は46本、今年は48本のホームランをスタンドに叩き込んだ。来年以降はテレビ解説者も、中村選手に対し確実性が低いなどとは言うべきではないだろう。中村選手のホームランを打つための確実性は、非常に高いのだから。

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2009年10月11日 17:28 




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