○2009/10/04 楽天vs西武最終戦
| 3:04 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
| 埼玉西武 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 0 | 6 | 10 | 1 | |
| 東北楽天 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 7 | 0 |
東北楽天vs埼玉西武 24回戦・最終戦 Kスタ宮城(観衆:20,480人)
埼玉西武ライオンズ 12勝12敗0分
継投:○涌井秀章
勝利投手:涌井秀章 16勝6敗 2.30
ホームラン:中村剛也(46号)、中島裕之(22号)
ヒーローインタビュー:涌井秀章
【ゲームレビュー】
今日はエース涌井投手の今シーズン最後の登板となった。上位進出という望みがなくなった直後の試合ではあったが、エースらしい集中したピッチングを魅せてくれた。モチベーションを保つのが難しい中、本当に良く頑張って投げてくれたと思う。今日の勝利で16勝となったわけだが、これで最多勝は確定したと言っていいだろう。奪三振も199個に達したが、ホークスの杉内投手が193個のため、こちらは抜かれる可能性が高い。だが最多勝だけでも素晴らしいし、何よりも怪我なく211イニング投げたというプロセスが素晴らしかった。涌井投手は、今シーズンはエースとしての仕事をしっかりこなしてくれた。
今日のピッチング内容は9回完投勝利で、楽天打線を2点に抑えたわけだが、筆者が見た限りでは決して調子は良さそうではなかった。9月以降ずっと感じていたことなのだが、ピッチングに疲労感が感じられた。涌井投手自身これは自覚しているようで、前回の登板後はトレーナーに対し、トレーニングメニューを軽くしてもらうよう直訴している。
涌井投手のピッチングフォームを少し解説してみたいと思う。涌井投手のピッチングフォームは、プロの一流投手からも非常にバランスが良いと評価されるフォームだ。前足(右投げの涌井投手は左足)を上げた際、軸足と胴体がきれいな一直線を描く。少し難しく表現すると、これは重心が右股関節にしっかり乗っていることを表す。重心がしっかり右股関節に乗ると、その重心を今度は左股関節に移しやすくなる。これが、体重移動がスムーズに出来ている、という意味なのだ。
ここまでを見ると、涌井投手のフォームは実に理想的だ。しかしこれをさらに深く、生理学的に見ていくと、涌井投手のフォームは決して完璧ではない。見た目のバランスは良いのだが、筋肉や関節の使い方は決して上手とは言えないのだ。
まず、せっかく股関節を上手く使えているのに、骨盤を上手く使えていない。涌井投手が今後、意識して骨盤を使えるようになれば、ボールのスピードはもっと増すはずだ。なぜなら肩関節と背骨は、生理学的には骨盤が司令塔になっているのだ。つまり骨盤をもっとスムーズに意識して動かせるようになれば、胴体のスピンと腕のスウィングスピードがもっと増してくる。そして腕のスウィングスピードが増せば、ボールのスピードは自ずとアップする。
時速0kmのボールに一瞬で145kmのスピードを与えるには、腕を145kmの速さでスウィングする必要がある。想像してもらえば分かりやすいと思うが、腕を145kmでスウィングさせるためには非常に大きな力が必要になり、同時にそれと同じだけの負荷が掛かってくる。
数日前の記事でスパイラル投法の話をしたが、実は涌井投手はこれがまったくできていない。いや、できていないと言うのは正しくない。取り入れていない。涌井投手の腕の使い方は二重振り子投法と言われるもので、これは肩や肘に非常に大きな負荷をかける。涌井投手の場合は他の二重振り子投法のピッチャーとは異なり、人の何倍も走りこむことで強靭な下半身を得ている。そのおかげでボールには力が生まれ、コントロールも安定する。だが下半身に疲労が溜まった時、二重振り子投法だとどうしても息切れしたピッチングになってしまうのだ。
9月以降の涌井投手のピッチングはまさにそんな状態だった。WBCから続く身体への負荷はついにピークを迎え、下半身主導のピッチングが出来なくなってしまった。そうなってしまうと、二重振り子投法だけではボールに切れを生み出すことはできない。最近の涌井投手の不調の原因のすべてはここにあったのだ。
筆者は涌井投手を横浜高校時代からずっと見続けているが、唯一心配だったのが肩・肘の故障だった。その要因は二重振り子投法にある。肩周りには約40個の筋肉が存在しているのだが、二重振り子投法の場合、その1/3の筋肉を効率的に使うことができずにいる。つまり残り2/3の筋肉に、より大きな負荷が掛かってしまっているということだ。もっと細かく言えば、肩周りの外側の筋肉により大きな負荷が掛かってしまっている。涌井投手の場合25歳を越していくと、三角筋や僧帽筋、肩関節胞に故障を抱える可能性が高まるだろう。
逆に、身体の線が細くても長年まったく肩に故障を抱えないピッチャーもいる。ライオンズで言えば西口投手だ。西口投手の場合はスパイラル投法ができているため、投球時に必要な100の負荷を、肩周り40の筋肉で2.5%ずつ均等に分散させることができている。だからあれだけ身体が細くても、肩の大きな故障がまったくないのだ。
ただ西口投手の場合は内転筋に故障癖があるが、これは西口投手のフォームに要因がある。西口投手は左足をクロス気味(3塁方向寄り)に踏み出すため、内転筋に非常に大きな負荷がかかってしまう。いわゆる諸刃の剣というやつだ。バッターからはボールが非常に見にくくなり、ボール自体にも切れが増すのだが、どうしても内転筋痛を回避することはできない。
涌井投手に話を戻すと、二重振り子投法というのは一部の筋肉に大きな疲労を与えてしまう。そのため回復にも時間が掛かってしまう。その証拠、とまでは言えないものの、勝てなかった昨年の涌井投手のピッチングは、まさに今年9月のような投球が続いていた。2007年は213イニング投げていて、2008年はその疲れが抜け切れずに涌井投手本来のボールを投げられるようになったのは、クライマックスシリーズに入ってからのことだった。
こうして考えていくと、来年涌井投手が沢村賞をもらえるほどのピッチャーになるためには、練習以上に疲労回復に努める必要があると言える。技術的には一流に近づきつつあるため、焦って技術を磨く必要はもうない。あとは肩の疲れをどれだけ抜き去ることができるかだ。肩の疲れさえしっかり抜くことができれば来年の今頃、涌井投手は沢村賞を手にできる数字を残せているはずだ。

2009年10月04日 17:32

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